☆タイドラマ感想☆He's Coming To Me

 めちゃくちゃねたばれしてます。ラストについても、言及しています。



 素晴らしいタイドラマでした。全8話なのですが、その中にぎゅっと素晴らしき世界が凝縮されている感じ。願わくば、続編を希望致します。タンくんとメットさんの、その後が見たいんだ…!!

 こちらのドラマは、まず設定自体が、「流石、タイドラマやで。最高やで」みたいな、思わず似非関西弁になってしまうくらい面白いです。主人公のメットさん(めっちゃ可愛い22歳)は、幽霊です。成仏は、していない。

 成仏出来ない理由は三つあります。

①自分の死因を知らない

②供養をしてもらっていない

③天寿を全うしていない

 メットさん自身は過去の記憶を失っていますが、持病の心臓麻痺で死んだ事は覚えているので、自分が成仏出来ない理由は②の供養をしてもらっていないからだろうなと思いながら、誰もお墓参りに来てくれない、荒れた自分のお墓で過ごしていました。そして、そこに現れたのが一人の少年、タンくんです。メットさんのお墓を見て、あめちゃんとお線香をお供えしてくれるめちゃくちゃいい子。タンくんは、いい子なだけでなく、実は幽霊の姿が見えるという、「メットさん、あなたの運命の相手が現れたで」と、また似非関西弁になってしまう嬉しい展開。そんな少年タンくんと、年一度の清明節の時に逢瀬を重ねるメットさん。なんか、織姫と彦星みたいだな。

 そんなタンくんが、数年現れなくなってしまった時のメットさんのしょんぼり具合が可愛すぎて、タンくん、早く会いにきて上げて!と、嘆願書を出したくなる勢いです(誰に?)。ですがメットさん、待っていた甲斐がありました。タンくん、お日様笑顔のめちゃくちゃ可愛い大型犬に育って再登場です。

 なんか、このドラマのキャスティングめちゃくちゃいいなあと思うのが、しょんぼり顔が可愛いメットさんに、この見ているだけでこちらも笑顔になってしまうお日様タンくんをお相手にした事。メットさんの前に再び現れた時、タンくんは法学部の大学生になっていたのですがメットさんよりは年下。でも、その包容力が半端ないです。

「メットさんの死因は、心臓麻痺じゃない。その謎をとかないと成仏出来ない」という理由から、二人は同居を始めます。20年ぶりにお墓から出たメットさん。謂わば浦島太郎状態です。なので、ちょっぴり頓珍漢な事をしてしまったりもします。ですがタンくんは、そんなメットさんに怒る事は絶対なく、「しょうがないなあ」という感じで、優しく説明したり、メットさんの好物のチョコレートをお土産に買ってきたりと、もう出来るわんこなのです。素敵だなあと思ったのが、最初は友人のプリンスとキャオに、「冷蔵庫何も入っていない」とからかわれていたタンくんですが、いつの間にかその冷蔵庫にチョコレートが沢山入っていた事。何の説明もない、ただ冷蔵庫の中を映したシーンの中に、タンくんとメットさんが優しい思いやりの中で同居をしているのが感じられて、印象に残りました。8話という、決して長くはないドラマなのですが、色々な形の愛がつまっている物語だと思います。幽霊と人間の恋、親子愛、友情、異性愛。あとは、メットさんに出会ってタンくんが、「本当の自分」で生きる為に成長していく、一人の人間の物語のようにも思えました。

 タンくんには、いくつか秘密がありました。その一つが、異性を好きになれないという事。でも、タンくんはもてます。だからもし、メットさんと出会わなければそのまま、「本当の自分」を押し隠して、異性とお付合いする多数派の人間に属していたかもしれません。でもタンくんは、本当の自分で生きる事を選択しました。お母様にその事を伝えるシーンは、なんというか、本当に色々考えさせられましたね。お母様の言葉が、強くて優しくて。お母様の言葉は名言だらけなのですが、私が一番好きなのは、「どうして法学を学びたかったのか分からなかった。でも今は、あの子がやりたいことを全て受け入れる。あの子が自分を大切にしてくれさえすればいい(意訳)」。

 お母様ー!!大好きですーーーーーーーーーー!!

