田中貴金属、ナノサイズ結晶粒を有する白金材料の製造技術を開発:注目ニュース✨
発表日:2024年10月30日
田中貴金属工業株式会社は、世界で初めて白金(プラチナ)材料において、結晶粒径をナノサイズに制御したバルク体の開発に成功したことを発表しました。
この技術を開発した田中貴金属グループは、1885年(明治18年)の創業以来、貴金属を中心とした産業用製品の製造・販売を手がけてきた企業です。2023年度の連結売上高は6,111億円、従業員数は5,355人を擁する業界のリーディングカンパニーです。
今回の技術開発により、純度99.9%以上の高純度白金材料として、世界最高のビッカース硬度500 HV以上と、従来の白金材料と比較して10倍の硬度と4倍の強度を実現しました。
技術開発の背景と成果
従来の金属材料では、平均粒径が最小でも約10μm程度とされていましたが、本技術では製造プロセスの最適化により、それを大幅に下回るナノサイズでの制御を可能にしました。これまで、一般的な金属材料では強加工により結晶粒を微細化することが可能でしたが、純度の高い貴金属材料では様々な課題がありました。
特に、数時間から数日で結晶を構成する原子再配列が発生することや、新たな結晶粒の核生成と成長による材料の軟化現象が起きることから、強加工による結晶粒の微細化が困難とされてきました。
新技術のメカニズムと特徴
本技術で製造された白金材料が高い硬度・強度を示す理由は、材料全体に高密度で小角粒界が存在し、大角粒界や転位をはじめとする格子欠陥が存在することにあります。この特殊な構造により、従来の白金材料では実現できなかった特性が達成されました。
新技術によって製造された白金材料は、エレクトロニクス産業や宇宙航空分野をはじめとする幅広い産業分野での応用が期待されています。特に、高純度を維持したまま優れた機械的特性を実現できる点は、産業用途において大きな優位性となります。
技術的な意義と将来展望
この技術開発の重要性は、結晶粒の微細化により様々な特性が向上する点にあります。特に、ナノ結晶粒材料は従来の金属材料とは異なる特異な物性を示し、結晶粒界の割合が著しく高く、格子欠陥が高密度で存在するという特徴を持ちます。
本技術は、新素材開発の可能性を大きく広げ、製品の高性能化・小型化に貢献することが期待されます。
まとめ
・世界初のナノサイズ結晶粒を持つ白金材料の製造技術開発
・従来の10倍の硬度と4倍の強度を実現
・高純度を維持しながら特異な物性を実現
・幅広い産業応用の可能性
・技術革新による新たな材料開発の方向性を提示#白金材料
専門用語解説
・結晶粒:金属材料における原子配列の向きが異なる個々の領域
・結晶粒径:結晶粒のサイズを示す指標
・バルク体:物質表面ではなく内部の3次元的な結合を持つ原子の塊による構造体
・塑性ひずみ:外力を加えて生じたひずみのうち、外力を除去しても元に戻らないもの
・加工硬化:金属に応力を加えることにより塑性ひずみが蓄積して硬くなる現象
・EBSD:電子線後方散乱回折法による結晶構造解析手法
・ビッカース硬度:材料の硬さを示す指標の一つ