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アンドロイド転生1079

2120年10月9日
イギリスのフラットにて リョウ
日本のリペア室にて キリと父親のサトシ

リョウの目前にはイヴ。そしてキリとサトシ(リョウの伯父にあたる)の前にもイヴがいる。彼女は同時多発的に存在出来るのだ。エリカが復活して約2ヶ月。彼女の近況報告に皆が集まった。

イヴが微笑んだ。
『昨日のエリカは両親と公園に訪れました。私は犬の散歩をしていたメイドアンドロイドを操り、彼らの前に導きました。メイドの視覚聴覚をご覧下さい』

立体画像が浮く。最初に見えたのは犬の背中だった。直ぐに視線が移動して緑でいっぱいの公園を見渡した。ベンチにスズキ夫妻とエリカがいた。3人の姿がどんどん大きくなってくる。

エリカは母親のランの胸に抱かれていた。手足をバタバタとさせてご機嫌の様子だ。
「エリちゃん。ワンワンだよ」
「ワ……ワ…」

ランが笑う。
「うんうん。上手!」
エリカは嬉しそうに母親を見上げてアウアウと声を上げる。幼い声が愛らしかった。

その口元から涎が落ちた。ランはタオルで優しく拭き取った。するとエリカの瞳から涙が溢れてランの胸に顔を埋めて泣き出した。ランはエリカを抱き締めて頭に何度もキスをした。

愛されているのだとリョウは感激する。この女性は人間だとかアンドロイドだとか関係がないのだ。エリカは大事な我が子なのだ。
「優しい人だな…」

キリは嬉しそうに目を細めた。
『うん。優しかった。エリカの事をすっごく大事にしてた。それがよく伝わったよ』
「そうか…良かったなぁ…」

イヴも微笑む。
『ええ。とても愛情深いですね。エリカは嬉しいと泣けてくるのだと感心しておりました』
「そうか…」

『幸せですかと尋ねたところ凄く幸せだと』
リョウは感極まった。
「イヴ…有難う…。本当に有難う」
『いいえ。元は村長の指示から始まった事です』

「そうだな…伯父さん…有難う」
『いや…そんな事はないさ。なるようになっただけだ。エリカの頑張りが身を結んだのかもな』
「うん。そうだな。頑張ったんだよな」

エリカは元は18歳モデルだった。自由な身体と言葉を持っていたのだ。それが生後半年モデルになってしまった。本人が望んだわけでもないのに。そもそも転生したかったわけでもない。

なのに俺の我儘で勝手に2周目を決めてしまった。しかも赤ん坊だ。今思えばなんて酷い話だろうか。復活して直ぐは怒ってばかりだったらしい。当然だ。俺が同じ立場なら激怒する。

リョウの顔色を読み取ったサトシは微笑んだ。
『リョウ。エリカは頑張った。身体は子供だが心は成長したんだ。幸せを噛み締めてきっとお前に感謝しているさ』

「そ、そうかな…」
『そうさ。幸せで泣くくらいだ。だろ?』
キリも何度も頷いた。
『うん。アンタは正しい事をしたんだよ』

イヴもニッコリとする。
『タケルやエマに対しても謝罪したのです。全てを気付く事が出来たのだと。私が代わりにタケルに伝えました。彼も理解しました』

「そうか…。タケルも許したのか…」
リョウの胸のつかえのひとつ。俺もタケルに謝らねばならない。エリカだけが悪くない。エリカに抗えなかった俺の罪だ。

「分かった。俺からもちゃんと謝罪する。近いうちにタケルと話したい。イヴ。伝えてくれ」
『はい。あなたも成長するのですね』
そう。遅いも早いもない。気付きが重要なのだ。


※タケルに犯人探しを依頼されたもののエリカに抗えず協力したシーンです


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