見出し画像

アンドロイド転生1045

2120年8月14日 深夜
フランス 某ホテル

エリカを復活させようと決めたリョウと伯父のサトシ。イヴに頼んでTEラボのアンドロイドに密かにダウンロードする事に決めた。さて…どんなタイプに…?リョウは閃いた。

「伯父さん!いいのがあるぜ!エリカにはピッタリだ!あのさ…?赤ん坊にしちゃうんだ!」
『アンドロイドの赤ん坊なんているのか?』
世相に疎いサトシは知らなかった。

リョウは声を落とした。
「ほら…色々あって産めない人もいるじゃん?それで最近造られたんだ。大人気だよ」
『ああそうか…。成程…そうだな』

リョウは苦笑する。
「下手に大人の身体だとまた暴走するかもしんないし…ベビーなら動けなくていいぜ。で…親代わりの人間に可愛がって貰えれば幸せだ」

サトシは頷くとイヴを見つめた。
『うん。それはいいな。アテがあるか?』
イヴはニッコリとした。
『はい。とても良い条件を探し出しました』


同日の午後(日本時間8月15日)
日本 東京吉祥寺のある住宅にて

ラン(蘭)は3年前に結婚してスズキの姓に変わった。彼女が1番好きな花はスズランだ。花言葉は“幸せの訪れ“。そんな花に似たスズキランと言う名前。その縁が嬉しかった。

それを活かそうと決めてsuzuranと言うハンドルネームでSNSで活動している。ガーデニングのアマプロとして人気だ。友人からはスズキ姓と結婚したのは計算なの?と揶揄われた。

ランは今日も庭で手入れをしていた。一息つくと繊細な枝を眺めた。花の時期は終わってしまったがスズランによく似たエリカと言う花だ。南アフリカ原産でスズランエリカと呼ばれるのだ。

すると夫が庭にやって来た。
「ラボから連絡が来たぞ。出来たって」
ランの顔が華やいだ。2人は直ぐに車に乗り込むと茨城県つくば市のTEラボに向かった。

2時間半後。ラボに到着すると職員アンドロイドがにこやかに出迎えた。館内に誘導される。ドアの前で立ち止まると職員は微笑んだ。
「心の準備は宜しいですか?」

夫婦は顔を見合わせた。緊張が高まる。だがずっとこの日を待っていたのだ。2人が頷くと扉が開く。大勢の人がいてベビーを抱いていた。騒めきが心地良い。幸せのオーラが漂っている。

スズキ夫妻は誘導された。間もなく職員は立ち止まるとベッドを指し示した。2人は覗き込む。赤ん坊は眠っていた。豊かな睫毛が曲線を描いており小さな鼻とぷっくりとした唇が愛らしい。

ランの鼓動が早まる。なんて可愛いの…!自然に顔が綻んだ。職員はニッコリとする。
「起こしますね」
「は、はい!」

職員が赤ん坊の頸に触れると瞼が開いた。少し垂れ目だ。夫が笑った。
「君に似てるな」
そう。ランに似せて造られたのだ。

職員が抱き上げてランに預けた。まるで人間の赤ん坊のように柔らかだ。肌は瑞々しくとても造り物とは思えない。何だか涙が滲んできた。ベビーはランを見つめてキャッキャと笑う。

すると親指をしゃぶり出した。知ってはいたがランは驚いた。職員は微笑む。
「赤ちゃんらしい仕草をします」
「か…可愛い…」

ランはベビーの頬を優しく突いた。
「こんにちは。あなたの名前はエリカよ。私の大好きなお花なの。宜しくね」
エリカの瞳が輝いているように見えた。

いいなと思ったら応援しよう!