#7 陸と海の狭間で
夏らしいリキュールがいくつか届いた。そのうちのひとつ、南国のパーティを想起させるようなラベルのパッションフルーツにグレープフルーツジュースを注ぐ。優しいオレンジ色がグラスに広がると同時に、僕の視界がワントーン明るくなる。
南国と言えば白い砂浜のビーチを連想するだろう。美しさにひかれて足を踏み入れると、海藻が足に絡まって気持ち悪い思いをした人もいるかもしれない。そんなことを気にせず、頭に海藻をのっけて遊んでいたかもしれない。
今日は、海遊びをする場所によくいる生物に愛着がわくかもしれない話をしたい。
潮間帯に生きる生物
潮間帯とは、潮の干満により水中になったり陸地になったりする場所のことで、地球上で長い歴史をもつ生息地の一つ。なぜなら潮汐が天文学的な力によって引き起こされており(詳細は過去記事「潮の満ち引き」参照)、海が作られたと同時に誕生しているからだ。
そして、潮間帯だけで主な動物門がすべて制覇できるほど、多様な生物の棲みかとなっている。
潮間帯の地面は岩・砂・泥など異なる特徴の場所があり、それぞれ固有な生態系として生物に棲みかを与えている。岩場では多くの海藻が分布している。泥や砂っぽい場所ではカニや二枚貝など、その堆積物の中に棲む生物がそのエリアを占領している。
どうやって生物は潮間帯に適応したか
潮が満ちている間、生物たちは意気揚々と活動する。特に、食事において。
海藻を食べたり、餌を捕まえたり、フィルター式に食べ物を摂る生物は潮にいる微生物をこしとるなど、様々なスタイルでエネルギーを摂取する。
打って変わって、潮が引くとオアシスは太陽光にさらされ乾燥したり熱くなる過酷な環境へと変貌する。この事態に対し、どう対処しているのか。
・殻のある貝などはきつく閉じて内部の湿度を保持する
・海藻の下にもぐって直射日光を避ける
・岩の隙間に集団でうずくまり水分の蒸発を緩和させる
・活動を完全に止めるもしくはゆっくりする
などだ。
こうして過酷な環境と戦っていたとは、涙ぐましく、愛しい。
潮間帯の生き物は、陸上での環境も海中での環境と同じように生物に心地良いものだと思っていた。どうしてわざわざこのような過酷な環境で生きているのか。捕食者からの逃走か。
この謎も今後の宿題にしたい。
近年、気候変動の影響か夏の暑さが激しくなっている気がする。僕らは、殻に閉じこもる代わりにコンビニに立ち寄り、冷房を浴びる。水も買って体内の水分量を維持する。
生命誕生後のはやいうちに起きていた戦いをいまも僕らが体験していると思うと、同じ生き物としての仲間意識が芽生える。
おかしな妄想だと非難されたら、そんなときは殻をきつく閉じて時が過ぎるのを待ちたいと思う。
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