乳がん体験記⑥~ドタバタ告知日Ⅱ~
そんな訳(詳しいいきさつは前記事参照)で、
以前からの用事をキャンセルできずに、告知日を同じ日にしてしまった私。
午後2時からの診察予定が大幅に遅れ、出発予定時刻の午後6時過ぎになりました。
一緒に行く人に、遅れることを電話で伝えたものの、「新人なのに遅れてしまった・・」ことで頭がいっぱい。
多分、ほぼ乳がんであることに間違いはないだろうけれど、比較的軽いものだと思いたかったのだと思う。
…脇の下にしこりがあると感じて受診した時点で、楽観視はできないはずなのに(^^;)
この辺りは、私の楽観的というか、考えなしの部分なのかもしれない…。
◆◆◆◆◆
午後6時10分、診察室に入る。
医師(超クールな女医さん)「遅くなってしまってごめんなさい。今日、伝えても大丈夫ですか?」
私「は、はい」
医師「え~っと、検査の結果ですが、あまりいいお知らせではないです。
左胸の組織診の結果、やはりガンでした。全体に広がっているので乳房は残せません。乳頭も残せません。脇の下のリンパにも転移しています。あと、胸骨の内側のリンパにも転移しています。」
私「はぁ…そうですか」
クラクラした。それまで、遅刻について頭の中でウニャウニャしていた思考がいっぺんに止まり、真っ白になった。
医師「これからの治療方針についてお話したいですが、・・・時間大丈夫ですか?」
私「大丈夫です。それどころじゃなくなりました!」←アホ
この時点で時間は18時20分。
もうそんなことどうでもいい。
医師「あとは、他の臓器に転移しているかどうかを検査します。手術するとしたら、全摘です。リンパも取ります。温存はできないですし、同時再建は放射線治療をするため無理です。」
表紙に花の絵しかない冊子を開きながら説明をしてくれる。
メモを取るけど、私の頭がついていかないのか、先生のしゃべるスピードが速いのか、全くメモが取れない。
夫が質問するも「今、それを話しても混乱するので、後にします」とピシャリ。(夫、少しムッとしたらしい)
その時はあまり理解できていなかったけれど、私のサブタイプは、
HER2陽性(非ルミナール)というもので、ホルモン受容体は陰性、HER2は陽性というタイプだそうだ。
このタイプはホルモン療法はせずに、抗がん剤と抗HER2療法を行うのが標準治療。
ステージについて訊いた所、まだ全身に転移しているかわからないけれど、この状態でとどまっていればステージはⅢ。(a,b,cについては言及せず)
医師「治療ですが、手術の前に抗がん剤治療をするか、手術後に抗がん剤治療をするかを選べますが、どちらがいいですか?」
夫「違いはあるんですか?」
医師「結果としては大きな違いはありませんが、術前に抗がん剤治療をすることで、その薬が効くかどうかがわかります。再発の場合の参考になります。冊子には『しこりを収縮させて切除範囲を小さくする』と書いてありますが、これはないので考えないでください。どちらにしますか?」
私と夫「どっちにしても同じなら、術前の方がよさそうだね~・・・」ということで術前に抗がん剤治療と抗HER2治療を行い、来年年明けに全摘手術、その後抗がん剤(か抗HER2治療)の続きと放射線治療というスケジュールになる。
医師「ただし、他の臓器に転移があった場合は、このスケジュールは白紙になります。来週PET-CTとMRIと心電図、心臓エコーを行ってください。」
はぁ・・・、そうですか~。
抗がん剤については、私の場合はEC療法と言われるものになるそうだ。
アルファベットは薬剤を示します。
医師「ちなみに、今度出産を予定していますか?抗がん剤治療を行うと、閉経に向かいます。出産を希望される場合は対応をします」
私「いえ、大丈夫です。考えていません。」
医師「抗がん剤は副作用が強く出る症状がいくつかあります。吐き気などはいい薬が出たので、以前よりもだいぶ抑えられるようになりました。ただ脱毛があったり、手足にしびれが出る方もいます。」
私「髪の毛はやはり抜けますか?」
医師「抜けます。」(即答!)
