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座学から実践へ~orbitの軌跡と未来~

 『新潟に風を吹かせよう』この言葉を胸に、新潟の中小企業に新しいビジネスの軌道を提案したいと活動するorbit(オルビット)。今回はマーケティングチームorbitの代表である新潟大学経済科学部4年の芳賀裕太郎(はが ゆうたろう)さんにお話を聞いた。

「白山市場DE朝食を」に出店するorbitの4年生メンバー
芳賀裕太郎さん(向かって一番右):新潟大学経済科学部経営学プログラム4年(掲載時)
石塚ゼミ所属

1.orbitのスタート

――まずorbitの活動内容を教えてください。
芳賀さん:私たちorbitは新潟県内の中小企業さんの強みをもっと同年代、Z世代に伝えていける組織になりたいと思って活動しています。だから割とプロモーションとかになってしまうかもしれないけれど、企業が持っている既存商品を少し言い換える、捉えなおす。そしてそれをどう伝えるかまで考えるという感じです。0から商品企画というよりもその企業さんの今あるサービスを1から3に変えて、それをしっかり伝えていこうと活動しています。やはり0からだとどうしてもコストがかかってしまうけれど、今あるものを、少し言葉や内容を変えるだけでZ世代に刺さったり、さらに良いことができたりするのではないかという思いで、この活動をしています。

――orbit立ち上げの経緯を教えていただけますか?
芳賀さん:昨年のビジネスコンテストに、僕が所属する石塚ゼミのメンバーで参加させていただいたことがきっかけです。
その時に発表した内容が今のorbitの活動内容になります。ビジネスコンテストで良い結果を残せたかっていうとそうではなかったのですが、担当教員である石塚先生から、せっかくだからやってみないかというお言葉をいただいて自分1人でもやってみようかなって思って活動し始めたのがスタートになります。大学3年生の12月にビジネスコンテストがあり、翌月の1月から少しずつ準備を始めていきました。

――今はチーム(石塚ゼミの3年生6名と4年生4名)で活動していると思いますが最初は1人でやられていたのですね。
芳賀さん:みんな(共にビジネスコンテストに参加した現在4年生のゼミメンバー)就活中だったので最初は1人でやって、僕も就活していたんですけど。就活がひと段落したら同級生のゼミメンバーをもう一度誘おうと思いました。それまでの準備は1人でやろうと。

――忙しくありませんでしたか?
芳賀さん:その時期はおわってましたね。(笑)
公務員志望だったので公務員試験の勉強をしつつ、企業の方に活動内容を認知していただきたかったので、チラシを作って石塚先生に添削していただいて実際に企業の方に配ったりもしました。

orbitロゴマーク
『軌道』と『風』をイメージし、新潟県に新しい風を吹かせたいという想いが込められている

2.企業との初タッグ

orbitは現在、「株式会社鈴木コーヒー」にご協賛いただき活動している。「鈴木コーヒー」とは「コーヒーの力で人々の人生を感動で満たす」を理念とする新潟県の企業である。
 
――鈴木コーヒーさんからはどのようにご協賛いただけたのですか?
芳賀さん:ゼミメンバーのインターンシップ先の方がorbitの活動に興味を持ってくださって、チラシをお見せしたら鈴木コーヒーさんを紹介してくれました。大学4年の4月に鈴木コーヒーさんの社長と石塚先生と鈴木コーヒーさんを紹介してくださった方と4人でミーティングをして、こちらの思いを伝えたうえで「いいよ、やろう」と社長が言ってくださって実現にいたりました。

――なるほど、そのように始まったのですね。
それでは、鈴木コーヒーさん、そしてorbitの双方のめざすところを教えてください。
芳賀さん:鈴木コーヒーさんは、学生が学生のうちから挑戦するということ自体が大事だと思っていて、それをサポートすることや支援することに対して一切躊躇がなく、むしろ積極的に応援していきたいという思いを持ってくださっています。そのような思いがあってこその今の活動です。orbit側のめざす姿としては、どういうことができるかの実績がないと今後、他の中小企業さんに対してアピールができないので、その実績を鈴木コーヒーさんで積ませていただきたいという感じになります。具体的には、フィーをいただけるような、あちらにも利益がしっかり出るような提案をすることを今年の目標にしています。
 
