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中国政府の半導体ファンド「国家集成電路産業投資基金三期」の投資先とは?

発表日:2024年7月29日

概要

中国政府が7兆円規模の半導体ファンド「国家集成電路産業投資基金三期」を開始しました。このファンドは、特に半導体製造装置への投資が期待されています。これまでのファンドの傾向から、フォトレジスト塗布に使うコーター・デベロッパー露光装置に投資が集中する見込みです。

国家集成電路産業投資基金とは?

国家集成電路産業投資基金(大基金)は、中国の先端技術産業を支援するために2014年に設立されました。第1期(2014~2019年)では約1400億元(約3兆円)を投資し、半導体製造と設計関連企業が中心でした。第2期(2019~2024年)では約2000億元(約4.4兆円)を投資し、AI半導体スタートアップや先端フォトレジスト開発企業が注目されました。

これまでの中国における半導体投資。第1期は2兆円、第2期は最終的に4.4兆円、今回は7兆円規模とのこと(引用元

第3期の注目点

第3期は2024年5月に始動し、半導体製造装置への投資が予想されています。特に、フォトレジスト塗布に使うコーター・デベロッパー露光装置が注目されています。これまで手薄だった工程に注力することで、中国の半導体自給率を高める狙いがあります。

これまでの半導体製造装置への投資はいくつかの工程への集中が見られる一方、フォトレジスト塗布や露光の工程には投資が薄い(出所:日経クロステック

フォトレジスト塗布

  • コーター・デベロッパー:フォトレジストを均一に塗布し、現像する装置。中国では国産化率が低く、主要メーカーは東京エレクトロンです。

露光装置

  • 露光装置:半導体の回路パターンをシリコンウェハーに転写する装置。中国では国産化率が1%以下で、主要メーカーはオランダのASMLです。

露光およびそれを含むリソグラフィー工程についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、良ければ読んでみて下さい👇

アメリカの規制と中国の対応

米国政府は、ASMLが中国企業に対して先端品向け製造装置を輸出しないよう圧力をかけています。これに対して中国は、露光装置の自給自足を目指し、上海微電子装備集団(SMEE)や華為技術(ファーウェイ)が開発を進めています。

詳細な背景情報

中国は世界最大の半導体消費国でありながら、自国内での生産能力は低いです。これにより、アメリカや他の国々からの輸入に依存しています。しかし、米中間の貿易摩擦や技術戦争により、アメリカからの先端技術や製品の供給が制限されています。これが中国の半導体産業の自立を促進する大きな要因となっています。

具体例

長江存儲科技(YMTC)は、中国政府の支援を受けて設立されたメモリーチップメーカーです。第1期と第2期のファンドからの投資を受けており、NAND型フラッシュメモリの開発と製造において大きな進展を遂げました。

まとめ

  • 国家集成電路産業投資基金三期が始動し、半導体製造装置への投資が期待される。

  • 特にフォトレジスト塗布露光装置への注力が予測される。

  • 米国の対中規制に対抗し、中国は自給率を高める戦略を強化。

  • 長江存儲科技(YMTC)など、過去の投資先企業が成功している。

  • 今後の投資先の発表に注目。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


専門用語解説

  • フォトレジスト:半導体製造における感光性の材料。回路パターンをシリコンウェハーに転写する際に使用される。

  • コーター・デベロッパー:フォトレジストを均一に塗布し、現像する装置。

  • 露光装置:半導体の回路パターンをシリコンウェハーに転写する装置。

  • EUV(極端紫外線)露光装置:先端半導体の製造に使用される露光装置。

  • DUV(深紫外線)露光装置:比較的成熟した技術で、半導体の製造に使用される露光装置。

ハッシュタグ

#半導体 #フォトレジスト #露光装置 #国家集成電路産業投資基金 #中国

参考文献


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