アンドロイド転生268
深夜 カノミドウ邸
アオイはトウマに自分はシュウのかつての恋人であり輪廻転生したのだと打ち明けた。シュウはニッコリとした。
「まぁ、そういう事だ」
トウマは呆れたように鼻で笑った。
「何言ってんの?…祖父ちゃん、アンドロイドに騙されてんだよ…!そんな事あるわけない…!転生した?恋人同士?婚約者?ふざけてる」
シュウは益々笑った。
「何を言ってる?ユウリ(玄孫)はユリコ(妻)の生まれ変わりだって言ってるじゃないか」
「そ、そうだけど…」
「実際、そういう事があったって話しだ」
アオイはトウマ見つめた。
「私は騙してない。本当のことなの。ずっとずっと言いたかった。生まれ変わって16年経ってやっと言えたの。この時を夢見てた」
トウマは無言でアオイとシュウを交互に見た。何と言えば良いのだろう。本当にそんな事があるのか?シュウは厳しい顔をした。
「アオイ。残念ながら僕の命はそう長くない」
アオイはハッとなる。シュウは続けた。
「最後に君に逢えて良かった。本当に有難う」
「シュウちゃん、そんな事を言わないで」
だが彼の痩せた身体、優れない顔色はそれを物語っていた。
シュウは首を横に振った。
「こればかりは仕方がないな。アオイ。これからも幸せでいてくれ。あ、今度は僕が生まれ変わるよ。君は気付いてくれるかな」
アオイは彼の手を握り締めた。
「分かる!絶対分かる!」
シュウは大きく息を吐いて枕に頭を付けた。
「もっと話したいんだが…」
アオイは立ち上がった。不安そうな顔になる。シュウは薄く笑った。だが力がなかった。
「疲れてきたな。歳を取るものじゃないな」
「シュウちゃん…」
アオイも話したかった。だがこれ以上は無理をさせてはならない。残念だが潮時だ。
「だ、大丈夫…?」
「ああ。疲れただけだ」
シュウはアオイの頬にゆっくりと手を当てた。
「幸せでいてくれ」
「シュウちゃんもね」
「ああ」
シュウは瞼を閉じた。眠るようだ。本当に疲れているのだろう。
「か、帰るね」
「ああ。本当に…来てくれて有難う」
名残惜しい。帰りたくない。ずっと傍にいたい。だがアオイは立ち上がった。アオイは立ち去ろうとしたが大事な事を思い出した。チアキにシュウを説得しろと言われたのだ。
仲間は守備良くダイヤモンドを手に入れた。だが我々が奪った事を口外しないと約束してもらわないと困るのだ。ホームの存在が暴かれないようにする為だ。アオイは息を吸い込んだ。
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