10月の「白山市場DE朝食を」というイベントに、鈴木コーヒーさんのコーヒーを販売するという形で出店したorbit。その活動も踏まえ、12月に鈴木コーヒーさんへ新たなビジネスの提案を行った。
 
――鈴木コーヒーさんにはどのような提案をしましたか?
芳賀さん:まず1つ目は鈴木コーヒーさんがすでに行っている、「鈴木コーヒーアカデミー」というコーヒーを学ぶ機会をサービスにするというものを、もっとZ世代向けにかみ砕いて初心者向けにしたらどうかという提案をしました。
 
鈴木コーヒーアカデミーでは、個人・法人・プロ・焙煎体験のコースが展開され、コーヒーの飲み比べやラテアートセミナー、フードサービス業を始める方向けの講習など、様々なプログラムが行われている。
 
芳賀さん:2つ目は、ピア万代に鈴木コーヒーさんの「BAROQUE by SUZUKI COFFEE」というお店があるけれど、「バロック」という意味、そしてコンセプトがあまり伝わっていないから、そのコンセプトが伝わるようなイベントや伝え方を工夫すれば良いのではないかという提案をしました。

――「バロックコーヒー」に込められた思いはどのようなものなのですか?
芳賀さん:「バロック」はイタリアの文化という意味で使っています。鈴木コーヒーさんの社長がイタリアのカフェ文化をリスペクトしてイタリアの文化をコンセプトに行っているそうです。
 
社長はイタリアのモーニング文化も好きであるため、モーニング文化で新潟の活気を溢れさせたいという思いを聞き、orbitは10月の「白山市場DE朝食を」のイベントへの参加を決めたという。
1954年から続く白山市場で、2019年から始まり不定期で開催されている「白山市場DE朝食を」。イベント開催前の市場は売手の高齢化と客の減少の悩みを抱えていたが、今ではこのイベントに子どもから年配の方まで様々なお客さんが訪れ、飲食店や古着店を楽しんでいるそうだ。
 
芳賀さん:もう一つは、ピア万代にある鈴木コーヒーさんが経営しているバウムクーヘン屋さんについてです。このお店は朱鷺メッセとの動線がとても良いので推し活と関係させて、まずは多くの人に食べてもらう機会を作っていこうという案を出しました。

――どれもとても興味深いですね。鈴木コーヒーさんからはどのようなフィードバックがありましたか?
芳賀さん:ざっくり言うと、全部実行できそうだということでした。今度企画書を作ってと言われている段階です。誰が見ても腑に落ちる企画書を目指してと言われているので、これくらい効果があるのではないかというような、効果を具体的にしなければいけないということを今は難しく感じています。年明けにこの企画書を提出できるように頑張っています。

3.活動への想い

最後に、芳賀さんが考えるorbitの活動への様々な想いをお聞きした。
 
――忙しい中で新たなことに挑戦している芳賀さんの、活動のモチベーションをお聞きしたいです。
芳賀さん:活動のモチベーションは、やはり一緒に活動してくれる人がいるということが大きいと思います。リーダー目線になってしまうけれど、一人だけだったらできていなくて、もう疲れたからやめようかな、みたいになってしまうのが常日頃。でも手伝ってくれる人やアドバイスしてくれる人、そして鈴木コーヒーさんがいて、せっかく機会をいただいたのだから頑張ろうという気持ちしかモチベーションはないかもしれないですね。
9月にもイベントがあって、その時は大学院進学の勉強と重なって本当に大変で「なんでやっているんだろう」と自分に問いかけるときもあったけれど、手伝ってくれる人がいたから大学院進学の勉強をやりつつ、orbitの活動もできたと思います。

――やりがいはどのようなところに感じますか?
芳賀さん:社長から肯定的なフィードバックをいただけた時や、「白山市場DE朝食を」のような実際に行った活動に対して、良くも悪くも成果が出た時はやりがいを感じます。良い成果が出たらもちろんですけど、悪い成果が出た時でも「次はもっとこういう風に工夫すれば良いんだ」みたいに、次につながる経験だから失敗も前向きにとらえています。
もう一つのやりがいとしては、3年生のメンバーが成長してくれているのが嬉しいです。orbitのミーティングは3種類あって、4年生だけのミーティングと、3年生を含めた3年生にアドバイスをするミーティング、そして社長に対して発表するミーティングです。3年生とのミーティングは成長が見れてとても楽しいです。そして自分の成長も感じます。去年だったらアドバイスできていないけど、ビジネスコンテストとかマーケティングとか今まで頑張ってきたからアドバイスできてる感覚があるから、3年生と自分、両者の成長を感じることもやりがいだと感じます。

