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アンドロイド転生1035

2120年7月1日
銀座にて

モネとユリウスは部活を終えた後、銀座に訪れて買い物を楽しんだ。店に立ち寄っては互いにこれは似合う、あれは良いと言いながら商品を選ぶ。2人は信頼し合った友人なのだ。

彼らの背後をSPが追う。平和な国であれ身辺警護は必要だ。ユリウスはデンマーク王国の第3王子なのだ。美しい20歳の青年で春に留学してきた。期間は2年の予定である。

彼は幼い頃から日本に興味があったと言う。手始めはアニメだったらしい。翻訳されたものではなく日本語で観ていたそうだ。語学が堪能で日本語以外にも3カ国語を流暢に話した。

2人は扇子専門店に訪れると店内を見回した。ユリウスの瞳が煌めいた。店員アンドロイドから許可をもらい、恐る恐る手に取って広げた。
「なんて綺麗ナンダ!」

モネは微笑んだ。こんな風に日本の文化を喜んでくれるのは本当に嬉しい。
「ね?デンマークは何が有名?」
「LEGOだよ」

モネは目を丸くした。
「子供の時に遊んだの!そうか。LEGOの国なのね。凄いよね。あれは文化だわ」
ユリウスは嬉しそうに何度も頷いた。

・・・

レストランにやって来た。店内に入る。洒落た店ではあるがそれほど高級ではない。しかも貸切ではない。モネは安堵した。王子の権力を使わないところが良い。気持ちが楽だ。

2人は食事を楽しんだ。するとモネ達のテーブル席にひっそりと女性達がやって来た。離れて待機するSP達が俄かに緊張する。眼光が鋭くなった。いつでも行動に移せるように身構える。

女性達はモネを見つめて囁いた。
「あ、あの…コマチさん…ですよね?」
モネの役名だ。
「はい。コマチです」

モネが微笑むと女性達はやっぱり!と言って喜んだ。現在放映中の連続ドラマの時代設定が文明開花の頃だ。モネは明治時代の女性を等身大で演じている。主人公の妹役だ。

女性達は握手を願ってモネが快く応じると控えめに歓声をあげた。モネを綺麗、可愛いと何度も褒める。実は彼女ら以上にモネの心が踊っていた。ああ…!私を知ってる人がいる…!嬉しい!

モネは立ち上がって丁寧にお辞儀をした。
「観て下さって本当に有難う御座います。引き続きご覧になって下さると嬉しいです」
「はい!観ます!」

女性達が去るとユリウスはニッコリとする。
「モネのファンだ。ボクもファンだけど」
「有難う。私はきっともっと有名になる。だから頑張る。大女優になるの」

ユリウスが親指を立てる。
「なれる。モネなら絶対デスネ」
「ユーリの夢は何?」
「ボクは…そうですねぇ…」

たとえ彼がデンマーク王国の王子であろうと王位継承権は第4位であり、王になる確率は低い。彼は自分の為に生きる事が出来るのだ。
「ボクは語学がスキ。言語学者になりたい」

「へぇ…!素敵ね」
「社会背景や実態も調査シマス」
「おお!凄い!」
「色んな国に行きたいデス」

モネはニッコリとした。
「そうだね。沢山の世界を知って素敵な大人になりたいね」
「うん!なろうネ」

ユリウスは20歳。モネは18歳。2人の人生は始まったばかり。彼らには若さと言うかけがえのない強みがあるのだ。夢という花は咲くのを待っている。そこに可能性という水が注がれるのだ。


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