夢十夜のようなもの 二

現実でないけれど現実に見た夢のストーリーその2。特に夏目漱石の文体を意識して書くわけではありません。

 父方の祖父の墓参りのために、昼間に一人で菩提寺へとやってくる。なぜか墓地へ続く道が険しい岩地になっており、巨大な階段のような岩肌をよじ登らなければ祖父の墓にたどり着くことができない。必死で岩を上る途中、同じく墓参りに来た若い男女がはるか上の墓地から戻って来て、岩場を下りるのに四苦八苦している様子に出くわす。
 やっとの思いで祖父の墓にたどり着くが、供え物を何も持ってきていないことに気づく。仕方なくその場に転がっている石を拾い集め、何かの供養になればと祖父の墓前に積み上げるが、何度も崩れてしまいなかなかうまくいかない。こんなところで賽の河原をやっていても意味がないのだが、何度も試しては崩れてを繰り返す。
 墓参りを済ませ、寺の門を出て帰ろうと辺りを見回すと、周りの墓石がみないびつな埴輪のような石像に変わっている。頭が異様に大きく、目も口も大きさがちぐはぐの穴が開いているだけの像にぐるりと取り囲まれ、恐怖に襲われて急いでその場を後にする。寺を出ると、地元の町が見知らぬ田舎町に変わっている。魚屋や町工場が並ぶ道路を抜け、おそらく自宅と思われる見慣れぬ一軒の家に入ると、祖父の仏壇が大きな顔だけの埴輪に変わっている。その長い茶色い顔に空いた目や口の穴から、突然牛乳のような白い液体が噴き出して部屋中にあふれかえる。自分はその様子をただ見ていることしかできない。


 
 レンタルビデオ店でアルバイトをしている。俺はバイトでありながら「カリスマ店員」として名を馳せており、複数の店舗を転々として活躍したことにより、その手腕が業界全体に知れ渡っている存在である。この才能に目を付けた経営上層部の手によって、俺はあちこちの店で細胞を採取され、自身のクローンを大量に生産される。
 挙句の果てに、俺は上層部によって用済みとばかりにとある閉店したビデオ店に監禁されてしまう。電気の消えた店内で、窓からの明かりだけを頼りに途方に暮れていると、どこからか自分を応援する声が聞こえる。声の主は、棚に並べられたたくさんのCDやDVD達である。店員としての道を究めた結果、俺にはCDたちの声を聴く力が備わっていたのだ。無数のディスクたちを率いて、一人のカリスマアルバイトによる経営陣への逆襲が、今まさに始まろうとしている。
 

 今はもう取り壊されてしまった生家のリビングで鰐の群れと雲丹の群れが銃撃戦を繰り広げている。鰐の方が敗ける。
 鰐が雲丹たちによって蹂躙され、傷ついて動かなくなった仲間の死体に寄り添って涙を流している。それを見た俺も感動して泣いている。

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