――ありがとうございます。これまでのお話から簡単ではない道のりだったと思いますが、改めて苦労したことを聞かせていただけますか?
芳賀さん:はい。0からのスタートなのでやっぱりビジョンを掲げなければいけないけれど、そのビジョンがなかなか掲げられないということが本当に難しかったです。3年後どうなっていればいいかって言われた時に、始めたころの6月では自分の将来も決まってないのに組織の将来なんてどうしようみたいな感じでした。
あとは、社長に対して「こういうことを発表したいので聞いてください」ということをこちらから設定したり、学生だけのミーティングでも毎回目的や意図を設定したりすることに本当に苦労しています。そこが定まっていないと3年生や4年生に迷惑をかけてしまうので。もちろん先生にも相談するけれど、僕が意思決定をしなければいけないのは大変です。

――じゃあ組織構造的には芳賀さんがトップ1人で3年生と4年生のメンバーがついていくという感じですか?
芳賀さん:今はそうですね。3年生はそれしかないだろうし、4年生はどちらかというと修正してくれる感じです。スケジュールを立てた時に「こういう風にやろうかなって思ってるんだけど、どう思う?」って僕が言ったら「それだとちょっと遅くない?」とか「もっと早くできるよ」とか背中を押してくれることがほとんどかなと思います。

先日、4年生だけのオンラインミーティングを見学させていただいた。そこでプロジェクトの進め方や議事録、会議の仕方などとても参考になった。この1年間でたくさん話し合い、改善してきたそうだ。

orbit4年生メンバーのオンラインミーティング 

――ミーティングで工夫している点を教えてください。
芳賀さん:ミーティングは、「1時間で終わらそう」ということを工夫しています。時間ももったいないので、なるべくだらだらしないようにしています。社会人になったときにその場で用意することは多分なくて、宿題みたいに各々が考えを持ってきて1回1回の会議が発表のようになると思います。そうでないといざ集まっても、「じゃあ、なに話す」になってしまうから準備していくことの大切さを改めて学びました。だから、1回1回ミーティングのゴールを決めて、メンバーにも準備させることは工夫した点です。

――次のミーティングまでに何をするか決めて共有するのは大事ですよね。ありがとうございます。それでは最後に、今後の展望を教えてください。
芳賀さん:今考えていることとしては、2年後僕がいなくても回るような組織にしたいなと思っています。今は自分一人で色々決定しているけれど、僕も大学院を卒業して就職するだろうから、そうなったときに今度は研究室の子たちが能動的に自分からできる組織になれたらいいなと思います。やる気のある子が多い組織になることが中小企業さんにとっても魅力的なのかなと思っています。ただ勉強しているだけではなくて、少しでも実践しようと思う学生が増えること、そんな学生の組織として継続することを今は目標に頑張ろうかなと思っています。
鈴木コーヒーさんとは、今企画書を作って上手くいったら実行しようという段階なので、来年1年間で実行させていただきたいと思っています。

――ありがとうございました。新潟県にもたくさん魅力ある中小企業さんがあるので、その魅力を若い世代に伝えていくのはとても大切なことですよね。とても素敵な活動だと感じました。本日はインタビューありがとうございました。今後の活動も応援しています。
 
 大学の授業で学んだことを座学で終わらせず、学生で自ら実践に移すという行動が素晴らしいと感じたと同時に、やはり実際に行動してみないと分からない苦労を聞くことができて自分自身の学びになった。地域の企業に学生が政策提言をすることで、学生も地域の活性化に貢献する機会を学生が自ら生み出すことはとても意味のあるものだと感じた。そして後輩にその環境を与え、成長を願う芳賀さんの想いに感銘を受けた。
 10月の「白山市場DE朝食を」での現場取材、オンラインミーティングの見学、そしてインタビューのすべてを快く引き受けてくださった芳賀さんとorbitの方々、本当にありがとうございました。

文:髙杉美香
新潟大学経済科学部地域リーダープログラム2年(掲載時)
作成日:2025年1月28日