シチリアにしひがし モツィア遺跡を訪ねて一人旅
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※無料で公開するので博物館の展示物の写真を載せています
初めてのシチリア まずはトラパニへ
2015年、来年はシチリアの遺跡を見て回ろうと計画しました。2000年に南イタリアのツアーに行くときに買ったガイドブックのシチリアのページを開くと、シラクサ、アグリジェントなどの有名な定番の遺跡しか紹介されていませんでした。
ツアーでは、短い時間ながらもタオルミーナ、シラクサの古代ギリシャ遺跡を見学し、シチリアを再訪したいと考えていました。
3回ほどローマを見て回った後に、旅行好きの同僚に次はシチリアに行ってみたいと言葉に出したことが背中を押しました。一度出した言葉は飲み込めませんね。
さて、どのような古代遺跡があるのかはインターネットで。
「シチリア西部の古代遺跡」と打ち込むと、セリヌンテ、セジェスタという聞いたことのない遺跡を目にしました。
どちらも古代シチリアの有力都市で、争いがあったことも。
シチリア西部はシラクサなどの東部に比べ経済発展がされておらず素朴さが残る地域であることも紹介されていました。
個人旅行で訪れた人は素晴らしい遺跡だと評価していました。
2016年の旅行後、隣の同僚はイタリアに行ったことには興味を示しましたが、崩れた石柱や石で組まれている建物の基礎の写真を見せると、こんな石ころばっかりのところに行って本当に楽しいのですか、との反応。
変なおじさん?という評価なのかも。
職場のパソコンのトップページに遺跡や神殿の写真を利用していたのですが、趣味の人という視線。まあ、仕方ないか。
さて、遺跡の話に戻ります。
頼りになるガイドブック地球の歩き方の「南イタリアとマルタ」では、マルサラ近郊にあるカルタゴの拠点モツィアなどの情報を目にする事が出来ました。
特にモツィアは、チュニジアのカルタゴとケルクアン遺跡を見学していたので、再びカルタゴの遺跡に出会えることになりそうとワクワク。
この遺跡があることで、行先はシチリア西部に決定!
昔、歴史で習ったフェニキア、カルタゴの人達に時間を超えて会いに行くような、まるで遠足を前に眠れない子供のような感じでした。
私は、歴史に興味を持っていたので、四大文明からギリシャ、ローマの歴史に進んでいく中、強大なローマに対抗したカルタゴやハンニバル将軍の戦いの物語に心が躍りました。判官びいきなのですかね。
話を旅行に戻します。
次は、観光拠点をどこにするかですが、エリチェ、セジェスタ、モツィアの遺跡に近いトラパニに宿泊することに。
時期は、休みの取りやすい2016年の1月に。6日にトラパニに入って、13日出発で実質6日間としました。
6月に旅行会社を訪ねました。まずは、航空券の手配です。
早期に手配すると安いシートがあるということで千歳→成田→ローマ→パレルモ→トラパニの往復で予約しました。
さて、宿泊については10月ぐらいにならなければ、ホテルも料金も入ってこないので、お客様ご自身がホテルを予約したほうが安く泊まれますと言われました。
この日からパソコンに向かい合いながら、初めての宿泊予約にチャレンジしたのでした。このことは別の機会に。
あこがれの遺跡 近くて遠いMozia(モツィア)
モツィアは、フェニキア人がカルタゴを建設してから100年後の紀元前8世紀に建設され、シチリア西部の拠点都市の一つとして栄えていました。
植民都市ではなく従属していたと表現したほうが正しいとされています。
当時は、島と陸地を結ぶ1㎞にもわたる石で舗装された陸橋が築かれ、今も海底に遺構が残っています。
シラクサのデイオ二シオス1世の侵略によって破壊され、カルタゴの大軍によって奪還されました。
その後は現在のマルサラに要塞を築き、そこを拠点とし、当時はリバリウムと呼ばれていました。
第一次ポエニ戦争でローマ軍の攻撃を受けましたが、カルタゴが敗れたために要塞が明け渡されました。
その後、モツィアが登場するのは、マルサラワインの輸出で財を成したイギリス人J.ホイタッカーが島を購入し、1909年から遺跡を発掘してからです。
当時の島の名前であるサン・パンタレオ島が、古代モツィアと確認されたのです。発掘品は、彼の別荘跡の博物館に展示されています。
現在、遺跡はパレルモにあるホイタッカー財団が運営しています。
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2016年からトラパ二に滞在して、モツィアの遺跡には5回通い続けましたが、何時間いても飽きませんでした。
2016年1月は、タクシーを使いモツィアとセリヌンテを訪れました。時間の都合で、博物館と島一周でわずか1時間の滞在で、昔のことに思いを巡らせるには短い時間でした。
それでも島全体に広がる遺構の数々に圧倒されてしまいました。まだまだ土の下にあるであろう姿を思い描き、そこに自分が立っている現実に嬉しさがこみ上げてきました。この年の12月にも訪れました。
2018年、公共交通機関で行くことを考えアパートのスタッフに相談すると、バスはないので鉄道で行くしかないと。
