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アンドロイド転生1192
2127年4月8日
横浜国立大学 キャンパス
シオンは入学式を終えてゴルフサークルに入部手続きをすると大学を後にした。今日はこれから平家カフェに行く。ルイとヤマトも来るのだ。カナタは不在。アメリカなのだ。
・・・
平家カフェ
午後2時。店に到着すると既にルイとヤマトが来ており食事をしていた。店主が鍋をかき回している。
「よぉ。シオン。ランチタイムが終わるぞ。急いで注文しろ」
若者がやって来て注文を受け付けた。ソラだ。アリスの出産までバイトするのだ。シオンが挨拶をするとソラは感心する。
「新民者ってみんなカラフルですねぇ…」
※新民者とは平家の子孫のことで、メラニン色素が薄い特徴があります。
やがて食事がやって来る。料理もカラフルで見栄えが良い。栄養価が優れているし味わいは絶品だ。シオンは旨いと言って頬張った。2時半になると営業が終了した。
3人は残ってゆっくりと食後のコーヒーを味わっていた。ルイがシオンに声をかけた。
「どうだ?また学生になる気分は?」
「楽しみだよ。勉強もサークルも」
ルイは東大の大学院生3年生に、ヤマトは東大2年生に進級した。カナタはハーバード大学院生。全員が其々の場所で学ぶのだ。国民にならなければ今頃は村で畑を耕していただろう。
ヤマトの瞳がキラキラと輝く。
「タウンに来て1年経った。凄え楽しい。勉強も遊びも。やっぱり街っていいなぁ!」
「そうか。彼女と上手くいってるのか」
彼はルイの義妹のマリコと真剣交際中だ。ヤマトは嬉しそうだ。マリコが自慢なのだ。
「いやぁ。彼女は特別だよ。頭の回路が違うんだな。言う事が的を得てるしカッコいいんだ」
シオンは苦笑いする。ヤマトはいつも同じ事を言うのだ。ベタ惚れらしい。
「シオン。今度会ってくれよ。ビックリするぞ。可愛くて。な?ルイ」
「中身はおっさんだけどな」
シオンは不思議なそうな顔をした。
「ん?おっさん?」
「会えば分かる」
ヤマトが身を乗り出した。
「そっちはどうよ?彼氏とは?」
「うまくいってるよ」
トウマの事は彼らに打ち明けている。
シオンが女性ではなく男性に恋をするのだと知った時は彼らはさすがに驚いたのだが、すぐに受け入れた。シオンが幸せなんだ。それに誰が誰に恋をしたって良いではないかと。
2人の仲は順調だ。もう付き合って8年になる。何があっても別れないと言う自信があり、結婚も視野に入れている。昨今は同性婚など珍しくもなく法律で認められているのだ。
しかも同性間で子供が誕生する世の中だ。トウマと自分の遺伝子を継いだ子供に会いたいと思う。だが実は不安なのだ。義両親は理解してくれるのか。そしてトウマの両親も。
両家は代々続く家柄で名士だ。時代は変わったとは言えまだまだ柔軟性に欠けるところがある。そのため家族には打ち明けられていない。今はそのタイミングを見計らっている最中だ。
その為にシオンは病院で働いた。ゴマをするつもりではない。いつか経営者の立場になるならば現場を知る必要があると思ったのだ。病院なのだ。患者に寄り添うために学びたかった。
「シオン。何を難しい顔をしている。さあ、食え。ほら。ヤマトのお待ちかねだ」
店主がテーブルにパフェを置いた。ヤマトは大喜びでスプーンを取った。
※ヤマトが東京で暮らし始めた時のシーンです