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訪問医療マッサージ集客の極意ー地域包括支援センターの仕事

地域包括支援センターの仕事を理解する

地域包括ケアセンターとは、主に地域の中学校区ごとに配置された介護・医療・保険・福祉の高齢者総合相談窓口です。その地域の高齢者が住み慣れたその地域で暮らせるように介護予防や保健福祉サービス、権利擁護を担っています。市区町村の役所のような公的機関と混同されがちですが、地域包括ケアセンターは市区町村から委託された準公的機関という位置付けになります。地域の包括的ケアの中核をなす施設として市町村が設置しているのです。なかには、大手の民間企業が地域包括支援センターとして委託されて運営していることもあります。しかし、だからといって公平性を欠くかといえばそんなことはありません。大手民間企業が同グループ内で有料老人ホームを運営していても、公平に扱うことがほとんどです。地域包括支援センターは、三つの職種のチームでのアプローチで運営されています。三つの職種とは、①主任介護支援専門員 ②保健師 ③社会福祉士 です。それぞれの仕事と役割を説明していきます。

①主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)

主任ケアマネジャーとは、ケアマネジャーの上位職に位置付けられており、十分な実務経験(ケアマネジャー歴が通算5年など)を積むことで、主任介護支援専門員研修を受講することができます。主任ケアマネジャーは、ケアマネジャーをまとめる役割を担っており、ケアマネジャーの新人研修や事例検討会等を開催し、そのスキルアップをめざしています。

このような役割を考えると、地域包括支援センターという地域の高齢者の総合相談窓口に配置が義務付けられているのもよくわかります。地域によっては地域包括ケアセンターの主任ケアマネジャーは、地域の居宅介護支援事業所のケアマネや施設ケアマネを集めた定期的な研修会を実施しています。皆さんの地域で開催されているか、ぜひ確認してみてください。

大変残念なことにケアマネジャーの中には、利用者さんの自宅を訪問せずにケアプランを作成するなど不正行う場合もあります。主任ケアマネジャーは、そういったケアマネ―ジャーへの監視または必要に応じて市区町村の介護保険課と連携しながら教育指導を実施しています。介護にかかわることのできる職種の中でも、主任ケアマネジャーというのは中核的な存在とされています。地域包括支援センター内での役割としては、主に地域の介護相談全般ではありますが、特に保健師や社会福祉士でも対応が難しい困難事例(虐待等)を地域のケアマネジャーと連携して解決を図っています。

②保健師

保健師は、あまり聞きなれない職種かもしれません。また看護師との違いについてはっきりと答えられる人も少ないと思います。保健師には、働く場所によって、行政保健師、産業保健師、学校保健師、病院保健師などの種類があります。皆さんになじみのある保健師というと、学校保健師か病院保健師あたりでしょうか。

行政保健師は、保健所や地域の保健センターなどの行政関係の施設に勤める保健師です。市民の健康維持や医療相談受付、難病の方のサポートや同じ地域で働く公務員に対する保健指導や健康管理も行います。
 産業保健師は、一般企業における社員の健康管理を行っています。産業医なら聞いたことがあるという人が多いかもしれません。
 学校保健師は、皆さんおなじみの学校の保健担当の先生です。生徒向けに怪我や応急処置などを行い、修学旅行にもついてきてくれる先生です。
 病院保健師は、病院内で健康診断や健康相談を行いながら、看護師業務を兼務することもあります。病院内にいたら看護師との見分けがつかないかもしれません。「保健師って、看護師を兼務できるの?」と疑問に思われた方もいるかと思いますが、保健師は看護師業務を兼務することが可能です。

ここで保健師と看護師の違い、まずは取得している国家資格について説明します。看護師になるには看護師国家試験を受験し資格を取得する必要がありますが、保健師になるには保健師国家試験のほかに看護師国家試験に合格する必要があります。仕事の違いについては、保健師は健康維持促進や病気の予防を促していくことが仕事になります。看護師は、保健師とは異なり、病気やケガに対する治療の補助や療養上のお世話、いわゆる看護が主な仕事です。「予防」と「看護」という、それぞれ異なった役割となっています。地域包括支援センター内の保健師の主な仕事は「医療・介護予防」に関する相談業務です。担当地域内の介護予防のために高齢者が通えるようなサロンを開催するなど、住み慣れた地域で安心して暮らすための役割を担っています。

③社会福祉士
 私は、社会福祉士の資格を所持しています。私の場合は4年生大学出身なので実習+専門学校へ2年間通わなければなりませんでした。ちょうど「木下の介護」で入居相談員として働いているときでしたので、取得するための実習は大変苦労しました。それでも代休や休日を利用し、何とか特別養護老人ホームの1カ月の実習を終え、試験にも合格することができました。

社会福祉士の主な仕事は「相談業務」です。社会福祉士にかかわらず、地域包括支援センターでの仕事というのはすべてが相談業務ではありますが、日常生活の問題や課題にかかわる相談、医療や福祉、介護、行政、教育的な側面からも支援やアドバイスをします。働く場所は多種多様で、地域包括支援センターでは権利擁護や相談業務を担当してますが、高齢者施設や障害施設、社会福祉協議会、児童相談所、児童福祉施設、学校や学童、病院や診療所、保健所や保健センター、市区町村では、それぞれに応じた内容の相談業務を担当します。一言でいうと「人の相談に乗ること」を専門とした国家資格なのです。

