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アンドロイド転生1204
2127年8月1日
都内某所 公園にて
(ルイとホナミが出会って3ヶ月目)
「付き合ってほしい」
ルイの表情は真剣だった。ホナミは一瞬ポカンとし、やがて満面の笑みになった。心の底から喜びが溢れ出している。
「ルイさんの細胞も告げましたか?」
ルイは笑いながらホナミから告白された時を思い出す。彼女の細胞が2人は遺伝的に合うと電気信号で告げたと言ったのだ。
「うん。告げた告げた。電気信号が全身に回った。そこでホナミが好きだ!って分かった」
「良かったです。ではお付き合いしましょう。私達はこれからラブラブのカップルですね」
「…ラブラブってなに?」
「100年以上前に流行った言葉で、主に恋人達が深く愛し合っている様を表すそうですよ」
「へぇ…」
ホナミは手を後ろに組んでピョンと跳ねた。
「へぇ…だなんて感情の動きが鈍いですね。さぁ。張り切って出掛けましょうか」
「どこに?」
「ラブラブのカップルが行くところは決まってます。ホテルですよ」
ルイは絶句した。ホナミは舌を出す。
「と、言いたいところですが、まだでーす」
ホナミはニッコリとしてルイを見上げた。
「まずは段階を踏みましょうね」
ルイに向かって手を差し出した。
「さぁ、手を繋ぎましょう」
ルイはつくづく思うのだ。ホナミは面白い。そして可愛い。どんな時でも臆する事なくハッキリと何でも言うのだ。タウンの人間は概ねそうなのだが、とりわけホナミは大胆だ。
「ホナミ。敬語にしなくていいよ」
「お!それはまたまた2人の仲を近付ける発言ですね。嬉しいです。では、ルイ!これから宜しくね!私達は最強のカップルになるよ!」
ルイはニッコリとした。確かにそう思う。2人は探究心が強く、知的好奇心が旺盛なのだ。そして思索を好む。世の中の「不思議」を知りたいと言う強い思いが合致していた。
2人が出会って3ヶ月。ルイはホナミの明るさと知性に惹かれたのだ。愛らしい容姿も保護欲が湧く。そしてキラキラとした瞳が魅力的だった。何だか元気をもらえるのだ。
手を繋ぎながら熱気に包まれる街を2人は歩いた。道行く人がルイを見る。彼の赤毛は目立つのだ。銀の瞳も。ホナミは惚れ惚れとする。
「ルイはやっぱりカッコいいなぁ」
そしてホナミは思い出すように遠い目をした。
「大学のキャンパスで…遠くにいるルイを見た時にビックリしたの。頭が燃えてる!って。なのに周りも本人も平然としているんだもん」
※この時代はヘアカラーをしないため、赤い髪はアジア人にはあり得ません。
ルイはハハハと声を上げて笑った。
「で、ルイはどんどん私に近づいて来て…なのに止まらなくて…私にぶつかったの」
「え?」
ホナミはクスクスと笑った。
「やっぱり覚えてないんだ。きっとまた難しい事を考えてたんだろうね。で、ぶつかって…目が合ったの。銀の瞳で私をジッと見つめたの」
「え…そうなの?」
「うん。その瞬間私はあなたに恋したの。ルイは…『あ、どうも』って言って行っちゃった」
「そ、そうか」
ホナミは目を細めて嬉しそうだ。
「出会いってほんの些細なことから始まるね。でも今は手を繋いでいる。あの時…お互いにキャンパスを歩いていなかったら…今頃は何をしてたのかな」
「そうだな…。きっと俺は図書館にいて、きっとホナミも図書館にいて、きっと2人はぶつかって、3ヶ月後に手を繋いでいたと思う」
ホナミは目を丸くしたが、親指を立てると笑った。