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【SELSHA通信5月号】知るとハマる!奥深い翡翠の世界

SELSHA通信は天然石ショップSELSHA が2022年から始めたメルマガです。ここでは天然石の話だけでなく、日頃私が気になった「本」を合わせてご紹介していきますので、SELSHAを運営している人ってこんな人なんだなと思って楽しんでいただけたら幸いです。

おまじない

皆さん連休はいかがお過ごしでしょうか?
天気にも恵まれ楽しい休日を満喫されているのではないかと思います。
私はと言いますと大阪でのミネラルショーに出展して参りました。

その前には妻の展示会もあったので、初めて「夫婦対談」形式で振り返りを収録して配信したのですが、大阪のお客様からも「夫婦対談のラジオ配信を聞きましたよ」と言われて、ちょっぴり恥ずかしかったが嬉しかったです。普段のなにげない会話でも、マイクに向かっているとなんか言葉が詰まりますね(^-^;)


さて、5月は翡翠について話してみたいと思います。品質や価格の判断が難しそうな翡翠ですが、これを読んでより多くの方が興味を持っていただけたら嬉しいです。


私物の黒翡翠 RING

なぜ翡翠を取り上げようと思ったかというと、5月の誕生石であるということもありますが、実は私も右手にいつも翡翠リングを着けていますし、小さい頃はおばあちゃんの翡翠のバングルで遊んでいた記憶もあり、中国人にとってはすごく馴染みのある石です。

上の写真の翡翠は普通に見ると真っ黒でよく「オニキス」に間違われるのですが、光を透かすと緑の色味が現れる『黒翡翠』と呼ばれるものです。ミャンマーでビビビッ!!ときて仕入れてから、数年経ってやっとこの石を素敵に変身させてくれそうな作家さんに出会い指輪にしてもらいました。ちなみにこの指輪の写真は2021年、インスタグラムのいいね数が見事第一位だった写真です。ミネラルショーでも実物を見て驚かれる方がとても多くて、話のネタにも重宝しています。(笑)

中国で購入した翡翠専門書

翡翠についてはいつか話してみたいと思ってましたが、情報量がなかなか膨大で着手できずに・・・今回GWの時間を使って余計なことを考えずに勢いで書いてみました。
目次↓↓


翡翠という名前の由来

これについては恐らく多くの方が知っています。それは「翡翠鳥」という鳥の名前から来ています。かつてミャンマーの玉(ぎょく) が中国の王朝に献上されていた時代に、その色の綺麗さに翡翠鳥(カワセミ)の羽の色に例えられ、2000年前に「翡翠」として呼ばれるようになりました。翡翠鳥(カワセミ)の羽は、青、緑、赤、紫などの色からなるように、翡翠もいろんな色があります。しかし市場に出ている翡翠はほぼ緑です。その理由は簡単で緑以外の色は産出量が少ないからです。

カワセミ(翡翠)

翡翠ジュエリーのデザインはなぜ古臭いのか

デザイナーではない私が言うのも恐縮ですが、一概に翡翠のジュエリーのデザインは「古臭い」というとちょっと語弊があります。私自身が宝飾展やミネラルショー、デパート、そして中国のお店などで見てきたものに関して言えば、カッコイイと思うものはひとつもありませんでした(^-^;)
以前美術展で見たショーメというジュエリーブランドの翡翠のジュエリーは素晴らしかったですが、これはフランスでデザインされたものです。このように翡翠文化のない国のエッセンスが入ると、私たちにとっては新鮮な翡翠のジュエリーになるのかもしれません。

ところで、そのデザイン性の「古臭さ」を感じる要因を考えてみました。一つは文化背景にあると思います。翡翠の消費量の殆どが中国ですので、中国の富裕層の好みが変わらければ、商売する側は結局同じものを供給し続けるのでしょうし、いつまで経っても、バングル、くりぬきリング、縁起の良いモチーフのカービングのペンダントなどが市場に出回っている状態です。たとえユニークな形が出ても、それはどういう意味なの?っと中国のお客様に聞かれるかもしれません。"縁起良いもの"とかけ離れてしまうと興味を示すかもしれませんが、購買につながることはないでしょう。

皆さんは日本でいうと「勾玉」がそれに当たるでしょうか?これはお守り的な意味合いだったり、古代へのロマンだったりするのかもしれませんが決してファッションとして身につけたいとは思わないデザインですよね。でもミネラルショーで時々お客様に聞かれるのですよ。「勾玉はありますか?」っと。

ちなみに硬玉 (主にジェイダイト)、 軟玉 (主にネフライト) という言葉を聞いたことがあるかもしれません(詳細には説明するとややこしいので省略します)実はミャンマーで緑色のヒスイ発見されるまでは、どちらも同じ種類の石であると思われていて、今でも中国では専門家でなければ総じて
玉(ぎょく)と呼ぶ人が多いのです。
これもヒスイをややこしくする一因なのですが、ネフライトは色味が鮮やかではなく、やや古臭さを感じさせる気がしています。

