もうじき夏が終わるから 考察&Story
考察
1.
2.
~♪
3.
---Story.
これは短い夏の儚い想い出だ。
Ⅰ.
ある夏の朝、僕は君を待ちながら小説を読んでいた。
時間はいくらでもある。僕は君を待った。
遠くから花火の音がして、あぁ... と僕は息をつく。
夜になったことに気がついた。
夕日の中を歩く君の姿を思い出す。
初めて君を見たのは朝顔が咲き始めた頃。
バス停へと歩く君は鳳仙花のように、とても綺麗だった。
僕は家に帰ってピアノを弾いた。
Ⅱ.
今朝は、ラジオを聴きながら君を待っていた。アベリアの香りがする。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
いつの間にか夜になっていて、ふと、それに気がついたことを覚えている。
君へと誓った歌を、君に聞こえないように心の中で叫びながら、家に帰る。
夏が終わってしまうと君を待つ毎日は送れない。
そんなことは分かっているのに。
僕は夢の中でも君に会えない。
Ⅲ.
始発の音を今日も聞いた。
騒がしい駅のホーム。人の声、電車の音。
もう終電車だったのだと気づいて、家へと歩く。
途中、君の声を思い出した。
「私ね、緑青色が好きなの」
「緑青色?」
「そう、ターコイズ色。知ってるでしょ?」
今日もまた、蝉の鳴く音が聞こえる。
変わらない日常。
君の声が頭から遠くなる。
僕はピアノを弾くのを忘れて眠りについた。
Ⅲ-2
(朝、今日も駅の裏で、君は絵をえがいていた。
「座らないの?」僕は駅のホームにぽつんと置かれた木椅子を指差す。
君が首を横に振ったから、僕は黙って君の絵を眺めた。
藍色に塗られたキャンバス。君はその上に花を咲かせていく。
僕は帰ってピアノを弾くことにした。
君を待っていたのに、気がついたら夜になっていた。)
Ⅳ.
初めてピアノを弾くのを忘れたことに気がついて、僕は目を覚ました。
明日こそ必ず君に会わなくては。
君の声を聞きたい。君の絵が見たい。君に会いたい。
そんなことは、もう、言えない。
もう君がいない。そんな浅い夏は終わらせたい。
日の落ちる街、蝉の声、花火の音、
どれも君がいないと意味がないのに。
電車の去る音が聞こえる。
夏が、終わって往く。
End.
Sena.📖