皆さんが連携されている病院にも、社会福祉士は常駐しています。病院の中には地域連携室といわれる地域と病院の橋渡しをする窓口が存在するのですが、そこには地域包括支援センターと同じく、退院するための調整を行う看護師、そして各病棟ごとに配置された社会福祉士がいます。

訪問医療マッサージは、今後、こういった専門職との連携が必要となってきます。徐々に種を蒔く必要があるのです。このことを、ぜひ覚えておいてください。三つの役割と職種は理解してもらえたかと思いますので、地域包括支援センターの具体的な仕事内容を説明していきます。

「Step4 地域包括支援センターの仕事を理解する」の最初で、地域包括支援センターは、一つの市区町村あたりに中学校区ごとに配置されており、高齢者の総合窓口となっているとご紹介しました。しかし実は、まだまだ知名度が低いというのは課題があります。加えて地域包括支援センターは、市区町村内にてエリア分担されているので、エリア外の高齢者が相談しに来たときにはそこで相談を受けることができず、「人によってはたらい回しになることがある」という問題もあります。介護の課題を抱えた地域住民が、スムーズに地域包括支援センターへたどり着くことができないのが現状です。
 こういった課題も解決するために地域包括支援センターは、地域の民生委員や地域住民、シルバー人材やご近所とのパイプを太くし、自分たちではカバーしきれない介護難民の発掘を連携して行っています。地域包括支援センターとして、その地域、エリア内の介護問題を抱えた人を支援するためには、まさに「地域連携」が必要なのです。それには介護施設や医療機関、そして弁護士事務所や後見人事務所だけではなく、訪問医療マッサージも積極的に連携に加わる必要があるのです。

地域包括支援センターは介護相談窓口です。どんな方でもまずはここに相談し、そしてどんな介護問題を抱えているのかということをヒアリングします。地域包括支援センターで解決できることであればいいのですが、多くの場合はなんらかの介護サービスや医療サービスその他の支援を必要とするケースがほとんどです。
 地域包括支援センターでは総合相談窓口として相談者の問題を把握したあと、相談者の問題や課題を解決または支援するために地域の「介護資源」を活用できるようにコーディネートしていきます。「介護資源」は、一番最初の「第1章 営業」の「1. 営業とは何か」に出てきた言葉です。それ以降も何度か登場していますが、ここで少し詳しくこの言葉について説明します。「資源」には。無料で使えるものと有料で使えるものがあります。訪問医療マッサージは有料の医療資源ということになります。こう聞くと居宅介護支援事業所のケアマネジャーと似ているのではないかと思われますが、まさに同じことをする場合もあります。

地域包括支援センターでは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと異なり、「要介護1」から「要介護5」の方のケアプランを作成することはほとんどありません。その代わり「要支援1」から「要支援2」のケアプランを作成することがあります。ここは役割としてある程度、明確に分かれています。相談に来た人の話から介護サービスを活用したほうがベストであると判断をすれば、介護認定の手続きを行います。そして相談者の家族や親族、または本人に「介護認定が出るタイミング」に合わせて様々な介護・医療サービスのコーディネートを行います。例えば介護申請した人の状態が寝たきりであれば、「要介護5」という判定になります。この場合、地域包括支援センターでケアプランを作成するわけではないので、「介護認定のタイミングに」合わせて居宅介護支援事業にバトンタッチするのです。バトンを受けた居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、必要な介護サービスを手配するということになります。このようにして地域包括支援センターから居宅介護支援事業所、そして訪問介護や訪問看護、訪問医療マッサージへと流れるように連携が可能となります。

介護保険内のサービスでは不足すると判断した場合は、地域包括支援センターは相談者の近隣住民や地域を見守る民生委員に事情を伝え協力を仰ぎます。地域住民も含めたさまざまな職種が連携し一人の高齢者をその住み慣れた町で安心して生活できるように見守り支援するシステムが「地域連携」なのです。
 地域包括ケアセンターでは、地域の高齢者を招いて座談会やお茶会などを開催しています。私も「木下の介護」で地域を担当していたときは、よくこの集まりに行っていました。「お菓子を食べながら雑談をする」場を設けることで、比較的元気な高齢者に集まってもらえます。そうすることで「地域包括ケアセンター」という存在を知ってもらい、地域とのネットワークを構築しているのです。

地域の認知症高齢者や実際に介護をしている家族が集まり、グループに分かれて悩みを相談したり、自身の体験談を共有したりする集まりを「認知症カフェ(オレンジカフェ)」といいます。こういった地域包括支援センターが主催のイベントは年に数回決まって開催されています。コロナ禍の昨今は、オンラインで開催するような試みもあります。
 訪問医療マッサージの施術者や営業職は、このイベントにお手伝いとして参加することを強くお勧めします。人手が足りず、またZoomの使い方などが分からない人も多いで、「地域連携」の輪の中に入り込む「入口」になります。信頼関係の構築の基本は、まずはしっかりと“与える”ことです。私も過去にコンサルティングをしている訪問看護ステーション方と一緒に地域のイベントに参加しましたが、その場には15人以上のケアマネジャーや相談員が集まっており、次の日には早速、新規相談が数件ありました。一見意味がなさそうに見えるこの活動には、地域とのパイプを太くするために必要なお互いを知るためのコミュニケーションの時間と場が提供されているのです。

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