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裏面電源供給とは?電力線と信号線を分離する革新アプローチ✨

はじめに

半導体技術の進歩は、私たちの日常生活に欠かせないデバイスの性能向上を支えています。その中でも、裏面電源供給は、半導体チップの性能と効率を大幅に向上させる革新的な技術として注目を集めています💡

本記事では、裏面電源供給の基本概念、その利点、課題、そして将来の展望について詳しく解説します✨


裏面電源供給とは🔍

裏面電源供給は、半導体チップの裏面から電力を供給する技術です。従来の半導体チップでは、電源や信号の配線は主にチップの表面に配置されていました⚡

しかし、裏面電源供給技術では、これらの配線の一部または全部をチップの裏面に移動させます💡

左が従来の表面からの電源供給(一番上の金色の部分から下に伸びている金色の線が電力線)、右がIntel PowerViaによる電源供給(下から上に電力線が伸びている)(引用元)

Intelが開発している裏面電源供給のシステムがPowerViaです。2024年頃に、20A(オングストローム)ノードにおいて、RibbonFET(GAA FET)と共に導入する予定です📱💻

では、なぜこのような技術が生まれたのでしょうか?

半導体の微細化が進むにつれ、従来の表面配線では電力線と信号線が干渉し合う問題が生じてきました。CPUの性能向上に伴い必要な電力も増加しましたが、細い電力線では抵抗が大きくなり、発熱や電圧降下の原因となります📉

また、信号線も電力線を避けて配線するため、信号遅延が起こります😖

微細化による抵抗の上昇 (引用元:Applied Materials)

これらの課題に対し、業界はまずコバルトなどの新しい金属層の導入という中間的な解決策を試みました。この方法により、一時的に問題を緩和することはできましたが、さらなる微細化には限界があることが明らかになりました。

従来の前面からの電源および信号供給の模式図(引用元

そこで登場したのが、チップ裏面での電力供給という革新的なアプローチ、すなわち裏面電源供給という概念です。バックサイド・パワーデリバリー・ネットワークから略されてBSPDNとも呼ばれます。

この新技術により、信号と電力のやりとりを分離し、微細化をさらに進めることが可能になりました🔬⚡

裏面電極供給の利点💡

裏面電極供給技術には、様々な利点がありますが、ここでは代表的な5つについて説明します🌱

  1. チップ面積の有効活用: 表面の配線スペースが減少することで、より多くのトランジスタや機能回路を配置できます。これにより、チップの集積度と性能が向上します。

  2. 電力効率の改善: 電源供給経路が短くなることで、電圧降下や電力損失が減少し、全体的な電力効率が向上します。具体的には、従来技術と比較して15-20%の電力効率改善が報告されています。

  3. 信号品質の向上: 信号線と電源線を分離することで、ノイズの影響を低減し、信号の品質を向上させることができます。これにより、高速データ転送や高精度な信号処理が可能になります。

  4. 熱管理の改善: 裏面からの電力供給により、チップ全体の熱分布が均一化され、熱管理が容易になります。これは特に高性能コンピューティングやAI処理に重要です。

  5. 3D集積の実現: 複数のチップを積層する3D集積技術との相性が良く、高度な3次元集積回路の実現に貢献します。

前面から電源配線を取り除くことで、標準的なセルの面積を20%から30%拡大可能(引用元)

裏面電極供給の課題🔧

BSPDNの実現に向けては、いくつかの重要な技術的課題があります。これらの課題を克服することが、この革新的な技術の実用化への鍵となります。

1.ウェハーの薄化と接合技術 🔪

BSPDNを実現するためには、シリコンウェハーを極限まで薄くする必要があります。これは非常にデリケートなプロセスで、ウェハーの破損や歪みのリスクが高まります。また、薄化したウェハーを正確に接合する技術も必要です。