 そんなお母さまに、一つお伝えしたい事が。タンくんの秘密その2なのですけれどね、法学部を選んだのはメットさんの為なのですよ。

 タンくんは、最初からメットさんの死因が自分で思っている心臓麻痺ではない事を知っていました。だからもし、メットさんが何らかの悪意でこの世を去っていた場合、その悪意に対抗する為に法律を学んでいたのです。タンくーーーーーん、好き! 思えばこのドラマは、少年タンくんが幽霊メットさんと出会い、成長していくお話でもあるのかもしれません。その成長の中で、タンくんはいつもメットさんの事を気にかけていました。お参りにくる人がいない事、自分の本当の死因を知らずに成仏出来ていない事、自分の大切な進路をメットさんありきで決めた事、大切な自分の誕生日の願い事を、「奇跡が起きて、メットさんの真実が分かりますように」と願う事。あまりにそれが当然のように描かれていますが、それは本当に大きな愛で、人を愛するという事は何か特別な出来事がなくても、日々の生活の中で確実に育っていくものだという事を丁寧に、大切に表現していると思います。メットさんもメットさんで、物に触れるようになると(人には触れられません)、タンくんの好物の茶わん蒸しを作ったり、お誕生日プレゼントに小さなお星様を紙で折って作ったりと、「可愛すぎますよ、あなたたち!!」と地団太を踏みたくなる勢いです。

 メットさんの本当の死因は、何なのか?

 この謎が、一つの核となっています。でも、そこにあるのはタンくんとメットさんの日常で、ささいな事で顔を見合わせて笑い合ったり、互いの事を思いやったりという人生の優しい過程を見せてくれる作品だと思います。そして、真実が明らかになったその時はメットさんが成仏する時です。それは、二人のお別れを意味しています。だからこそ、二人で過ごす何気ない時間の尊さがひしひしと伝わってきて、見ているこちらが奇跡を祈らずにはいられません。街中を物珍しそうに笑顔で歩くメットさんを見る、タンくんの慈愛の表情に泣く。「愛おしい」という言葉を可視化したら、こうなるのだろうなあという感じ。

 無事にメットさんの真実も分かり、供養をしてもらう事になった前日の夜。この二人はよく質問ごっこをするのですが(それがまた可愛らしい)、それがこの夜に繋がるのか、という感じ。本当に作りが丁寧なドラマだなあ。タンくんとメットさんのやりとりは尊すぎるので、是非ドラマをご覧になって頂きたいのですが、なんか心から、大切な人に触れられる事って当たり前の事ではなくて、奇跡みたいに凄い事なんだなって。メットさんのお願い事が、「一度だけでも愛する人を抱きしめたい」。これは、幽霊と人間の恋物語だから成り立つ設定で、なんというか、本当に素晴らしい作品を有難うございますという気持ち。個人的につぼなのは、少年の頃から知っている人の成長を見守っていたはずなのに、いつの間にかその少年と恋愛をしているという状況にも、「この脚本、神だな…」と思いました。好き。メットさんがさらりと口にする、タンくんへの(結構)重い愛も好き。「君と出会えた事が、一番の奇跡だ」。うん、私もそう思います(立ち位置)。

 このドラマは本当に、大切な人が見えるとか、側にいるとか、触れられるとか、言葉を交わせるとか、普段「当たり前」だと思っている事がそうではなくて、とても大切で素敵な事で、メットさんが言うように「奇跡」なのだと改めて思わせてくれました。ドラマを見た後、自分の周囲にいる大切な人たちを、大切にしようと再確認させてくれる。そして、ラストも、「メットさんは成仏して、二人は離れ離れになってしまうんだ…。奇跡よ、起これ!!」と泣きながらみていたのですが、有難うございますおめでとうございますハッピーエンドです。奇跡が起こりました。メットさん、成仏する為の①と②はクリアーしましたが、③の天寿を全うしていなかったようです。良かった! 本当に良かった!!! この力づくでハッピーエンドに持って行くスタイル、本当に素晴らしいと思います。万歳、ハッピーエンド。これがいいよ。きっとタンくんとメットさんは、この先も一緒に色んな景色を見たり、音楽を聴いたり、ご飯を食べたりしながら穏やかに幸せに暮らしていくのだろうなあと思わせる安定感があります。弁護士になったタンくんのお仕事にメットさんがひょこひょこついていって、重要な解決の糸口を見つけたりしてね。だから絶対続編作った方が良いと思います。その時の為に、タイ語勉強してますよ←圧力。

 このドラマは、本当に私は大好きで、手元に残しておきたいのでブルーレイも買おうと思います。青空の中にとぶたんぽぽの綿毛みたいな優しいドラマです。機会があれば、是非一度ご覧になって頂きたいです。幸せな気持ちになれること、請け合いでございます。

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