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アンドロイド転生1075

2120年10月6日 夜
品川区 タナカ邸
(ルイのホストファミリー宅)

養父母のタナカ夫妻はリビングで寛いでいた。義妹のマリコは夕食後にも関わらずポテトチップスを頬張っている。ルイは自室から降りて来て彼らの近くに腰を下ろして真面目な顔をした。

「父さん。母さん。話があるんだ。大学なんだけどさ…東大にしようと思ってる」
ルイもカナタと同じ高校3年生。ルイは世界を目指さなかった。日本の最高位を選んだのだ。

タナカ氏は目を輝かせた。
「うん。ルイなら合格間違いなしだ。学部は何だ?勿論理系だろ?」
「うん。農学部が良いんだ」

マリコは笑った。
「何するんだ?ジャガイモでも作るのか」
養母は微笑んだ。
「キノコの研究がしたいんでしょ?」

ルイの瞳は真剣だった。
「うん。キノコは奥が深い。色んな効能効果がある。難病だって治せる可能性があると思う」
「素敵じゃない。応援するわ」

その後のルイは言いにくそうに躊躇っていたが、やがて決意を孕んだ顔をした。
「大学に入ったら独り暮らしをしようと思ってたんだけど…まだここに居てもいいですか?」

養父母は目を丸くした。
「何を言ってるんだ?ここはお前の家だ。ずっと居たって構わないんだぞ」
「そうよ。当たり前じゃないの」

ルイはその言葉に感激していた。約2年前にこの家にやって来た日の事を思い出す。初対面の彼らにこっそり点数を付けたのだ。まぁ…50点かなと。今では100点を超えている。

マリコはニンマリとした。
「アニキは暗いからな。家族と一緒がいいんだ。趣味は山登りとキノコ。あとは図書館通いなんて最悪だ。一緒に来た親戚はどうだ?」

ルイは黙り込む。カナタはダンス。シオンはモデル。華々しいイメージだ。確かに自分は地味だなと思う。でも俺は俺で良いじゃないか。それに図書館なんて宝の山だ。最高だ。

マリコは鼻で笑った。
「あのさぁ…図書館で何すんの?」
「俺は知るのが楽しい。何故だろう…とか不思議だなと思う事がスッキリするのがいいんだ」

タナカ氏はうんうんと頷いた。
「好奇心や探究心を言うんだ。知的能力が高いんだ。ルイ。良いことだぞ」
ルイは照れて笑った。

マリコはやれやれと頭を振る。そうは言っても実はマリコ自身、頭脳明晰で学校でもトップクラスだ。かつ何事も物怖じせず堂々としている。身体も太いが心も太っ腹で人から慕われている。

マリコはポテトチップスの油がついた指を舐め取った。痩せる方が身体に良い事は充分に理解している。だがケロリとして笑いながら言うのだ。脳がエネルギーを欲しているのだと。

「そうか。東大か。よし。私も入ろう」
「はぁ?いいよ。邪魔だ」
「いつか私が力になるよ。見てな」
「その前に痩せろ。丸々のマルコだ」

「アニキは太れ。色白でエノキの1本だ」
「マルコはあれだ。マシュマロマンだ」
「何それ?」
「昔の映画のキャラだよ。そっくりだろ。ほら」

ルイは画像を宙に出した。白いお化けのようだがマリンルックが愛らしくもある。揶揄われても折れるようなマリコではなくキャラの真似をしてガオーッと吠えた。養父母は笑い出した。

そんな仲がルイは嬉しい。まるで本当の兄妹のようだ。それを両親も見守り、どんな事も否定せず応援してくれるのだ。ルイはタナカ家族にいつか必ず恩返しをしようと決めていた。



※ルイが養父母やマリコに点数をつけたシーンです


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