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アンドロイド転生1129

2126年6月29日 
目黒総合病院

2週間前から体調不良のサキ。娘のノアが幼稚園にいる間にアンドロイドで恋人のケイと共に病院にやって来た。様々な検査の結果、彼女は急性骨髄性白血病だと診断された。

血液の癌だが恐れる病ではない。それに生存率は90%なのだ。医師は治療方法を提案する。
「治療は造血幹細胞移植が良いでしょう」
「移植…」

※因みに2020年代は生存率は20〜40%だそうです

「はい。自家移植と言う方法もあり、先程の骨髄穿刺検査の際にサキ様の細胞を調べたのですが移植細胞にも腫瘍が発見された為、不可能です」
「そうですか…」

「ドナーバンクを調べたところ現在はサキ様とHLA が一致するものがありません。6親等の血筋の方にご協力して頂くようになります。宜しいですか」
「はい。連絡を取ります」

サキは時間を確認する。
「ケイ。ノアを迎えに行って」
「分かった」
「後から追い掛けるから」

医師は首を横に振った。
「サキ様は…このまま入院です」
「え⁈入院?いきなり?」
「はい。かなり芳しくない状況です」

サキは呆然となった。無意識にケイの手を握った。まさか…残り10%なの…?サキは漸く緊急事態を悟った。あまりにも突然の事で淡々と受け入れていたが、家に帰れない程だとは…。

「そ、そんなに重いの…?」
「急性骨髄性白血病は骨髄芽球が未熟な状態で癌化するのですがサキ様の場合はそのスピードが早いのです。直ぐにでも移植すべきです」

全てを理解したケイが立ち上がった。
「ノアを迎えに行く。家に戻って着替えを持ってくる。お父さん達に連絡を取る」
「う、うん…分かった…」

・・・

サキはナースアンドロイドにクリーン病棟に案内されて個室に入院する事になった。
「綺麗な部屋じゃないとマズいくらいに悪いの?私…どうすればいいの?」

ナースは優しく微笑んだ。
「先生は名医です。きっと善くなりますよ。不安かもしれないけれど、落ち着いてゆったりとなさって下さい。大丈夫です」

・・・

幼稚園にて

ケイは幼稚園に到着した。普段よりも30分近く遅れてしまった。ノアは飛びつくと遅いと言って膨れる。送り迎えは父親の担当なのだ。母親は仕事が忙しい事を知っている。

2人は手を繋ぐと保母アンドロイドに手を振って歩き出した。道中のノアは幼稚園での出来事を語りながらピョンピョンと跳ねてご機嫌だ。やがて家に到着した。

ノアは仕事部屋に走って行く。だが扉が開かない。ケイは娘の目線に腰を下ろした。
「ママはいないんだ。病院なんだよ」
「…お風邪が悪くなったの?」

「うん。暫く入院しなくちゃいけなくなってね」
「え!ホント⁈」
「後でお見舞いに行こうね」
「うん!行く!」

「だから…パパはママのパジャマとかを用意したり、ジィジ達に連絡を取らなくちゃいけないんだ。1人で遊んでてくれるか?」
「うん。分かった」

ケイはノアの服の着替えを手伝いジュースとおやつを出して絵本アプリを立ち上げた。ホログラムが立体画像となって宙に浮く。ノアはジュースを飲みながらシンデレラを見始めた。

ケイは寝室に行くとアンドロイドのエイトにアクセスする。エイトが媒介するのだ。サキの両親は携帯電話を所持していない。村民には必要ないからだ。やがて2人の立体画像が現れた。

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