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SNOW FLICKRって言うウェア屋さん始めた。②現在進行中>

当初、このストーリーを書いた時は諸々と伏せてましたが、今はしがらみも無く、心置きなく書けます。

私がリストラされた後、令和2年12月末をもってフェニックス社が事業を終了し、ブランドの存続は、株式会社志風音がマスターライセンス契約を通じてブランドを継承となりました。とは言え老舗のスポーツブランドがまた一つ形を…。

残念ではありますが、中に居いた私からすると成るべくしての結果にも思える状況でした。

(株)フェニックスのテクニカルセンターは新潟県新発田市を拠点とした製品開発の技術部門がありました。 2013年4月、私は東京からこのテクニカルセンターで働くことを希望し就職となり息子を連れて転居しました。(詳しくは1話にて…https://note.com/selfit/n/n147932afc975)

当時、このセンターでは私が、もちろん一番の下っ端。先輩方は勤続年数20年~40年のベテラン揃いで、腕の良い技術者も大勢いて、忙しく活気のある職場でした。

まさか、寄りによって、その方達を見送って私がこの部署で最後の一人になるとは想像もしていませんでした。(順番は大人の事情)

誰も居ない、とーーーっても広いフロアには使い込まれたウェアを作る為の特殊機材や工具やミシンや椅子やテーブルがあちらこちらに沢山。

それらに囲まれ、たった一人。

聞こえてくるのは年季の入った古い換気扇からの「ブォ~~~」の音だけ。

今まで気にならなかったのに…

「うっさいなーこの換気扇っ!」と思い。

試しにスイッチ切った…

ぇ…音がないと寂しさ倍増になるんか。

こんな換気扇でも、少しは気持ち紛れてんのか…

と、またスイッチON。

まぁ…過ぎた日はもう過去のこと。

世の中、コロナやら自然災害やらで大事ですよ。大変な人達だらけ、これぽっちの事で悲しんでも居られません!これからのことを考えよ…正確には数年前から計画を練り練りしてました。

私のやりたいことを今やる時が来たと思えば気分がガラッと変わりました。

とは言え、急なことで準備が足らない、お金もない、職もない、あるのは住宅ローンだけなー。一時はクラウドファンディングなんかも考えましたが、もっと大変な人達が居るこのタイミングでは出来ないなと断念。

どうしようか…

いや、待てよ。

根拠の無い自信と、やる気と、勇気もあるな!十分だな!

じゃ何とかなるなっ!…多分!

今やれる事を、少しずつ私のやり方でやることにしました。

SNOW FLICKR スノーフリッカーです。
https://www.snowflickr.com/

スキーウェアとスノーボードウェアのリペア・ポイントリメイク・カスタムウェア制作をするスノーウェアに特化したウェブでの専門店です。

フェニックスにも修理をする専任技術者がいました。しかし、数年前から業績が悪くなるにつれ、人がどんどん減り、修理対応の技術者が居なくなり、残ったメンバーで何とか回すことに。そんな訳で、私にも修理をする順番が回って来る様になりました。

正直、開発用の製品を制作することに携わるのはとても楽しい仕事でしたが、修理はそれとは違い、人が着ているボロボロヨレヨレ(中には)の製品を修理する業務。当時は良い気がしてませんでした。

全国から寄せられる、修理品には「こんなに古いウェアを直すんだ?!」なんて物も沢山ありました。毎年の様に送られてくる登山用ダウンやヨレヨレのスエットもありました。

ここでは企業内の業務なので、お客様がどんな思いで依頼しているのかも分からずに業務として修理に携わっていました。

でも、この経験のお陰で分かったことや、気づいたことが沢山ありました。

そこから形にしたのがSNOW FLICKRです。

少額で最低限の必要な機材や資材を揃えて、ホームページ制作、ウェブ管理、広報活動、お問合せ窓口、業務のシステム、受付、発送…etc.全てにおいて、お金を掛けずに何でもかんでも、自分でやった。

完成度のレベルは低いかも知れませんが、とにかく無駄にお金を掛けたくない、そんな余裕もないので。でも、今まで色んな会社を放浪してきた経験のお掛けで、それなりに何とか形になりました。

令和2年7月17日にウェブショップとしてプレオープンからスタートしました。

そして、1年が経ちました。

当初はボード友達やSNSの昔からのフォロワーさんが依頼をくれました。前例の無い専門店で何をどうやって良いかも手探り。

とにかく今の私の手(技術)一つで出来ることを確実な形でやってみよう!

