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アンドロイド転生1084

2120年10月15日
港区 タカミザワモネの住まい

「じゃあ、待ってるね」
「はい。行ってらっしゃいませ」
アオイは玄関で見送った。今日はモネの大学の学園祭だ。後で訪れる約束をしていた。

演劇部に所属しているモネは舞台に立つ。演目はロミオとジュリエット。モネはジュリエットの友人役だ。主人のサクラコと執事のザイゼンと共に観劇するのだ。楽しみだった。

・・・

モネが大学に到着すると前を歩く白人男性を見つけた。留学生のユリウスで同じように舞台に立つ。モネは気付いた。彼の身体が何となく傾いているように見える。どうしたのだろう?

モネは早歩きになって追いついた。
「ユーリ。おはよう。どうしたの?」
「え?何が?」
「歩き方がおかしい感じ…?」

ユリウスはハッとなり気まずそうな顔をした。
「じ、実は…怪我して…」
「え!嘘っ!」
「シッ!大きな声ダメ…!」

ユリウスは強い口調になるが小声だ。誰にも知られたくない様子が窺える。
「だって…。じゃあ…見せて…!」
「う…うん…」

2人は誰もいない教室にやって来た。ユリウスが靴とソックスを脱ぐ。右足の甲が広範囲で赤黒く腫れていた。モネは驚いた。これは酷い…!
「どうしたの?何があったの?」

ユリウスは眉間に皺を寄せた。
「沢山のジャムの瓶を落とした…」
春にやって来たユリウス。日本語は目覚ましく上達していたがうっかりミスは相変わらずだ。

モネは目を丸くして呆れた。
「えー!もう!ユーリったら!」
「お願いだ!モネ!誰にも言わないで!」
「だって…そんなんじゃあ…無理…」

そう。彼には乱闘シーンがあるのだ。こんな状態で演技が出来るとは思えない。
「皆んなにメイワクをかけたくない…!」
「う…うん…分かるけど…」

「お願いだよ。ナイショにしてくれ。ずっと練習して来たんだ。楽しみにしてたんだ…」
確かに分かる。同じ演技者として自分が怪我をしたら、やはり秘密にするだろう。

だがモネは躊躇した。ユリウスの立場を思うのだ。なんたって彼はデンマーク王国の王子なのだ。怪我が悪化したら、もしかしたら大学が…日本が…責められるかもしれない…。

ユリウスはモネの意図を読み取った。
「大学も日本も大丈夫。ちゃんと自分で責任をトル。だからモネ。ナイショにして。お願いです」
「で…でも…」

「ボクの初めての舞台なんだ。ちゃんとやりたいんだ。モネなら…分かるダロ…?」
うん。分かる…。とうとうモネは決意した。
「よし…じゃあ…救護室に行こう」

救護室で医師アンドロイドから消炎剤のクリームを塗布されて鎮痛薬を服用した。2人は楽屋に行く。ユリウスは普段通りに歩いて部員達に笑顔を振り撒く。痛みなどどこ吹く風の様子だ。

舞台は10時と14時の2回。モネ達は衣装に着替えてメイクを始めた。楽屋はさながら戦場になってきた。誰もが焦っており右往左往している。あれはどこ?これは何?と言うように。

落ち着けと誰かが叫ぶ。ハッと気づいてシンとなるものの一瞬だ。また台風のようになる。全員が真剣だった。この日の為に一丸となって取り組んできたのだ。成功を夢見ていた。

モネは舞台袖から観客席を見た。母親と執事。それにサヤカ(アオイ)がいる。うん。成功させるぞ!開幕した。古典恋愛劇の王道。ロミオとジュリエットがパーティで出会うシーンからだ。


※モネとユリウスの出会いのシーンです

※モネとユリウスが親交を深めるシーンです


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