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名城大、世界初の液相法での単層カーボンナノチューブの合成成功
発表日:2024年8月1日
名城大学理工学部応用化学科の丸山隆浩教授らのグループが、液体のエタノール中で単層カーボンナノチューブを作り出す方法を開発しました。この画期的な成果により、高額な装置を使わずに単層カーボンナノチューブを大量合成できる可能性が高まり、様々な応用展開の加速が期待されます❗️
この研究成果は、2024年6月19日にドイツ化学会の国際誌「Journal of Nanoparticle Research」に掲載されました。
研究のポイント
世界初の液体エタノール中での単層カーボンナノチューブ合成
気相成長に匹敵する結晶性を持つ単層カーボンナノチューブを確認
Ir(イリジウム)触媒を用いて、直径1 nm以下の細径の単層カーボンナノチューブを生成
カーボンナノチューブ(CNT)についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、ご存じない方はこちらから読んでみて下さい👇
研究の背景
現在、カーボンナノチューブの作製には、化学気相成長法(CVD法)が主流となっています。この方法は大量生産に適していますが、高額な装置が必要です。
一方、液相合成法は安価な装置でカーボンナノチューブを合成できますが、これまでは主に多層カーボンナノチューブが生成され、単層カーボンナノチューブの作製は困難でした。今回の研究では、ナノサイズの触媒金属粒子を用いて、液相合成法による単層カーボンナノチューブの作製に挑戦しました。
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研究内容
研究グループは、気相合成に用いられるものと同等の粒径数ナノメートルのCo(コバルト)およびIr(イリジウム)ナノ粒子を触媒として使用しました。
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これらの触媒粒子をSiO2/Si基板に堆積させ、基板を通電加熱することで、常温の液体エタノール中(C2H6O)で触媒周辺のみを高温に保ちました。実験中はエタノールの蒸発を抑えるため、還流冷却器を取り付け、容器全体を氷水で冷やしながら行いました。
その結果、Co触媒を用いて加熱温度700℃で、繊維状の単層カーボンナノチューブが絡まり合った状態で基板上に生成されました。生成された単層カーボンナノチューブの結晶性は良好で、気相合成に匹敵するものもありました。
さらに、Ir触媒を用いた場合、Co触媒に比べて生成量は少ないものの、直径1ナノメートル以下の細径の単層カーボンナノチューブを得ることができました。
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今後の展開
この研究により、簡便な装置のみを用いた液相合成法で、結晶性の良好な単層カーボンナノチューブを生成できることが明らかになりました。
今後、触媒金属種や合成に用いる炭素原料液体の種類を工夫することで、液相合成法による単層カーボンナノチューブの大量合成を安価に実現できる可能性が高まります。
これにより、単層カーボンナノチューブの応用研究や産業利用が加速することが期待されます🚀
まとめ
名城大学の研究グループが、液体エタノール中での単層カーボンナノチューブ合成に世界で初めて成功
CoとIr触媒を用いて、高品質な単層カーボンナノチューブを生成
安価な装置での大量合成の可能性が開かれ、応用研究の加速が期待される
今後、触媒や原料液体の最適化により、さらなる発展が見込まれるこの画期的な研究成果により、単層カーボンナノチューブの製造コストが大幅に削減され、様々な分野での応用が加速することが期待されます。
エレクトロニクス、エネルギー、医療など、幅広い産業分野に革新をもたらす可能性を秘めた、非常に興味深い研究結果と言えるでしょう。
#カーボンナノチューブ #ナノテクノロジー #材料科学 #液相合成 #名城大学
専門用語の説明
単層カーボンナノチューブ(SWCNT):炭素原子のみから成る円筒状の物質で、1層から成るもの。直径は1~数ナノメートル程度。高い導電性・熱伝導性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として期待されている。
化学気相成長(CVD)法:粒径数ナノメートルの金属触媒粒子を炭素原料ガスと高温で反応させ、カーボンナノチューブを合成する手法。
液相合成法:エタノールなどの有機溶媒中で触媒を加熱することによりカーボンナノチューブを得る手法。
参考文献
https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/f4de562b3a54774784f1da346d2fc943.pdf
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