お客様が何を求めているか聞いてみよう!

私にとって場数も必要だから、広告費で無駄に多額なお金を使うより、料金を安くして沢山のお客様へ還元しながら経験値を増やそう!

対応したら、必ず感想も聞こう!アンケートなら言いにくいことも言えるかもと、全てのお客様へアンケートへの回答をお願いした。

当然、認知度のないお店で最初は数点の依頼…でした。

依頼は増えるかな?大丈夫なのか?やってけるのか?怖いお客さん居ないかな?

…と思いながらも少しずつ、SNSや少ない広告費で気づいてくれたお客様から依頼も増えました。出来るだけ断らずに何でもチャレンジしてやってみようと受けて来たので、時には全く割に合わずにマイナスになることもしばし。

1枚…また1枚…1枚と、リペアしてはお客様へお返しして。

私はこの仕事を「修理してくれて、ありがとう」だけの仕事だと思っていました。

ところが…

「こんなに綺麗になって感動しました!」

「素晴らしい出来!」

「完璧な修理に感謝してます」

「諦めてたのにまた着れてホント嬉しい」

思っても居なかった感謝の言葉を沢山かけていただけました。


こんなに喜んで貰えるとは予想外でした…

ウルウル(:_;)心から嬉しかったです。

純粋に人に感謝される良い仕事だなと、思えた瞬間でした。

ひとりで、大変でしたがお客様と直接(公式LINE)お話ししながら、「お気に入りでもう売ってないウェアなのに」「こんな滑りして破れて!」とか「アイゼンでやらかして!」「海外で買ってどこにも頼めず」「命を救われたウェアでまだまだ着たくて」「このウェアじゃないとダメで」「メーカーの修理窓口で断られて…」などなど。

沢山のコアなスキーヤーやスノーボーダーの皆さんと修理の話しばかりでは無く、雪山の話しなど冗談を交えてやり取りすることが、とても楽しくて楽しくて。

気づけば依頼件数が100件を超えたところで、不安も自信に代わりました。

まだ1年ですが、リピーターのお客様もとても多く、1着依頼して出来栄えを確認して、また2着3着とまとめて依頼くださる方や新品の下げ札が付いたままのウェアを託してくださる方も多数…。SNSやクチコミなどで北海道~福岡まで色々なところから依頼がいただける様になりました。

信用していただけていることへ、確実な技術でお返しなければと緊張しながらも、やり甲斐を持って楽しく仕事させて貰ってます。

そして、気づけば 1年で修理したブランドは30ブランドを超え。

phenix・ARC'TERYX・Teton Bros.・SALOMON・Haglöfs・INHABITANT・PeakPerformance・Sweet protection・BURTON ak ・686・X-niX・mountainrockstar・Quiksilver・VOLCOM・Armada・NOMADIK・MAMMUT・THE NORTH FACE・DESCENTE・Patagonia・ESTIVO・mont-bell・FORMULA・MIZUNO・241 TWO FOR ONE・AK4577・PICTURE・RUTT MOGUL・OAKLEY・ROME SDS などなど…(思い出した順)

私が思っていた以上に、お客様はウェアへの思い入れと拘りが遥かに高く、故に期待に答えることで、ストレートに気持ちを返してくださいました。今までに大きなトラブルになることも無く、感じの良いお客様ばかりで救われる思いです。

ぁ!…1件、不備がありました。でも、お客様からのとても温かい言葉添えのあるご指摘により、やり方を変えたことがありました。何かあっても何も指摘して貰えない事が一番寂しいことです。

直接、言って下さった事に本当に感謝しております。

今後も真摯に自分の技術に奢ること無く、もっともっと良い技術でリペアだけでは無く、良いウェアが作れるとこまで頑張りたいと思います。

そして、またあの腕の良いベテランの技術者の皆と良いウェアを作りたい。

良い物が作りたいと、皆であーでもない、こーでもないと、話しながら毎日毎日ディスカッションして盛り上がった日々が懐かしいです。

また、いつか一緒に良い仕事がしたい。

そして私は「このウェア直してください」と言ってくださる方が居る間はこのお店を続けます。

…まだまだこのお話は続きます。

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