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アンドロイド転生797

2118年6月18日 夕方
カノミドウ邸:シュウの寝室

高齢の義祖父のシュウ。心臓が弱っており最近はほぼ寝たきりだった。あと1回発作を起こしたら覚悟をしなくてはならないらしい。現在の容態は安定しているとナースは言う。

孫嫁のシズカは心電図と体温と呼吸を確認した。体調は問題なさそうだ。顔色もまずまずである。穏やかな顔で休んでいた。
「お祖父様…」

直ぐにシュウの瞼が開いた。眠ってはいなかったようだ。目線をシズカに向けた。
「うん…?」
「お具合は如何?」

「大丈夫だ…」
そうは答えるものの声の力は弱い。シズカは不安になる。見舞いなど受けられるだろうか。だがシズカはモネの意向を伝えた。

シュウの表情に変化はなかった。しかしシズカのある一言で顔色が変わった。
「アンドロイドの…アオイ…?」
「そう。モネちゃんとアオイが来るって言うの」

シュウの心が踊った。元婚約者でアンドロイドに転生したアオイ。来ると言うのか。昨年末が最後だと思っていたのに。それで2度と逢えないと諦めていたのに。俄かに力が漲って来た。

シュウはしっかりと頷いた。
「分かった。是非来てもらってくれ」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だ。客が来れば元気になる」

シズカはナースアンドロイドに顔を向けた。ナースは優しく微笑んだ。
「15分程度ならば問題ありません。人と会う事は気分転換になるでしょう」

シズカは頷いた。
「じゃあ…明日にでも来てもらいますね」
「分かった」
シズカは笑顔で寝室から出て行った。


港区南麻布:タカミザワモネの部屋

モネの携帯電話がコールした。相手先はカノミドウシズカだ。アオイと顔を見合わせる。シュウの見舞いを申し出た。結果はどうなのだろうか。モネは息を思い切り吐くと力強く頷いた。

応答するとシズカの立体画像が宙空に浮いた。
「おばさま。如何でしたか?」
シズカはニッコリとした。
『来て下さいって。明日はどうかしら?』

モネの瞳が輝く。よし。明日は学校を早退する!
「分かりました!有難う御座います!お伺いします!2時頃は如何ですか?」
シズカは微笑んで承諾しやがて通話を切った。

アオイとモネは万歳して抱き合った。
「カー!やったね!やった!」
「信じられません。逢おうと決めてその2日後には叶うなんて…」

人間とアンドロイドの違いをまざまざと知った。自分は16年も掛かったのだ。でも…でも逢えるのだ…。アオイの心が震え出し感極まって泣き出した。その背をモネは優しく撫でた。

「ほらね?神様は分かってくれてるよ。だってカーは凄く凄く頑張ったんだもん」
「有難う…有難う御座います」
「明日が楽しみだね」

モネは勢い良く立ち上がった。
「よし!これからお土産を作ろう!ゼンゼン(執事のザイゼン)と一緒に何かを作ろう!」
アオイも立ち上がった。笑って涙を拭った。

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