バイデン政権、テキサス・インスツルメンツと半導体生産拡大で大規模合意 - 日本への影響は?
発表日:2024年8月16日
バイデン・ハリス政権は、米国商務省とテキサス・インスツルメンツ(TI)が、CHIPS and Science Act(チップス・アンド・サイエンス法)に基づく資金提供に関する予備的な覚書に署名したと発表しました。この画期的な合意は、米国の経済安全保障と国家安全保障を強化するため、現世代および成熟ノードの半導体生産能力を大幅に拡大することを目的としています。
提案された資金提供額は最大16億ドルに上り、TIの180億ドル以上の投資を支援するものです。この大規模な投資により、テキサス州に2つ、ユタ州に1つの最先端製造施設が建設される予定です。
これらのプロジェクトは、米国の半導体産業に大きな影響を与えると同時に、2,000人以上の製造業の雇用と数千人の建設業の雇用を創出すると見込まれています。さらに、半導体産業の人材育成のため、1,000万ドルの専用資金も提案されており、将来の技術革新を支える人材の確保にも力を入れています。
テキサス・インスツルメンツは、アナログおよび組み込みプロセッシング半導体の世界的な主要メーカーです。同社は、集積回路の発明など、米国経済に約1世紀にわたって重要な役割を果たしてきました。今回の投資により、TIは米国内での生産能力を大幅に増強し、グローバルな競争力をさらに高めることが期待されています。
ジーナ・レイモンド商務長官は、この合意の重要性について次のように述べています。「パンデミック時の現世代および成熟ノードチップの不足がインフレを引き起こし、国の安全性を低下させました。この投資により、米国経済のあらゆるセクターで使用される基盤的な半導体の供給チェーンを確保し、テキサス州とユタ州に数千の雇用を創出することができます。CHIPS for Americaプログラムは、米国の技術革新を加速し、より安全な国づくりに貢献するでしょう。」
プロジェクトの詳細
テキサス州シャーマン:65nm〜130nmの重要なチップを生産する2つの大規模300mm製造施設を建設。毎日1億個以上のチップ生産能力を予定しています。このサイトは、米国内で300mmウェーハ上にチップを生産する数少ないグリーンフィールド生産サイトの一つとなります。
ユタ州リーハイ:28nm〜65nmのアナログおよび組み込みプロセッシングチップを生産する大規模300mm製造施設を建設。毎日数千万個のチップ生産を予定しています。このプロジェクトは、ユタ州史上最大の経済投資となります。
これらの施設は、自動車産業、産業機器、防衛システムなど、幅広い分野で使用される重要な半導体の生産を担うことになります。特に、パンデミック時に深刻な供給不足に見舞われた現世代および成熟ノードチップの生産能力を大幅に増強することで、将来的な供給chain脆弱性のリスクを軽減することが期待されています。
この投資は、CHIPS for Americaプログラムの一環であり、バイデン政権の経済計画の重要な部分を構成しています。このプログラムは、米国内での製造を促進し、良質な雇用を創出し、技術革新を推進することを目的としています。
ちなみに、CHIPS法は欧州版もあります。各国が独自の半導体エコシステムの維持に向けて動いています。詳細については、こちらの記事で詳しく説明しているので、良ければ読んでみて下さい👇
日本への影響
この大規模な半導体投資は、日本の半導体産業と経済にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
競争の激化: 米国の半導体生産能力の増強は、日本の半導体メーカーにとって競争環境の変化を意味します。特に、現世代および成熟ノードチップの分野で、日本企業は新たな競争圧力に直面する可能性があります。
協力の機会: 一方で、日米間の半導体分野での協力が深まる可能性もあります。日本の高度な技術と米国の生産能力を組み合わせることで、新たなイノベーションが生まれる可能性があります。
サプライチェーンの再編: グローバルな半導体サプライチェーンの再編が進む中、日本企業も自社の戦略を見直す必要が出てくるかもしれません。特に、重要な部材や製造装置を提供する日本企業にとっては、新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。
技術開発競争: 米国の大規模投資は、半導体技術の開発競争を加速させる可能性があります。日本企業も研究開発投資を増やし、技術的優位性を維持する必要性が高まるでしょう。
経済安全保障への影響: 半導体は経済安全保障の観点からも重要です。日本政府も半導体産業強化策を進めていますが、米国の動きを踏まえて、さらなる支援策を検討する可能性があります。
まとめ:
バイデン政権とTIが半導体生産拡大で最大16億ドルの資金提供を含む大規模合意
テキサス州とユタ州に新施設を建設し、2,000人以上の製造業雇用を創出
現世代および成熟ノードチップの生産能力を大幅に増強
米国の経済安全保障と国家安全保障の強化が主な目的
日本の半導体産業にも競争激化や協力機会の拡大など大きな影響
グローバルな半導体サプライチェーンの再編が加速する可能性
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参考文献
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