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【注目トピックス】 米中貿易摩擦の中で成長する中国半導体メーカー

 中国政府が推進する半導体国内自給政策を背景に、半導体産業の技術振興が高まる中国。米トランプ新政権の発足により、今後の米中間での貿易への影響が懸念される一方、中国の半導体企業は着実に市場での存在感を増している。
 
 1月末に東京ビッグサイトで開催されたカーエレクトロニクス関連の展示会。日欧米の半導体メーカーが出展し、電動化や自動運転、ADASなどを支える多種多様な技術を訴求した。中国のアナログ半導体メーカー3PEAK(スリーピーク)は、日本での認知度向上を目的に初出展し、車載向けの製品を展示した。

3PEAKの出展ブース

 
売上の51%をR&Dに投資
 
 同社は2012年に中国・蘇州で創業した。本社機能は上海と米国・テキサス州に置く2本社制とし、中国国内のみならず世界中に23のオフィスを持ち、800人以上の従業員を抱えている。そのうちの半数以上が技術系のエンジニア。米国半導体メーカーで勤務経験のあるエンジニアも多く、欧米アジアの文化を取り入れた社風だという。ファブレス企業として成長し、23年度(23年12月期)の売上高は1億5400万ドル。売上の51%をR&D投資に充てるなどし、技術力の向上に力を入れている。
 
 同社が扱うのは、ミックスド・シグナルICという1つのチップにアナログとデジタルの回路を持つ集積回路や電源管理用IC。主力はミックスド・シグナルICで売上の80%を占める。アプリケーション別の売上は産業機器向けが60%、基地局向けが20%、自動車向け10%、民生向け10%という内訳。今後は自動車向けに注力し、事業拡大を目指す。現在、自動車向けでは欧米系のアナログ半導体メーカーが取り扱う製品のセカンドソース(二次調達先)として実績を伸ばしており、中国国内のみならず海外での拡販にも取り組んでいく。
 
 日本法人の谷口道明リージョナルセールスマネージャーは「中国製品というとコストメリットだけを求められることが多いが、当社製品は品質や短納期対応なども強み。ファブレス企業ながら、蘇州に車載グレードのテストプラントを持ち、設計後に徹底したテストを行いファウンドリで量産を行う。当初は中国国内向け自動車をターゲットに製品供給を開始したが、最近では海外向けでも引き合いが出始めている」と話す。

谷口リージョナルセールスマネージャー


現地調達比率を高めるため、中国半導体に関心  

 今回の展示会でも同社のことを知る来場者も多く、同社ブースを目的に展示会に来訪した自動車メーカーのエンジニアもいたという。近年、米中貿易摩擦の影響もあり、中国政府が中国国内で流通する製品に対し、搭載部品の現地調達率を高める動きがあるという。そうした中国政府の動きを背景に、日系自動車メーカーも新たなサプライチェーン候補として中国の半導体企業に関心を持ち始めている。「政治的な動きに左右されないセーフティネットになれれば良い」(谷口リージョナルセールスマネージャー)とし、ティアワンならびに自動車メーカーへの提案に力を入れる。 

日本での認知度向上目指す  

 今回の展示会では電力変換を行うDC-DCコンバータと車内ネットワーク通信用途で使用するCANトランシーバを出品。製品を絞り込み、高い品質やコストメリットを提案した。谷口リージョナルセールスマネージャーは「まずは日本市場での認知度向上に取り組む。展示会出展やブランディングを通じて当社のことを知ってもらい、各分野のキーカンパニーへの提案を行っていく」と話す。日本法人は2022年に開設。販売はRYODEN、ネクスティエレクトロニクス、テスコム、リバウンドエレクトロニクスなどの商社を通じて行っている。日本市場では自動車向けとともに、ゲームをはじめとする民生機器や産業機器向けに力を入れる。


CANトランシーバの展示