LifeClips再録⑥
【ネタバレ忘備録~K.K.P.#8「うるう」③~】2020/02/29
「ひとりになりたがるくせに、寂しがるんだね」でしたっけ。
はっとする指摘ですよね、マジル8歳の視点というのは臆病なヨイチにとってまさしく目まぐるしく追いつかないものだったのでしょう。
だって、ただでさえ自分の1年は他人社会の4年なんです、追いつこうにも先へ先へどんどん進まれてしまって、どうやっても追いつかない。
ヨイチは「自分の他に余っている人間を探す為に数を数えていた」と言いました、それは正解のひとつでしょうが、けれどもやっぱり「人間を描くのが好きなんだ」と言った彼の言葉も満更嘘ではないと思うのです。
余りの1を自分以外に求めて、手を振りかざしたことがありました。
誰だ、どこだ、どこに自分の代わりに余りの1になる奴がいる。
血眼になって探したでしょう、けれど彼はすぐにその手を下ろします。誰だ、私か。自問自答は彼を森に追いやりました。
それらしい振舞いをして4度目の小学2年生に馴染もうとしたことがありました。
話が合わない、けれどもみんなと同じになろうとして、流行りのファッションを得ようとしたことがありました。
人間が集まる場所に行って、配られる餅を欲したことがありました。
父と呼ぶ2人と1本の大樹、それから1本の若い芽に、彼は心からの信頼を寄せていたように見えました。
恋を、しました、失恋の葛藤も経験しました。
ヨイチは「余らない自分」が欲しかった、人間社会で必要な存在だと、愛される存在だと認められたかった、それって「人間からの愛」と「人間への愛」を天秤にかけてぴったり釣り合いたかったんだろうなと思うのです。
そりゃあ「バケモノ」ですから、人間社会の常識から外れてしまってますから、どうしたって無理が生じます。
だからひとりになりたがって、それでいて寂しがるんです。
それを的確に指摘して見せたマジルには、その時点であの結末が約束されていたようにも思います。
再会の48歳、初演の時よりも演者の実年齢が近くなって、2人は何を思ったのでしょうね。