列車の時刻を調べてもらうと、行8時04分トラパニ駅、帰りはマルサラ発14時46分の列車がモツィアビルジ(MoziaBirgi)駅に停車すると。
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少々歩くのを覚悟し、降りたi駅からタクシーの車窓の景色を思い起こし、車をよけながら歩道なき道を歩きました。
車は歩行者がいるからと言って徐行してくれるわけではありません。正直怖い感じで車が来るたびによけていました。注意を払うだけで疲れました。
マルサラの博物館でもらったおおまかな地図を頼りに、この道で正しいはず。前日、市販の地図でも確認したのだからと。
距離感がつかめずどこまで近づいたのか不安な気持ちを胸に歩き続けました。
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ちょうど郵便局の前で出会った方に「進む方向を指さしモツィア?」と聞くと、イタリア語と身振り手振りで親切に教えてくれました。
感謝、感謝です。まっすぐ歩いて、ロータリーを右に行くことがわかり一安心でした。奇跡的にロータリーと言っていることが分かりました。
さらにスーパーに買物に来た方にも同じように聞くと、先ほどと同じ答えが返ってきました。歩き始めて約30分位でロータリー、道路標識の矢印に従って海側に折れ、そこから15分位で船着き場にやっと着きました。
あなたにとって45分歩くことは簡単なことなのでしょうか。
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小さな小屋でモツィアに行く船のチケットを買い、船に乗り込みました。島に着いて迎えは2時間後と言われましたが、帰りの列車の時刻を示し、迎えを3時間後にしてもらいました。
同じように見えても毎回小さな発見があり、とにかく青空の下の散策は心も体もリフレッシュしてくれることは間違いありません。
初めて船着き場で日本人の方に出会いました。日本語が懐かしくなり話しかけたところ、ツアーで近くまで来ていて、自由時間にガイドに連れてきてもらい塩の博物館を見に来たそうです。
帰りは重くなった足に気合を入れて同じ道を列車の時間を気にしながら駅に向かいました。遅れてきた列車に乗り無事トラパ二に戻りました。
ちなみに、モツィアビルジの駅舎は閉鎖されていて、行きと帰りのチケットを買っておいてよかったと胸をなでおろしました。トラパニで往復を買っておくことをお勧めします。
2019年は、ガイドブックの体験記とバス時刻を見て、今年はバスで行こうと決めていました。
2018年、マルサラ博物館で前年展示室が改修中で見ることのできなかったカルタゴ船をしっかり見た帰りに、バスターミナルとチケット売り場を確認していたので、今回の準備はOK。
いざマルサラへ。
昨年、手帳に道順を記録していたのでスムーズにバスターミナルに向かうことができました。
さて、ポポロ広場の建物内の新聞売り場に行くと誰もいません。しばらく待つとおじいさん?が。
モツィア行の往復切符が欲しいことを伝え、片道€1.2、往復なので2枚分を支払いました。
ガイドブックのバス出発時刻を手帳にメモしてきましたが、念のためにバス時間を書いてもらうと、13時10分。「え?」と一言。
早い時間はないのか聞くと、明日8時だと。
そんなやり取りの後、行けないことを伝え、切符を戻すとお金を返してくれました。ありがとうと伝え、その場を後にしました。
そう、今はオフシーズンだ。昨年スタッフが調べ、バスはないと言った ことは正しかったのだと気がついた瞬間でした。
😢「近くて遠いモツィアでした」
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その日は、ドーモのミサを見学して、博物館に向かい昨年より充実したカルタゴ船の展示と考古学公園を楽しんできました。
今回の結果にめげず、翌日タクシーでモツィアに向かったのでした。
言葉を交わしての楽しみ
オフシーズンのモツィア島はとても静かな島で、島で会うのは多くても5組くらい。急いで回れば博物館と遺跡見学は1時間くらいで見て回ることが可能です。
島の遺跡を独り占めし、古代の人の生活を振り返りながら歩くと、予定した3時間はあっという間に過ぎてしまいます。
そんなゆったりした時間を過ごしているときにカップルに言葉をかけられました。
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「ネクロポリスはどこですか」と。何回も来ている私は、指をさして「聖域はあっち」。お墓の単語がわからず、「子どもの小さな石の記念碑がある」と思いつくままに伝えました。
(後から地図を見るとトフェを伝え、正しくない場所を伝えてしまったことに気がつきました。ネクロポリスはトフェの右側でした)
わかってくれたかな?「どこから来たの」と尋ねると、「ドイツ」と。「私は、日本から」と。
2019年に、船着き場でアジア系の夫婦の奥さんと話しました。「どこから来たのですか」と聞くと、「韓国」。
「一ヶ月レンタカーを借りて旅をしているの」と。
