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アンドロイド転生1085

2120年10月15日
某大学の学園祭 舞台にて

モネは女優としてメディアで活躍している。それでも大学の学祭だって疎かにしない。演目は古典恋愛劇の王道。ロミオとジュリエット。観客席には母親と執事とサヤカ(アオイ)がいる。

モネは精一杯に演じた。ジュリエットの友人役だ。だが恋路を応援するどころか宿敵モンタギュー家のロミオを愛する彼女を否定するのだ。
『あんな男?あなたの趣味もイマイチね!』

モネは小馬鹿にしたように台詞を吐く。だが親友のジュリエットを想っての事なのだ。意地悪なりに心が温かいという2面性を演じるのだ。アオイ達は観客席でうんうんと頷いた。

次の場面ではユリウスの乱闘シーン。両家の血気盛んな若者達は舞台を走り回る。まるで若い狼だ。ユリウスはロミオの友人役の1人である。彼は意気揚々と声を張り上げた。

『何だ?キャピレット家の若者じゃなくて…大バカ者め!俺様に敵うと思うのか!』
ユリウスの口調に観客が笑った。足の痛みなど微塵も感じさせないがモネはハラハラだった。

ラストのシーン。ロミオとジュリエットは手を繋いで地下から出た。悲恋ではないのだ。ロミオは毒を飲まず、ジュリエットは短剣で胸を刺さなかった。そんなバージョンもあるのだ。

学園祭は今日だけ。1日2回の舞台。午前の部はハッピーエンド。午後の部はバッドで終わる。観客には2度楽しんで欲しいという脚本家(部長)の粋な演出だ。拍手喝采で舞台を終えた。

ユリウスもモネもニコニコとして仲間達と舞台で手を繋いで頭を下げた。モネは舞台から家族を見ていた。大いに拍手して笑っているのが嬉しい。誰の瞳もキラキラと輝いていた。

幕が閉じると部長が手を叩いた。
「皆んな!お疲れ様!バッチリだった。午後も頑張ろうね。じゃあ!お昼休憩!」
全員が返事をして楽屋に行く。

ユリウスが舞台の袖でしゃがんでいた。顔を歪めている。脂汗が額を伝った。モネは飛びつく。
「ユーリ…救護室に行こう。歩ける…?」
「う、うん…。コッソリ行きたい」

モネは頷いた。分かってる。怪我の事を誰にも知られたくないのだ。モネはキョロキョロと辺りを見回した。部員達は自分の事に夢中で誰も彼らに気を留めてはいなかった。

2人は衣装のまま救護室に行く。ユリウスが足を見せると医師アンドロイドは顔を顰めた。
「朝よりも酷く腫れています。舞台は無理です。ドクターストップを宣言します」

ユリウスの表情は必死だった。
「お願いシマス。ボクは舞台に立ちたいんです。それにボクは端役です。ナガチョーバではありません。大丈夫です」

医師は首を横に振る。
「これだけ腫れていては消炎クリームだけでは済みません。湿布をしてサポーターが必要です。それでは靴に足が入りません。諦めて下さい」

ユリウスはガックリと肩を落とした。モネは何とかしたくなった。
「ドクター。大きな靴なら大丈夫ですか?」
「今履いているものよりも2回り大きければ…」

モネはアオイにコールした。
「カー(愛称)!協力して欲しいの。皆んなで救護室に来て!お願い!今直ぐに!」
直ぐに慌てふためいてアオイ達がやって来た。

モネは執事のザイゼンに靴を貸して欲しいと頼んだ。驚くザイゼンだが事の経緯を説明すると彼は納得して靴を脱ぐ。ユリウスに履かせてみたが残念ながら同じサイズだった。

医師は渋い顔をした。
「これでは無理ですね」
諦めの空気が漂った。モネは決意する。
「カー!ゼンゼン(愛称)!靴を買って来て!」

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