消えゆく言葉と喪失の歌②ジンジャー姉妹がカバーする白日(King Gnu)
ジンジャー姉妹のカバーする白日(King Gnu)南部弁が実にはまっているのですがその考察です。
注目ポイントは1分あたりで使われている「ぃあんすが」。これは南部弁でも廃れつつある語尾なのです。(前回あらすじ)
南部弁について
南部藩は元々紀州(山梨県)の南部氏がルーツで海を渡ってきたそうです。そういったアグレッシブな気質をもって南部藩存続のために分家したり色々外からお婿さんをとったりしながら南部藩を存続させていました。
加えて港町でもあるので物流が盛んで西の方からの文化も入りやすく南部弁の語尾で「やんす(ぃあんす)」「なす」は、西の方の方言「~やす」がなまったのではという説が。
そして、9代目南部氏は薩摩藩からの婿養子。
「~ごわす」
と語尾につけるお殿様です。「殿様の言葉ならかっこいいだろう」ということで町民はマネをしていって、それが南部弁の
「~がんす」
「~ぃあんす」←「~がんす」に「~なす」が混じった?
という語尾なのではないのだろうかという話です。この言い回しは、八戸の町言葉というか山手言葉でお城周辺地域の言葉なんですね。
ということを、中学の時の音楽の先生に聞きました(急な責任転嫁)。念のため軽くググったんですが、鹿児島弁と八戸弁の関係は出てこないので真偽不明です。メンゴ!
機会があったら図書館で調べてみます。
でも、9代目のお殿様は薩摩藩(島津家)からの婿養子というのは本当で、故郷を忍んで作られた庭園が八戸市にはあります。
丸い木を浮島に見立てた枯山水のかわいいお庭です。薩摩藩の庭師が作ってくれました。
というわけで廃れゆく言葉なんですがまさに首の皮一枚で存続している状態です。が、八戸市はまあまあしぶとい気質があってなくなりそうになりながらもなくならない物や文化がたくさんあります。ジンジャー姉妹さんが「ぃあんすが」を詩に組み込んでくれたように誰かが存続させようとしてくれる。
少し話は逸れますが「せんべい汁」もB-1グランプリがなければなくなっていったと思います。
こういったしぶとさは幾度となくヤマセによる飢饉にみまわれた地域の住民がもつ粘り強さなのかなと私は思っていて、喪失と再生の歌を聞くと私は八戸の光景が頭にうかぶのです。
八戸のイメージカラーって私はグレーです。グレーのグラデーション。ちょうど白日のMVのような。荒涼とした中で微かな何かだけを頼りに、あるいは、荒涼としていても生きてゆかねばならない。そんな空気感を感じるのです。
八戸の雪
真っ白に全てさようなら
降りしきる雪よ
全てを包み込んでくれ
今日だけは
全てを隠してくれ
最後に、雪に願うこちらの歌詞について。こちら最初は普通に雪が沢山降り積もって景色を覆い隠す風景を思い描いて聞いていたのですが、ジンジャー姉妹さんのカバーで
そういえば、八戸ってあんまり雪降らないや。
と思い至りました。
そうなのです。のっそのっそ(「のっそ」とはカバが降ってくるみたいに大量に雪が降ってくるイメージです)と雪が降ってもそれはすべてを隠す程には積もらずに、これまでの風景は白日の元に晒されたままなのです。
辛い。
「白日」というタイトルに目眩がし、足元が崩れ落ちるような気分がします。
でもこれって雪国以外の皆さんはすぐに思い至ることなのかな。どうなんでしょ。
以上、ジンジャー姉妹さんのカバーから消えゆく方言と消えかけていたせんべい汁に思いを馳せ、King Gnuの白日について考えてみました。
因みに、広瀬香美さんがカバーしている動画もあるのですが、こちらは再生に向けた温かい眼差しが「大丈夫だよ」という優しさが感じられるカバーで広瀬香美さんらしいなと思います。
猛吹雪の中でガシガシ雪かきしながら歌っているようなカバーでこちらも好きです。