  • 課題:ウェハーの均一な薄化と、薄いウェハーの安定した取り扱い

  • 目標:数ミクロン単位の薄さでの安定した製造プロセスの確立

この歪みのリスクについては、製造装置大手である東京エレクトロンの佐藤氏も言及しており、現在は裏面電源供給を含めた後工程向け装置の開発に取り組んでいる模様です。

裏面電源供給を使った半導体製造方法(引用元


2.高温プロセスの制約 🔥🚫

裏面のコンタクト形成には高温のプロセスが必要ですが、これは既に形成された表側の回路に悪影響を与える可能性があります。

  • 課題:高温プロセスによる表側回路へのダメージ防止

  • 目標:低温で高品質なコンタクトを形成する新技術の開発

実際にApplied Materialsは、この熱的な制約について強調しており、その解決のために低温ソリューションを開発中の模様です。


3.製造コストの増大💰

BPSDNは一個のロジックチップを作成するために、トランジスタと信号配線が形成されたウェーハと、電源配線が形成されたウェーハの2枚のウェーハを使用する必要があります。

半導体製造材料コストの大部分を占有するのがシリコンウェーハであり、この2枚のウェーハと、付随する製造材料の増加により、BSPDN製造コストは約二倍に増加すると考えられています。

  • 課題:シリコンウェハーなどの材料コスト増大

  • 目標:低コスト材料への転換あるいは、材料使用量低減


これらの技術的課題を克服することで、BSPDNの実用化が可能になり、半導体産業に革新をもたらすことが期待されています🌟💻


BSPDNの3種類のアーキテクチャ

BSPDN(裏面電源供給網)技術の主要なアーキテクチャには、Buried Power Rails(BPR)、PowerVia、Backside Contact to Source/Drainの3つがあります。それぞれのアーキテクチャは、半導体の性能向上と微細化を支えるために独自のアプローチを採用しており、特徴や利点、課題が異なります。

以下に、これらのアーキテクチャが、Area scalingおよびプロセス複雑性の観点から比較されています🔍💡

裏面電源供給の主要なアーキテクチャ3種類(引用元

Applied MaterialsのマネージングディレクターであるMehul Naik氏は、それぞれの実装について以下のように説明しています。

「最初のアプローチ(Buried Power Rail)では、ロジックセルがパワーレールを保持し、裏面電力供給ネットワークはNano TSV(Through Silicon Via)でパワーレールに接続されています。

2つ目のアプローチ(PowerVia)では、ロジックセルにパワーレールが存在しません。代わりにPowerViaでは裏面ネットワークからセルまたはトランジスタの接点に直接電力を転送します。この方法はより複雑ですが、電力効率が向上し、セル面積のスケーリングが可能になります。

3番目のアプローチ(Backside Contact to S/D)では、バックサイド・ネットワークからの電力が各トランジスタのソースとドレインに直接接続されます」。

Buried Power Railsは、比較的実装が容易であり、既に一部の企業で採用が始まっています。最初にImecが中心となって開発しました。

PowerViaは、電源供給の効率を大幅に向上させる可能性があり、Intelが2024年に20Aノードにおいて、GAA FETとともに導入予定の技術です。紹介動画がYoutubeにアップロードされているので、良ければ、見てみて下さい✨

Backside Contact to Source/Drainは、最も革新的なアプローチですが、技術的な課題が多く、実用化にはまだ時間がかかりそうです。

これらの技術は、半導体の性能向上と微細化の限界を打破するための重要な役割を果たすと期待されています。各企業や研究機関は、それぞれの戦略に基づいてこれらの技術の開発と採用を進めています。🚀💻

まとめ🌟

裏面電極供給技術は、半導体チップの性能向上に大きく貢献する革新的なアプローチです。主なポイントは以下の通りです:

  • 従来の表面配線では電力線と信号線が干渉し合う問題が発生。

  • またCPUの性能向上に伴い必要な電力も増加しましたが、細い電力線では抵抗が大きくなり、発熱や電圧降下の原因

  • 裏面電源供給は、半導体チップの裏面から電力を供給することで上記課題を解決することを目指した技術

  • 製造プロセスの複雑化やコスト増加などの課題も存在

  • Buried Power Rails(BPR)、PowerVia、Backside Contact to Source/Drainという3種類のアーキテクチャが主流

裏面電極供給技術は、半導体産業の次なる革新をもたらす可能性を秘めています。この技術の進化と普及により、より高性能で省電力なデバイスが実現し、私たちの生活や産業に大きな変革をもたらすことが期待されます。

この記事が勉強になったよという方は、スキお待ちしています🥰

今後も、半導体やテクノロジーに関する分かりやすい記事をお届けしますので、見逃したくない方はフォローも忘れないでくださいね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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参考文献


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