
無造作な日々の5「愛60ストーリー」
あの人:
(愛までまだ60kmザ・ムービー。この秀逸な映画タイトルに押しつぶされそうになる。正直自分の才能に慄いてる。愛がテーマになるであろうまだ見えぬストーリーであるが、愛とは無縁の俺がどのような映画をつくるか。ゆずことミシェルも楽しみにしていることだろう。だが、俺は誰かのために、何かのために映画をつくるわけではない。それこそがつくるということなのだ。料理をつくることとよく比較されるがまったく違う。料理は素材、道具があってこそだ。そこには重力が常に存在している。重力が存在している時点で創作とは別物になってしまう。おっと、映画の話だ。ついつい熱くなってしまったぜ。ふっ)
ミシェル:
「ちょっと、何ニヤッてんの?」
あの人:
「あぁ、ちょっと映画の構想をね」
ミシェル:
「えっ?ストーリーできたの?」
あの人:
「全然」
ミシェル:
「なんだぁ。曲は?」
あの人:
「全然」
ミシェル:
「もう!せっかくタイトル考えたのにぃ。早くつくってよね!」
あの人:
「まぁ、まて。こういうのは突然くるから。ブワァと。ところで、ゆずこちゃんいないね」
ミシェル:
「なんか遊びに行くって昨日行ってたよ。彼氏かなぁ?」
あの人:
「へぇ。彼氏いるんだ。愛だねー」
ゆずこ:
「おはようございます」
ミシェル:
「あれ?今日遊びじゃなかったの?」
ゆずこ:
「あぁ、友達が急に仕事になって来週に変更」
あの人:
「なんだ友達かぁ。愛までまだ遠いねー。まだ100kmくらいあるね」
ゆずこ:
(それってそういう使い方するの…)
「映画のストーリーできたんですか?」
ミシェル:
「それがまだだって」
あの人:
「そのうちブワァとね。っていうか、ストーリーはみんなも思いついたら教えてね」
ミシェル:
「ん〜、イメージ的には東京ラブストーリー的な?」
あの人:
「古いの知ってるねー!?カーンチだな」
ミシェル:
「ネフリかなんかでリメイクやってたからね。それ見た」
あの人:
「なるほどね。けどちょっとイメージと違うなぁ」
ゆずこ:
「私は見たことないからわからないけど、何かを参考にするのはいいかもね」
あの人:
「バカバカ!参考にする前提なんて面白くないー!もう!」
ゆずこ:
「はいはい、すみませんね」
ミシェル:
「愛までまだ60kmだから、遠距離恋愛とかどう?」
あの人:
「いいねー!それ、いいねー!」
ゆずこ:
(いや、60kmは遠距離とはいえないでしょ…)
あの人:
「会いに行くときは電車?車?」
ミシェル:
「そりゃ車でしょ」
あの人:
「じゃあ、会いに行く途中でいろんな大スペクタルがありぃのでみたいなのどう?」
ゆずこ:
(そこ大スペクタルでくくるなよ…)
「なんかそれだとアクション映画っぽくなりません?」
あの人:
「そう?ワイルドスピード見過ぎじゃない?」
ゆずこ:
「確かにシリーズ全部見てますけど」
あの人:
「とりあえず、ストーリーの方向は決まったな!」
ゆずこ:
(決まったんかい…)