でも石の商売をしていると、なんか改善したくなるというか、違うことをしてみくなります。これまでヒスイをユニークな形にカットしてみたり、ハーフランダムファセットをかけてみたりと色々試してきました。

しかし、今でも印象に残っているのですが、数年間、この翡翠のカットを持ってデパートで接客している時、中国からのインバウンド客にはささりませんでした。いわゆる濃い緑を18Kにセットしたインペリアルジェードじゃないと興味がないでしょうか。

半分だけ細かいファセット
ファセットカット


はじめて翡翠を買う方に知って頂きたいこと

ここで1つ動画をご紹介します。2年前に作った動画ですが、その中で翡翠の品質についてよく語られる Aジェード、Bジェード、Cジェード とは一体どんな区別をしているのかについて、初心者の方でもわかりやすく解説しています。5分の位の動画なのでさらっと見れます。


翡翠ってすごく黄色人種の肌の色に合うんですよね。
なので日本人の肌にももちろんよく馴染む。地味なようで実は翡翠の色艶は他の宝石にはない魅力なので、最初に気に入った翡翠に出会えれば少しずつ集めたくなってしまうような不思議な石です。

もう一つの観点、翡翠の市場価値

最後に、翡翠の将来について元サラリーマン的な視点からメルマガを終わりたいと思います。

ミャンマーのアップルグリーン色の翡翠

翡翠の産地は産出量と圧倒的な品質の良さで有名なのがミャンマー、その他にも日本の糸魚川や南米などがあります。正直なところ、まずは自分が直感で惹かれるものを選ぶのが一番良いので、気に入ったものを探しましょう。

例えば日本の糸魚川翡翠は宝石としての魅力や品質というより、日本人にとって「日本産」であることが一番の価値です。生まれた国で獲れる石だから惹かれるんですね。ですが残念ながら海外のマーケットでは「糸魚川の翡翠」は全く相手にされません。つまり日本人の文化的なニーズではあるけれども、市場価値はあまり無いということです。南米の翡翠も面白いものがあったりしますが、市場価値は期待できません。

なので、もし市場価値を考えて買うならミャンマー産の翡翠をお勧めします。中国の富裕層が消費している限り、大きく値崩れことはなし、この数十年をみても翡翠の値段は上がり続けています。今後はアップダウンは多少あるにしても上がり続けると思います。その背景に、紙幣に対する不信がひとつの原因としてあります。紙幣はただの紙切れですから、信頼によってだけ成り立っていますよね(^-^)

そしてもうひとつは「モノの枯渇」です。かつてのスリランカは良質な宝石が採れていましたが、今はかつてほどではありません。タイ王国もかつでは宝石の産地でしたが、今は鉱山が枯渇し、集積地&加工地として存在しています。そしてタイ人がタイ産のルビーを買い戻したり、スリランカ人がスリランカ産のサファイアを買い戻したりという動きも出てきています。

その分アフリカなど他の地域での採掘が進められていきますが、何千年もかけて出来上がる宝石を、短期間でじゃんじゃん採り続けたら無くなってしまうに決まっていますよね。翡翠の産地ミャンマーはルビーを代表格に、サファイア、スピネルなどを自国の重要な産業として位置付けして、鉱山の採掘権がかなり厳格化されています。数年前に私が訪ねたミャンマーの有名な宝石産地モゴックも時期によっては外国人は入れないんです。そう考えると昔の翡翠ジュエリーをリフォームするっていうのも良い方法だなと思います。

2年前に個人的に書いたブログでモゴックの写真を載せています ↑↑


さて今月の本ですが、今回は翡翠の本をご紹介します。翡翠を知るにはなるべくたくさんの翡翠に触れてみることをお勧めしますが、それでも本を読んで基礎的なことを理解したい方には読んでみてください。

飯田孝一氏の著書「翡翠」

飯田先生は日本彩珠宝石研究所の所長で、今も東京御徒町にあるオフィスでご活躍されております。 実はSELSHA も時々お世話になることがありますよ。私がこの本がいいなと思ったのは、ページ数や文字情報が少なくて、沢山写真を使っている点が初めての方にわかりやすいと思います。分厚い本はあまり読む気しないし、文字が小さいと目も疲れますよね。 とくに学術的な本は写真が綺麗じゃないと3秒で閉じてしまいます(笑)

ざっと本の目次をご紹介しますと
  Ⅰヒスイの歴史
  Ⅱヒスイの形成と鉱物学
  Ⅲヒスイの宝石額
  Ⅳヒスイの加工
  Ⅴヒスイの鑑別

内容的には鑑別の軸から切り込んでいますので、翡翠の「加工」「処理」について参考になります。決して内容はむずかしくなく初心者の方にも読みやすい一冊です。個人的には中国での考え方と対比できる部分もあって面白いのですが、これ以上書くとすごいボリュームになってしまうのでそれはまた違う機会にしたいと思います(^-^)


いよいよGW連休が終わり、現実に戻らないといけないと思いますが、世界平和を祈りつつ、ブログはここで終わりにしたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
それではまた来月にお会いしましょう♪

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