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米中貿易摩擦を懸念⁉ TikTokがタイにデータセンター設立へ
米国のトランプ新政権が、中国製品に対する関税を10%に引き上げることを発表した。これに対し中国政府も米国からの輸入品への追加関税を引き上げる対抗措置を取るなど、今後の米中貿易への影響が懸念される。前政権から続く米中の貿易摩擦は、世界中の投資案件にも影響を与える。特に中国企業による投資が増えているのが、ASEAN諸国。中でもタイは自動車やエレクトロニクス産業の生産拠点として古くから産業集積が進み、生産拠点としての基盤が形成されている。近年では、データセンターなどデジタル関連の投資も拡大しており、新たな動きが出始めている。
人気コンテンツ・メディア・プラットフォームTikTokを開発・運営する中国のハイテク企業バイトダンス(Bytedance)は、タイでのデータセンター開設に向けた新たな投資を行うことを発表し、1,268億バーツ(37億米ドル)の資金調達の承認を受けた。具体的には、シンガポールに拠点を置くTikTokの関連会社の活動をサポートするデータホスティングサービスに関わる投資。運用は2026年に開始される見込みで、現在世界中で10億人以上のユーザーを抱えるTiktokのプラットフォームを強化することになる。
成長するデータセンター産業
TikTokの計画支出は、タイ投資委員会(BOI)によって承認された総額1,705億バーツ(50億米ドル)の承認投資案件の一部。AI(人口知能)アプリケーションに特化したクラウドサービスを提供するタイ企業のSiam AIもまた、32.5億バーツの投資案件を承認された。「TikTokとSiam AIの投資は、タイのデジタル化とAIのインフラを強化し、ASEANのデジタル・イノベーション・ハブになるという国家目標を支援する重要な一歩となる」とタイBOIのナリット・トゥードサティラサック事務局長は述べた。
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近年、タイでは大規模なデータセンターやクラウドサービスプロジェクトの投資が相次ぐ。今回のTikTokによる投資も、米国のアマゾン・ウェブ・サービスやグーグル(アルファベット)、オーストラリアのネクストDC、インドのCtrlSデータセンターズ、シンガポールのGDS IDC サービスなどによる投資に続くものだ。
BOIはまた、持続可能な航空燃料(SAF)や混合SAFの促進など、バイオエコノミーの促進策の改訂も承認した。タイをバイオエコノミーハブとして促進し、農業原料や農業廃棄物に付加価値を与える投資を促進するという政策に沿い、BOIは持続可能な航空燃料(SAF)と混合SAFの生産に投資促進特権を与えることを承認した。
デジタルサービスが2024年の投資案件のトップに
タイの2024年投資促進申請総額は35%増の1兆1400億バーツ(約330億米ドル)となり、10年ぶりの高水準となった。これは2014年以来の高水準で、データセンター、クラウドサービス、半導体・先端電子機器製造などの大型外国直接投資(FDI)プロジェクトがけん引している。データセンターとクラウドサービスを含むデジタル・セクターは、合計2,433億バーツに相当する150のプロジェクトが投資確定され、昨年初めてセクター別投資額ランキングのトップに立った。さらに、2024年におけるこの分野の主要プロジェクトには、大手ハイテク企業やクラウドサービス企業による大規模データセンターの設立申請が含まれている。
また、近年最も投資額が多かった電子・電気機器(E&E)部門は、昨年は407件、2,317億バーツの投資額で第2位となった。この分野で昨年目立った大型プロジェクトは、フォックスセミコン社(フィティ・グループ)の工場建設投資であった。同社は台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器製造受託)大手、フォックスコンのグループ会社。この工場は、半導体製造装置や高精度機械部品などの半導体産業を支える機器を製造する。