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HAMRとMAMRとは?:HDDの高密度化技術について
はじめに
データストレージ技術は急速に進化しており、その中でもHeat-Assisted Magnetic Recording (HAMR)とMicrowave-Assisted Magnetic Recording (MAMR)は、次世代のハードディスクドライブ(HDD)技術として注目されています。
これらの技術は、データの記録密度を大幅に向上させることが期待されており、特にビッグデータやクラウドストレージの需要が高まる中で重要な役割を果たします。
本記事では、HAMRとMAMRの基本概念、技術的な詳細、そしてそれぞれの利点と課題について詳しく解説します。
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HDDの記録密度向上に関する技術的背景
HAMRおよびMAMRのいずれも、背景には磁気ディスクの面記録密度の向上があります。HAMRおよびMAMRを説明する上で、HDDの基本的な原理や構造について理解しておくことは重要です。
以下の記事にて、HDDの基本的な原理や構造について説明しているので、一読しておくとその後の理解がスムーズかと思います。
それでは、現在のHDDに至るまでにどのような技術的な進展があったのか、見ていきましょう。なおここでの説明は、TED-EdというTED Talkで有名なTEDが出している教育ビデオをベースに進めていきます。
英語がお得意な方は本編もぜひご覧ください。
最近のHDDの面記録密度は1平方インチ当たり約600Gビットと言われています。これは1957年にIBMが製造した初のHDDの約3億倍にもなります。
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このような驚異的な面記録密度の増加にはリソグラフィ法など様々な技術が貢献しています。
最近では、磁気粒子の微細化や集積化によって面記録密度は1平方インチ当たり100Gビットにまで増加したのですが、ここで超常磁性効果(Superparamagnetic Effect)という新しい問題が発生しました。
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本来、磁気ディスク上の金属粒子はS極、N極の2パターンに分かれていることによって、コンピュータが取り扱い可能な0と1の組み合わせを表現することができます。
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しかし、微細化が進行すると金属粒子の体積が小さくなり、熱エネルギーの影響で磁化の状態が容易に乱されてしまいます。これによって本来金属粒子が持っていた正しい状態が維持できなくなり、データの損失が起こってしまいます。これが超常磁性効果です。
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この解決のため、科学者たちはデータの記録方向をヘッドの移動方向(面内方向)から、垂直方向(面外方向)に変換しました。
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このシンプルな変更によって、面記録密度を1平方インチ当たり1Tビットに近づけることに成功しました。
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現在も、さらに面記録密度を高めるために様々な技術開発が行われており、その中でも有望なのが今日の記事で紹介するHAMRおよびMAMRです。
HAMRとMAMRの詳細
HDDの高密度化により記録ビットが微細になることで、熱安定性を維持するために記録ビットの保磁力を高くする必要があります。ここで保磁力とは、磁石の強さを表しており、この保磁力が十分でないとデータを保存しておくことができません。
しかし、保磁力を高めると、ヘッドからの磁界だけではデータを書き込むのに十分ではないため、外部からエネルギーを加えて書き込みをアシストする必要があります。
HAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording)は、データ記録の際にレーザー光線によって記録ディスクを瞬間的に加熱し、局所的に保磁力を弱めることで記録します。
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一方で、MAMR(Microwave-Assisted Magnetic Recording)は、マイクロ波を利用してデータ記録を行う技術です。磁気ヘッド先端のスピントルク発振器からマイクロ波を照射して、記録ビットの保磁力を一時的に弱めて記録します。
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HAMRとMAMRは、どちらも高密度記録を実現するために有用な技術ですが、それぞれに特徴と利点、課題があります。
記録密度: 両技術ともに高い記録密度を実現できますが、HAMRは特に高温での動作が必要なため、より高密度な記録が可能です。
エネルギー消費: HAMRはレーザー加熱を必要とするため、エネルギー消費が高くなります。一方、MAMRはマイクロ波を利用するため、エネルギー消費が少なくなります。
耐久性: HAMRは高温での動作が必要なため、媒体やヘッドの耐久性が課題となります。MAMRはレーザー加熱を必要としないため、耐久性が向上します。
コスト: HAMRはレーザー加熱装置が必要なため、コストが高くなります。一方、MAMRはマイクロ波発生装置が必要なため、コストが増加する可能性があります。
まとめ
HAMR: 高温での動作が必要なため、より高密度な記録が可能。エネルギー消費が高く、媒体やヘッドの耐久性が課題。
MAMR: マイクロ波を利用するため、エネルギー消費が少なく、耐久性が向上。マイクロ波の制御が難しく、コストが増加する可能性。
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参考文献
https://www.tdk.com/ja/featured_stories/entry_025.html
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