富士通、超伝導量子コンピュータシステムを産総研に導入決定
発表日:2024年6月18日
2024年6月18日、富士通株式会社は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)に超伝導量子コンピュータシステムを導入することを発表しました。これは日本国内のベンダーとしては初の商用量子コンピュータシステムの受注となります。この画期的な取り組みは、日本の量子技術分野における新たな一歩を象徴しています。
背景と概要
富士通は、2021年4月に国立研究開発法人理化学研究所(理研)と共同で設立した「理研RQC-富士通連携センター」において、超伝導量子コンピュータの大規模化を目指した研究開発を進めてきました。
今回受注した超伝導量子コンピュータシステムは、この連携センターで培った技術を基に実用化されたもので、2025年初旬に産総研の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)にて稼働する予定です 。
技術の特徴
この超伝導量子コンピュータシステムは、富士通が新たに開発した冷凍機内部の高密度配線実装技術や大型量子ビットチップ実装技術を用いて構築されています。この技術により、希釈冷凍機をアップグレードすることなく、数百量子ビットまで拡張可能な設計が実現されました。
さらに、このシステムはクラウドを通じて利用可能で、材料、金融、創薬などの分野で実用的な量子アプリケーションの開拓が期待されています。
ちなみに、量子コンピュータが極低温環境を必要とする理由は、量子ビット(量子ゲート)の粒子同士が分離された「重ね合わせの状態」を維持するためです。
この状態を保持するには、外部環境からのノイズを徹底的に除去する必要があり、これを実現するために1K(-272.15℃)の極低温環境が必要です。希釈冷凍機と呼ばれる特別な冷凍機がこの極低温を提供し、量子コンピュータの超高速計算を可能にします。
産総研の役割と期待
産総研の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターの副センター長、堀部雅弘氏は、「量子技術は、世の中に大きな変革をもたらす中核技術として、近年、急速に期待と注目が高まり、国際競争も激化しています。このたびの量子コンピュータシステムの導入は、当センターが企業や研究機関における研究開発向けに運用する計算基盤をより強固なものとし、日本の産業促進や新市場創出に大きく貢献できることを目指しています。」と述べています。
富士通の展望
富士通の執行役員副社長CTO、CPOであるヴィヴェック・マハジャン氏は、「産総研様に当社の超伝導量子コンピュータを選択いただいたことを非常に嬉しく思います。本量子コンピュータを活用し、先端量子技術の研究開発基盤の強化や、実用的な量子アプリケーションの開拓が進むことを期待しております。引き続き当社は、ハードウェアだけでなくミドルウェア、アーキテクチャ、アプリケーション開発を含むあらゆるレイヤーで、量子関連技術研究の発展と産業適用を推進し、日本の国産技術の強靭化に貢献していきます。また、培われた国産技術をグローバルで戦える競争力のある技術として融合し商品化することで、今後の量子関連技術をリードしていきます。」と述べています。
まとめ
富士通が産総研に超伝導量子コンピュータシステムを導入することを発表。
国内ベンダーによる初の商用量子コンピュータシステムの受注。
システムは数百量子ビットまで拡張可能で、2025年初旬に稼働予定。
量子技術とAI技術の融合を目指す研究に活用。
富士通は今後も量子技術の研究開発を推進し、日本の国産技術の強化に貢献。
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