
WDが半導体メモリー事業を分離・独立 キオクシアとの関係は?
米ウエスタンデジタル(WD)は24日、半導体メモリー事業を分離・独立させた。今後、NAND型フラッシュメモリー事業は、サンディスクコーポレーションとして運営。同日に米ナスダック市場で上場され、取引を開始している。WDは、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)事業に集中することで、AI(人工知能)時代のデータストレージを支えていく。
日本のキオクシアとは提携関係
WDはもともとHDDメーカーだったが、2016年にNAND型フラッシュメモリー企業であった旧サンディスクを買収。以来、NAND型フラッシュメモリー市場に参入し、主要企業の一角を占めている。同社と日本のNANDフラッシュメーカーであるキオクシアは、以前から提携関係にある。四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)で共同出資を行い、開発・製造で協業している。22年10月には四日市工場に総投資額1兆円の最先端工場「Fab7」を開設した。

WDとキオクシアは21年から統合交渉を進めてきたが、交渉は停滞。WDがHDD事業とメモリー事業を分離し、両社のメモリー事業を統合する案で再び交渉が進められたが、最終的には23年に破談となった。その後、キオクシアは24年12月に東証プライム市場で単独上場した。開発・製造における協業関係は現在も継続中。両社は今月初め、最先端3Dフラッシュメモリー技術を発表し、4.8Gb/秒のNANDインターフェイス速度で業界基準を打ち立てた。
サンディスクのデービッド・ゲックラー最高経営責任者(CEO)は、「すべてはイノベーションから始まり、NANDはそれを可能にする。当社は力強く成長する市場で事業を展開し、フラッシュメモリーのイノベーターとして世界をリードする。今回の分離・独立は当社の役割を拡大する絶好の機会だ」と話した。
WDはHDDに集中
WDは長年にわたりHDD市場で確固たる地位を築いてきた。半導体メモリー事業の分離は、同社がHDD事業でさらに力を発揮できることを意味する。WDのアーヴィン・タン最高経営責任者(CEO)は「今回の半導体メモリー事業の分離・独立はウエスタンデジタルにとって新たな節目となる。長年HDD技術でイノベーションを提供してきた当社は、今後も顧客に最高のストレージ機能を提供していくというコミットメントをさらに推し進めていく」と話した。

成長を促進するAI
タン社長は声明の中で、AIがいかに加速し、世界中の産業に影響を与えるかを強調した。生成AIの普及拡大とともに膨大なデータが生成され、データを保存するストレージの需要は増加すると見込まれる。「今後、HDD事業に集中することで、ハイパースケーラーやクラウドサービスプロバイダーとのパートナーシップもさらに強固なものにすることができる」(タンCEO)とし、最先端のソリューションの提供に取り組んでいく。
WDでは、さらなるデータ容量の拡大に向けてポートフォリオの強化を進めていく。特に注視しているのが、業界全体のHAMR技術への移行だ。HAMR技術とは、熱アシスト磁気記録(HAMR)技術のこと。業界の試算によると、2030年頃には、同技術によって80TBから100TBのHDDを製造できるようになるという。HAMRは、レーザーを使ってディスクの小領域を加熱し、小領域へのデータ書き込みを容易にするため、HDDの記憶容量を増やす技術である。
同社はすでに、2社の主要ハイパースケーラーと、同社のHAMR開発を本格的に開始したと表明している。ポートフォリオの拡充により、顧客が利用可能なHDD容量を幅広く提供することができる。
キオクシアとの統合案が再び浮上?
今回の半導体メモリー事業の分離・独立を契機に、サンディスクとキオクシアの統合案が再度浮上する可能性もある。今後のメモリー市場にどのような影響を与えるか、今後の市場動向を注視する必要がある。