私は、「えっ、車で、信じられない」「それはばかげている。道路の幅が狭い。私は運転できない」と身振り手振りで話しました。
表情を見て伝わったと一安心。「良い旅を」と言って別れました。
一人で旅しても言葉を交わす人がいると楽しみが倍増。思い出の倍返しです。
シチリアでは、バスが通る道路でさえ狭く両サイドに駐車し、時々目の前に止まっている車が車線に出てくるのです。思わず、「あっ、危ない」。
路地からも車がとび出してくるので「あっ、危ない」と。心臓がバクバクします。
バスやタクシーに乗っていると毎回びっくりさせられます。スリルが味わいたければ一番前の席へ。エリチェからの下りは最高です。
モツィアから話がそれましたが、毎回行ってもその景色に心を打たれます。
人々が生活していた証がたくさん残っていて、モツィアが滅び去った時の流れを感じてきました。ゆったりと過ごしてほしい遺跡の一つです。
< 撮ってきた写真の一部から想像してみてください >
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モツィアとホイタッカー博物館の旅
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ホイタッカー博物館
モツィア島に行くには船着き場まで行かなければなりません。1回はモツィア駅から苦労して歩きましたが、安全と島をゆっくりめぐることを考えるとタクシーがおすすめです。
乗船して10分ぐらい景色を楽しむと島に着きます。降りてから船長に迎えの時間を聞かれます。3回目からは3時間と伝えました。
ただ、歩いてきたときは2時間と言われましたが、帰りの列車の時刻を見せて了解してもらいました。島に着いて小さな小屋でケットを買って見学がスタートです。
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モツィアで発見された様々なものが展示されています。
有名なものは、「モツィアの青年像」です。ガイドブックには、気高く優美に立つ姿に、フエニキア人の高度な芸術を垣間見るようだ、と紹介されていますが、別の本では紀元前5世紀ごろのギリシャ彫刻で、戦利品としてギリシャ人の都市から持ち帰ったものであるとされています。
等身大の像で、大理石の滑らかな感じがとてもきれいです。照明の効果もあり、青年がこちらに迫ってくるようで、自分が当時の時代に引き戻され
たような思いになりました。いつまでも見ていたいと思わせる一つです。
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フェニキア人の諸都市には、「トフェ」という聖域があります。バール・ハモン神、タニト神が祭られていました。そこでは幼児の首をはね炎で焼いて神にささげ、戦勝祈念、厄災を払う儀式が行われたと伝わっています。
中東に伝わる風習と言われています。
発掘調査で子供の墓石の下に焼かれた骨が発見されたことからそのように考えられました。
博物館に展示されている素焼きのお面は、その時の親の表情を表しているとも言われています。
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今は、砂に埋まっていますが、海から続くコトン(内港)に続く水路
です。小規模ですが保存状態もよく、当時は軍船が入港していました。
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モッィアでの美味しい昼食
以前から毎回、船着き場にある店が気になっていました。当時の私は、ポカリスエットやカロリーメイト等の行動食と言われるものを見学しながら食べていたのでした。
家に帰ってから観光客がワインを飲みながら談笑している様子を伝えるたびに、妻からはどうしてイタリアのおいしい食事を食べてこないのかと言われていました。いつも観光客のグループがワインを飲みながら食事をしているのをうらやましく見ていました。
この日も外のテーブルでは観光客のグループがワインを片手に楽しんでいました。
2019年の旅のテーマを、「美味しい昼食」と決めていたので、私は迷わずにここに入ることに決めていました。もちろん帰りもタクシーです。
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ブルーのイスとテーブルクロスはとてもおしゃれでした。紙のメニューはありません。写真にあるボードでトラパネーゼ(トラパ二由来のパスタ)を選びました。
初めにワインが出てきました。すきっ腹にワインは最高。身体の中にワインがしみこむような感じ、おいしさで胃が締め付けられるようでた。・・・ただ酔っ払っただけですけれど。
次に出てきたのはパン。パンの上のチーズとミニトマトも絶品でした。
見た目も最高。
最後にパスタ。パスタの周りにアーモンドなんて、とてもおしゃれで目でも楽しませてくれました。太麺にソースが絡みついてトマト味が優しく、とても美味しく感じました。
白ワインとの相性も抜群。税込みで€15(約2000円)でしたが、量も日本の大盛りで大満足でした。次もここで食事を楽しみたいと思わせてくれたお店でした。