【マッチレビュー】23-24プレミアリーグ第25節 マンチェスターシティvsチェルシー
〈システム〉
マンチェスターシティのフォーメーションは4-1-4-1。キーパーにエデルソン。ウォーカー、アカンジ、ディアス、アケの最終ライン。ロドリがアンカーでサイドにフォーデンとドク。中央にアルバレスとデブライネを置きワントップにハーランドが入った。
一方のチェルシーは4-2-3-1のシステム。キーパーにペトロヴィッチ、DFラインはグスト、ディサシ、コルウィル、チルウェルの4枚。カイセドとエンソフェルナンデスのダブルボランチで2列目がパルマー、ギャラガー、スターリング。ジャクソンのワントップというメンバーで試合に臨んだ。
〈前半の展望〉
試合は大方の予想通りシティがボールを握る展開になる。4バックでスタートしたシティであるが、ビルドアップのときにはアカンジがボランチの位置に入り可変的なフォーメーションで攻撃を組み立てていこうとする。これに対してチェルシーはスタート時のフォーメーションを崩すことなくブロックを形成し前線で積極的にプレスには行かず中央を閉めて待ち構え、攻撃のスイッチが入るところには一気に寄せに行きシティの攻撃を封じにかかった。シティはアカンジを上げて中盤での人数を増やしたが、チェルシーはそれに動じず真ん中へのパスコースを切りボールをサイドに追いやり、サイドにボールが渡ったときもサイドバックに加えてサイドハーフもしくはボランチのどちらかがサイドのケアを怠らず2枚は付くようにして簡単にシティの攻撃を許さなかった。
シティの攻めを受ける形が多かったチェルシーだが狙いを持った攻撃でシティのゴール前にも果敢にアタックする。基本的にはボールを奪ったら前への意識が強くスターリングやジャクソンが抜け出しを図る縦に早い攻撃を仕掛けた。アタッキングサードに入ったときはシティのシステム上ロドリの脇が空きやすいのでボランチがそこに入っていきチャンスに繋げていった。
後ろから繋いでいくときもロドリの脇のスペースを有効に使えていた。2列目の選手がその場所にポジションを取りビルドアップの逃げ道を作り上手くシティのプレスを剥がせていた。特に右サイドでパルマーがタイミングよく降りてくるシーンが多く後方からのパスを引き出し前を向き、そこからグストがサイドのスペースにオーバーラップをかけてシティの守備網を突破するという形を作り攻守において狙ったサッカーを展開出来ていた。
シティはボールを保持する時間は多かったが、あまりチャンスに持っていくことが出来なかった。チェルシーが中を閉じているためサイドから崩しにかかるが、チェルシーの集中した対応に手を焼いた。デブライネもサイドの攻撃に関わり苦戦しているサイドの攻略を手助けに入っていくものの、チェルシーは簡単にマークを外さず、内側のポケットに入ってくる選手に対してもしっかりと対処してシティを抑え込んだ。シティは左サイドのドクに回すことが多くドクの仕掛けを期待していたが、マッチアップするグストが1対1に負けず突破を許さなかった。
シティが攻めあぐねる中で時折チェルシーが鋭い攻撃を見せていた前半の終盤に遂に試合が動く。シティの攻撃を凌いだチェルシーが前線にボールを送り右サイドでジャクソンとパルマーの連携でシティの守備を崩してジャクソンが裏に抜けエリア内に走るスターリングにクロス。受けたスターリングがウォーカーを躱してゴールに流しこみチェルシーが先制点を挙げた。これまでも右サイドからチャンスを作り出していたが見事なカウンターでチェルシーがリードを奪い1-0で前半を終える。
〈後半の展望〉
後半になってもシティがボールを持つ時間を長くして攻め込みチェルシーが迎え撃つ構図が続く。中央は固められているのでサイドを主体とした攻撃でシティは隙を作り出しにかかる。何回か良い連携を見せてシュートチャンスにまで持っていく展開も出てはいるが、基本的にはチェルシーの守備ブロックがしっかりと機能していた。サイドに振られてもフリーにはさせず中の枚数も揃えて上がったクロスも的確に跳ね返した。守勢だけに回ることもなく前半と同様に右サイドのパルマーがビルドアップの逃げ道となって攻撃に転じ鋭いカウンターも見せて追加点を挙げにいこうとする姿勢を示した。
シティはチェルシーのカウンターを受けるリスクがありながらも早い時間帯からセンターバックがハーフラインよりも前に立ち位置を取り、アンカーのロドリもペナルティエリア内に積極的に入ってくるなどフィールドプレーヤー全員がチェルシーの陣地に入るほど全体のラインを非常に高く設定して完全に押し込みにかかる。
後方からの押し上げもあってシティは前線により枚数をかけることができフリーの選手が生まれ崩せるシーンが出てくるようになる。サイドにボールが入った際に、マークを捕まえにくい内側からの抜け出しでポケットを取ってエリア内に入る機会が増えてくるようになった。また、チェルシーの寄せが少しずつ緩くなってきているのでサイドから危険なクロスを上げたり堅かった中央をパスで崩していけたりしやすくなってきていた。
そして迎えた83分、中盤に空いたスペースをロドリとデブライネが使ってボールを運び少し開いた位置を取った途中出場のベルナルド・シルバへ。ファーへのクロスにウォーカーが走りこんでシュートを放ちブロックに入ったディフェンスに当たってこぼれたところをロドリがいち早く反応して押し込み遂にシティが同点に追いついた。このまま試合はタイムアップ、1-1の引き分けに終わった。
〈まとめ〉
試合展開としては大半の人が想像していたものだと思うが、シティの攻撃に対するチェルシーの守備は奇麗にハマっていた。攻撃でもこの試合の意図していた攻め方で得点を挙げ攻守ともにチェルシーの戦術は効果的だった。それでもシティは押し込む形を作り続けてスペースを生み出し徐々に崩せていけるようになり、最終的には堅固だったチェルシーの守備を見事にこじ開けた。両チームのプレーが光る見応えのある試合だった。