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#12 白化するサンゴ

料理好きの旧友からレモネードの作り方を教わった。輪切りにしたレモンは鍋の中で彩度高く白色か黄色という存在として主張してきた。十分に熱され、いつしか透明の艶やかな物体へと変化した。好きなだけグラスに放り込んで炭酸水を注ぎ込む。

海の世界でも温度は、何かを変化させる力を持っている。

例えば、サンゴ。

サンゴの白化(coral bleaching)

地球温暖化の影響の代名詞ともなっており、周りのダイバーが口を揃えてこの急激な変化を話題にしている。

サンゴは本来、褐虫藻という藻類と共生して生命を維持している。(詳しいメカニズムは#8 Coral Reefで説明している)

だが、海水温度の上昇により褐虫藻がサンゴの組織内に住めなくなる。褐虫藻が色素とともに色とりどりのサンゴを形成していたが、いなくなることによって本来の石灰質のサンゴの色としての白色が出てくる。これが白化と言われる現象だ。

白化はサンゴの死を意味すると思っていたが、必ずしもそうではないらしい。生存するエネルギーが残っていれば、褐虫藻とのパートナー関係を再び結べば復活することができる。

だが、食事の供給が断たれてそんなに長く生きられるわけがない。

僕はそのつらさを実感するのに適した経験をしている。

ちょうど一月前から、東洋医学に関する書籍を読んだことをきっかけに、週に一度だけ断食をしている。その日は大体3時ごろからフラフラになってくる。そうして、何も食べない決め事にもかかわらず、ヨーグルト...ドーナツ...と、結局手を伸ばしてしまう。

僕がフラフラになる事で余分な何かが削ぎ落とされて健康的になるだけだが、サンゴがフラフラになるとは、サンゴの骨格そのものへが侵食されやすくなるということ。人でいうと、風に当たるたびに骨や筋肉がポロポロ取れていく、そんなイメージだ。

他への影響

僕がフラフラになっていても誰も困らないが(仕事に影響が出てない限りは)、サンゴはそうではない。

立体構造をしているサンゴは、多様な生物の住処となって生物の多様性を支えている。住処をなくした他の生物たちもまた、新たな住環境を探すリスクに晒されることになる。

白化の原因

一つには、水温が数日から一週間の間に水温が1度上がる環境変化が白化の原因とされている。

暑さのダメージを受けた褐虫藻が、本来ありがたい物しかサンゴに供給していなかったのに、サンゴにとって毒性のある酸素を放出してくる。

その結果、悪影響しか及ぼさなくなったパートナーシップは解消されることになる。すると、今まで光を受容していた褐虫藻がいないため、太陽光を直接浴びるハメになる。これがより白化を加速させる。

僕は、夏バテはあまりしない方だが、それでも暑くて機嫌が悪いときは、愛想笑いもできず、暑い暑いと文句しか出てこなくなる。無性に近くにいる人にやつ当たってしまうのも申し訳ないので、そっと離れてひとりになったりする。

海水温度に加えて、窒素量の変化も一つの原因となるようだ。

適応の可能性

長い年月をかけた進化の過程の中で、高温に適応していった種がいる。

最も高温に耐えられる種は35度の海水で生きている。普通の種であれば確実に白化している温度だ。

このようなに環境に適応する動きはあっても、9割のサンゴはダメージを負い死んでいっている。

守るには

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(National Ocean Serviceより)

日本語訳
・持続可能な魚介類を選ぶ
・水をムダ遣いしない
・海水浴場やサンゴや水源に関するボランティアをする
・サンゴを贈り物しない、もらわない
・エネルギー効率の高い電球を利用し、温室効果ガスの放出を減らす
・ダイビングするときは、決して触れない
・海ごみの救世主になる。ゴミを捨てない、捨ててあったら拾う
・化学物質を海に流さない。富栄養化でサンゴに光が届かなくなるから
・サンゴの知識を深める
・サンゴに優しいボートの運転を練習する

温暖化というと自分一人では食い止めることが難しい気がしてくるが、それでもできることはたくさんある。

今日からビニール袋が有料化される。プラスチックゴミが海に流れるのを少しは減らせるだろうか。

湿度が著しく高い僕の部屋。除湿機にたまった水をいつもなら洗面台に流していたが、トイレのタンクに使ってみる。

少しでもサンゴが生き延びれますように。

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