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願うまで覚めない現実逃避を。

「扉が閉まります ご注意ください~」声が聞こえる。ガタンゴトン 音が聞こえる。夜、列車の中、私は目を閉じる。最寄り駅を通り過ぎた今は見ないふり。

「明日、何時出勤だっけ。」「天気大丈夫かな。」「やり忘れてたあれ、やらなきゃな…。」装う私を、理性が引き戻そうとする。

私は抗い、目を閉じる。心を遠くに投げて、景色を眺める。理性、景色、理性、景色。そうして何駅過ぎた頃、ふいに全部要らないと思った。

私は意識を手放す。深い、眠りの底。今夜はもう戻れない。

何度か目が覚めた。ぼんやりと目を開ける。山奥、吸い込まれる闇。「もう戻らない」私に言い聞かせて目を閉じる。揺れが心地良い。

何時間経ったのだろう、また目が覚めた。山奥抜けて海、溺れそうな深青。「ここはどこ」と呟く。「私はだれ」にも似た問いに私は笑う。答えは無い。ここがどこでもいい。ここで私は誰でもない。

そうしてまた目を閉じる。窓からの冷気が心地良い。揺れに身を任せる。どこかに着くまでは、このままで。願うまで着かないことを願って。だからずっとずっとこのままで。


そんなことを思いながら。
おやすみなさい。
Sena.

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