【マッチレビュー】日本vsイラン
〈システム〉
日本のフォーメーションはバーレーン戦と同じく4-1-2-3。先発の入れ替えがあったのは3枚で左のサイドバックに伊藤、インサイドハーフの一角に守田、左のウイングに前田が入りそれ以外はバーレーン戦と同様のメンバーとなった。一方のイランは4-2-3-1のシステムで試合に臨んだ。
〈前半の展望〉
日本の中盤3枚に対してイランは4-2-3-1の守備陣形でそこへのパスコースを消しにかかっており、日本は前田のストロングポイントであるスピードを使って裏へのボールで攻撃を組み立てたり、センターフォワードの上田が少し降りてきたときにイランのセンターバックがマークにあまり付いてこないので上田に当てて他の選手がサポートに入り攻撃に出たりといった形を取った。
その他にも中盤の枚数を増やす、あるいはポジションを変えるなどして中盤での優位を保とうと試みる。イランはセンターバックにはあまりプレスをかけに来ないので板倉・冨安がセンターサークル付近にまでボールを運ぶこともでき、その分サイドバックも高い位置を取れるのでウイング、インサイドハーフとの3人の連携でフリーの選手を作り出しチャンスを演出した。
中盤での関係性を活かして上手く攻撃を仕掛けていた日本だが、とうとう試合が動く。27分、守田がサイドにポジションを取りボールを受け中盤の空いたスペースにパスを送り上田がこれを収めてボールをキープする。そこから中に入ってきた守田がパスを貰いそのまま持ち運んでイランの守備を突破しシュートを打つ。キーパーに当たったがゴールに吸い込まれ日本が先制点を挙げた。これまでも上田を攻撃の起点として攻める構図があったが、それが見事に実を結び日本がリードを奪う。
攻撃だけでなく守備でも連動した動きを見せた。プレスをかけてコースを限定し前線にパスが入ったときは厳しく寄せていった。攻守が一体となったプレーを見せボールを奪われた後もすぐに切り替えて守備を行い前線の選手もプレスバックで後ろの選手を助け相手を挟んで自由に攻撃はさせなかった。
しかし、徐々にイランの攻勢が強くなっていく。板倉のところで競り合いが勝てているのが分かってくるとそこを狙ってくるようになった。日本はサイドでチャンスを作られ危険なボールを入れられる場面も増えてくるようになり前の選手がよく戻ってきて何とか耐えることが出来ていた。特に前田は自慢のスプリントを繰り返して前線からチェイシングをかけ、時には自陣エリア内にまで戻って守備の手助けをした。終盤になってイランの攻めを耐え忍ぶ状況が続いたが集中を切らさず無失点で切り抜け1-0で前半を終える。
〈後半の展望〉
後半も前半終わりの勢いを持って立ち上がりからイランが攻め立てる。前半の途中からイランは守備のやり方を変えてきており、これまでセンターバックへプレスをかけてはこなかったが、センターバックにもプレスに行くようになり元々中盤へのパスコースを切ることが出来ていたため日本のビルドアップを完全にシャットアウトできるようになった。攻撃に関してもサイドのところでフィジカル面で勝てているのでサイドを使った攻撃、時にはロングスローも利用して中にクロスを上げて何度も日本のゴール前に迫った。
そして54分、センターバックだけでなくゴールキーパーにまでプレスをかけにくるイランの守備を回避するため前線にロングボールを送ったところを回収され、そこから流れるようなパスワークでディフェンスの背後に抜け出されゴールを許し同点に追いつかれた。前半の最後から見せていた前線からの守備で日本のビルドアップが封じ込まれ完全に相手の狙いとする方法で相手に得点される結果となってしまった。
その後もイランが流れに乗って押し込む展開が多くなる。63分には裏へのラフなボールにアズムンが抜け出し日本のディフェンスをかわしてゴールネットを揺らしたが、これはオフサイドの判定で日本は命拾いした。ただ、イランは奪ってからは前へ、裏へという意識が強くなり味方が余裕のある状態なら果敢に抜け出す動きを見せて日本の守備を翻弄した。積極的なプレスから日本にボールを蹴らせてそのセカンドボールをしっかりとマイボールにし、質の高いボールを供給するシーンが増えてくるようになった。日本の守備陣はボールホルダーに対して寄せがきかなくなってきており簡単にロングボールを蹴らせてピンチを招く非常に危ない状態に陥っていた。
日本も状況を打破しようとビルドアップ時のシステムを4-2-3-1に変更したことでボランチやサイドバックの選手が空くようになってはきたが、そこにボールが入ったあとの展開がなく寄せられてボールを奪われてしまい思うようにボール、相手を動かすことが出来なかった。
イランのペースで試合が進みアディショナルタイムを迎えた93分、イランが後方から前線にフィードを送り、このボールを折り返したところで日本の守備に連係ミスが生まれ処理を誤りその焦りから相手を倒してPKを与えてしまう。これを沈められ日本は土壇場でイランに逆転を許しこのまま試合は終了して1-2と日本は準々決勝で敗退することになった。
〈まとめ〉
前半は上田が攻撃の起点となる形を作れたり中盤での連動したアクションからのパス交換でリズムを作ったりと優位を保てていたが、前半の終わりごろから戦略を変えてきたイランのサッカーに苦しむ時間が続くようになった。後半に入っても上手く軌道修正することができずにイランに押し込まれ試合をひっくり返された。相手が対策を施してきたときに今度はこちら側がどう対処していくか、今後もそのようなことが求められるし課題となってきている。優勝を目指していた日本にとっては非常に残念と言える結果だった。
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