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中小企業の金融機関との付き合い方

「借り入れは悪」「利息なんて●くらえ」「今すぐ必要ではないものを借りる必要はない」なんて思っていませんか?何を隠そう、私もそうでした。なので、「中小企業の金融機関との付き合い方」なんて決して大きな声では言えることではないんですが、今になって銀行をはじめとする金融機関との取引は非常に大事だなぁと痛感する次第ですし、あなたが仮に今後も企業を長期的に成長させていきたい、もしくは将来的に成長させたいと思う可能性が少しでもあるのであれば、金融機関との健全な付き合いは非常に重要です。

どのくらい重要かというと、優秀なイケてる人材、最高のプロダクト、流通チャネル、その次くらいに大事です。場合によってはそれらを吹き飛ばして最重要になることすらあります。キャッシュは会社のライフポイントなのですから。

スタートアップと中小企業の違いと2つのイノベーションについてでも書いたように、資金調達は必ずしも悪ではなく、場合によっては善になりえます。ビジネスの種類や目標・目的による、ということを大前提として考えたとしても、こと、中小企業においては金融機関との"健全"な協力体制を敷いているかどうかが非常に重要になるケースがあるはずです。困ったもので、会社の調子のいい時、今の状態で満たされている時はその重要性に気づくことすらできません。一年後のマインドを操作できる、予測できる経営者は稀です。

師匠の受け売りではありますが、経営とはなんぞや、と問われれば、僕は「継続性」だと答えます。時間軸で見た継続性、プロダクト毎でみた継続性、その他にも継続性にはさまざまなものがありますが、継続性を保つにはリスクの大小に限らず、確実に回避すべきリスクを見極めること。更にはチャンスにオールインすべき時にできる力は必要不可欠な要素です。直近でバイアウトを狙っているわけではない中小企業においては、継続性を保つために金融機関との協力体制は守りの保険であるだけではなく、時に攻めとしての役割を担います。いいですか?もう少し早く気づいておけば…ではすまないのが金融機関との付き合いです。

お前は前置きなげーなー、と思われても嫌なので、ではいきます。


起業初期

まずは近隣のメガバンクに法人口座を開設しましょう。メガバンクの定義は三大銀行、すなわち三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行・みずほ銀行のどれかです。正直どこでも大差ないと思いますのでお好きな色で決めて良いと思います。僕はクリアな緑が好きなので三井住友銀行です。体感的には三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行あたりが都心だと多い印象があり、この辺で口座開設しておくとよいかもしれません。

このメガバンクでの法人口座は法人の主要口座として利用します。主な振込先として、支払い、給与の振り込みなどとして利用します。取引先の大多数の振込先もメガバンクのいずれかであることがほとんどです。同じ銀行であれば振込手数料も割安なため、小規模な銀行や信用金庫をメインとして利用する理由はありません。

また、主要バンクでこの入金履歴を作るということが大事です。入金履歴は借り入れの際に威力を発揮するので、できるだけ主要バンクで継続的に作成することをおすすめします。(※1)

初期の段階から借り入れを希望する場合は日本政策金融公庫での借り入れがお勧めです。低金利、かつ、歴の浅い会社でも、他の金融機関と比較すると容易に借りれるケースが多く、高学歴者の人気職種でもあることからか担当者のITレベルが高いため、新しいビジネスへの理解が早いです。三大銀行の門を叩くより先に日本政策金融公庫へ向かうことを激しくお勧めします。

参考:日本政策金融公庫

尚、口座を開設したり、ある程度の企業と取引が行われるにつれて帝国データバンクや東京商工リサーチなどの第三の調査機関からの調査の依頼などが舞い込みますが、快く引き受けるべきです。なんでそんな第三機関に売上や懐状況を開示しなければいけないのか?とか思うでしょ?ある程度の大手になると、新たに取引先を追加する場合に行わなければならないのが帝国データバンクなどの第三の調査機関を通した調査です。これはいち担当者レベルで回避できるものではなく、ルールなのですよ。なので、自分から差し出すくらいが丁度いいのです。変えられないルールに歯向かっても仕方ない。あなたが今後会社を大きくするんだ!と少しでも思っていたり、多少なりその可能性があるのであれば考えるだけ時間の無駄です。

弱小中小企業が売上ばれてなにかあるんですか?ないですよね。なんとなく嫌なだけなんです。僕もすごーく嫌でした。でも、ルールなんだから仕方ない。割り切っちゃうのが吉です。

(※1)新設法人の場合、メガバンクでの口座開設が非常に難しいというケースもあります。取引実績見せろ、請求書発行したか、などなど。まだ動いてないこれからの会社だとなかなかすぐに出せない資料だったりするので、そこで弾かれてしまうこともしばしばあります。ここで心折れて楽天銀行や住信SBIネット銀行などのネットバンクや、すぐ口座開設出来る信用金庫に流れたりすることもあり、振込手数料の安さや使い勝手でネットバンク(主に楽天銀行)を使う人が非常に増えているのも最近の特徴ですかね。


起業中期

無事、日本政策金融公庫での借り入れが済み、事業が順調に軌道に乗り、次のフェーズに突入。そんなこんなで更なる借り入れが必要になれば、近隣の信用金庫をサブ口座として開設しましょう。勿論、初期に開設しておいてもOKです。社会保険などの引き落としで利用するくらいのレベルでも、街の信用金庫は大歓迎してくれます。場合によっては即日法人口座開設も可能です。メガバンクで冷たくあしらわれた起業当初では想像もつかないくらいあっさり開設できるはずです。(※2)

そしてこの信用金庫で借り入れの相談をしてみましょう。日本政策金融公庫との取引があれば、相談できるはずです。日本政策金融公庫はいわば国の機関がお墨付きを出した、ということですからある程度安心して付き合えるという証でもあるからです。この時点である程度の売上が立っているようであれば、保証協会付貸金なども利用することが可能です。保証協会付貸金は銀行などからのプロパー(銀行が独自の判断で貸出しする貸し金)よりも金利が安く、審査がそこまできついわけではありません。

なぜ、信用金庫なのかと問われれば、彼らはメガバンクなどよりもスピードが圧倒的に早いからです。今時信用金庫なんていかないじゃないですか?信用金庫のほとんどの取引先は地元の商店街の店舗だったり、昔からの馴染みの企業ばかりです。信用金庫は成長性のある企業に貸したくて貸したくて仕方がないといっても過言ではありません。本人たちが言っているのでおそらく間違いないです。(ただし、ITに対するリテラシーは恐ろしく低いです。)

参考:保証協会ウィキ

いずれの借り入れも腱鞘炎になるレベルで記載する資料が多いため、忍耐が必要ですが、そこはぐっと我慢です。

この後はどこの銀行や金融機関でも横並びです。起業して数年たち、それなりの売上も立っていればメインバンク(三大銀行)からのプロパー融資も可能になってきます。この頃は融資枠を最大限に引き出すだけ引き出しましょう。自身の会社がどれほどの信用力があるのかをみるのにも役立ちます。(※3)

尚、先にも言いましたけれども、この時点で金利をケチるのは愚の骨頂です。金利は信用に対する対価だと思って、快く交渉せずに支払うべきと筆者は考えます。銀行員もサラリーマンですし、ノルマがあります。そして、何よりも人間です。ベンチャーへの貸付の時点でリスクがあります。更に、その中でもある程度限られた枠の中で最大限の努力(銀行員の最大のハードルは上司の決済です。)をしてくれているはずなんですよね。そんな時に限度を超えた金利の交渉をして疲弊させ目先の利益を取るよりも、より良い関係性を持つことのほうが重要といえます。そんな担当者は必ず危機の時に駆けつけてくれます。

あとは借りたものを滞り無く返済し続けることに意味があります。返済を滞らないというのは当たり前に当たり前の約束を守れる企業であるという証です。これらの繰り返しが新たな融資、信頼を生み出し、更なる関係性を構築します。爆発的に伸びている企業であれば、半年周期で借り入れを見直し、再度提案してもらうことなども可能です。

(※2)私は東京都なので利用しませんが、地銀も信用金庫と似た構造を持っているため、おすすめです。彼らはITのような爆発的な売上や利益が伴う企業を常に探しています。特に地銀は地元でのビジネスマッチングなどにも積極的ですから、以外なところから良いクライアントを紹介されるなど、そういった話もよく聞きます。都内はほぼそういうことはないですが。

(※3)このタイミングであれば、りそな銀行の利用もありです。りそな銀行は2015年6月に公的資金を完済しましたが、メガバンクへの対抗意識かわかりませんが、未だにかなり攻める融資を行っている印象があり、ベンチャーへのアレルギーが少ない印象があります。若い担当者であれば尚更良いと思います。

(※注意点1)法律上はなくなったとはいえ、弱小中小企業ではいずれも代表者の個人保証は必須です。

(※注意点2)記載したのはあくまでうちがうまくいったケースと、金融機関の担当者にヒアリングしながら得た情報なので、地域によって、付き合う金融機関によって多少事なるケースがあると思いますので、あくまで参考の1つとして取り組んでください。


金融機関と付き合う上での心構え

経験上、明らかに役に立つな、と思ったことだけ列挙します。

・はじめのうちはジャケットくらいは羽織っておいたほうがいい。(人は見た目で判断します)

・アポイントは断らない。できるだけ積極的に会うようにする。(ほとんどの箇所で門前払いされてます)

・突然の飛び込み営業や電話営業でも積極的に会うようにする。(上に同じ)

・たいした負担にならないものは買ってあげる、参加する。(数万円で貸しを作れます)

・さまざまな情報交換が出来るようになるといい。いろんな相談してみる。(僕らの知らないことを知ってます)

場所柄、恵比寿・渋谷近辺の金融機関はアドテクやIT界隈に限らず、アパレル、飲食(恵比寿近辺の飲食店の難易度は日本で有数だそう)、今っぽい製造業などに物凄く精通している担当者が多く、さまざまな情報をもっています。ただの表面的な付き合いだけではなく、これからの展望や人事の相談などもしてみると、「この会社でこんな取り組みが…」とか、「あの会社はあんな媒体使ってうまくいった」とか、「非公開の居抜き物件が…」などなど、そのへんの経営者よりも多方面で詳しかったりしますので、是非積極的にコミュニケーションすることをお勧めします。


まとめ

時代錯誤だとか言われるかもしれませんが、金融機関との付き合いは一朝一夕ではできません。そのため、万が一の時に備えて金融機関との関係性を常に良好なものに仕立てあげるのも中小企業の経営者の仕事ではないでしょうか。

豊かさとは何か?と問われれば、僕は「選択肢の数」だと答えます。守りたい時に全力で守れる底力を、攻めたい時に攻めれる懐刀を持つことこそが、強い中小企業を生むのだと思います。そして中小企業にレバレッジをかけてくれるパートナーこそが金融機関なのです。

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