私「そうですか~、いっちゃいますか~。やっぱりウィッグですか~」
夫「そっちゃえばいいし、そのままつけずにいればいいじゃん」
私(先生に)「こう言うんですよ、なんならバリカンで剃るのを楽しみにしているみたいなんです(^^;)」
先生、苦笑い。
医師「詳しいことは来週の検査の後、看護師から説明がありますので、いろいろ聞いてみてください。・・・今夜は眠れますか?眠れそうにないなら、お薬出しますけど」
私「多分、大丈夫だと思います。」
診察終了。
19時近かった。
会計を終えて、夫に車で送ってもらう。
◆◆◆◆◆
車内。
私「いや~、参ったな~」
夫「どっちにしたって、治療するしかないんだから。」
うちの夫は、やることにあまり感情を入れない。
いい意味で、3年前、この性格に助けられた。
自分がガンと言われたのに、帰宅したら「いや~、参った参った、ガンだってさ~」と言うので仰天した。
その後も、感情的になることもイラつくこともなく、検査のための食事制限もこなし、手術をし、リハビリをした。
きっと、夫が取り乱していたら、私も混乱していたかもしれない。
今回も「なっちゃったものはしょうがないんだから、治すしかないでしょ」というスタンスを変えない。
わかっていたから、そのぶれないスタンスはありがたいと感じている。
ただ・・・
私「親や子どもに言うの嫌だな~・・・(涙)」
年老いて、私に頼ることが多くなった親に、私がガンになったなどいうのは正直辛かった。
それ以上に、子ども達に言うのがつらかった。
夫の時は、もう少し子どもが幼くて、あまりよくわかっていなかった。
そして、私が普通に接していれば、子ども達は動揺することもなかった。
しかし、今回は違う。
私の体調が悪くなるだろうし、そもそも見た目が変わる。
上の子は、「ガン」というものがどういう文脈で語られているかを何となく知っている。
子ども達が受け止められるだろうかが心配だったし、子ども達の反応が怖かった。
夫「そんなこと言っても、治療中は子どもにも協力してもらわないといけないし、お母さんが体調が悪くなることを理解していないと不安になるでしょ。親にだって、協力してもらうことが絶対増えるんだから、言わないなんて無理だと思うよ」
それはそう。
正論だ。
だけど、反応が怖いのだ。
悲しんだり、取り乱されるのが怖いのだ。
ひとしきりちょっと泣いた後、会場近くに着いたので降ろしてもらう。
しかし、こんな時に、人と会って平然としていなければならないなんて…。
つくづく自分は見栄っ張りというか、何というか…。
◆◆◆◆◆
自分にとってはどでかい出来事があったとしても、周りからみれば、
「ただの遅刻」である。
こういう席で事情も言いにくいし、そもそも親や子どもにも言っていないのに、まだそれほど親しくない人には言いたくない。
どう思われようと、「すみませんでした」で通すしかない、と決めていた。
しかし、自分で決めたとは言え、気持ちの整理がついていないこんな時に、なぜこんな賑やかな場所にいなければならないんだろう…(^^;)
謝りながら席に着き、普通に過ごす。
お酒の席だけど、全然飲む気になれない。
周りと少ししゃべりながらも「これからの活動にも影響があるかもしれないから、話しておいた方がいいのかな・・・」と思うようになった。
係の集まる回数はそう多くない。
ただ、一人一人が結構大変な仕事も多いので、私が出来なくなると、他の人に迷惑がかかる可能性がある。
ただ、今、ここにいる私は「全く何も問題がない」状態である。
「かもしれない」っていうことだけで、何もなかったら「ちょっと大げさな人」になってしまう…。
この微妙な感じ、どうしたらいいのだろう…。
隣にいる仲間にまずは相談してみようかな…。
リアクションは多少怖いけど、今日話さないと面と向かって話すのがずっと先になってしまう。
勇気を出して話しかける。
今日遅れた理由は、病院に行っていたこと。
さっき言われたばかりなのだけど、1年から1年半くらい治療が必要になること。
どうなるかわからないけど、もしもみんなに迷惑をかけたらどうしよう…と考えていること。
実は私、相談するのが苦手です。
目上の人に相談するのは苦にならないのだけど、親しい友達にもあまり相談しない。
大変なことがあっても、ずっと後で「こんなことがあったんだよ~」と半分笑い話や武勇伝(?)っぽく伝えて終わりたいのだ。
けれど、そんなことは言ってられない。
言わないことで迷惑をかけてはいけない。
相談した彼女は、びっくりしていた。
でも、私の身体や状況を理解してくれた。
このメンバーはみんないい人だから、誰に相談してもきっと同じように気遣ってくれるだろうけど、最初に彼女に話して良かったと思った。
しっかり者の彼女は「全員にじゃなくてもいいけど、同期の係の人には言った方がいいと思う。全員が集まる機会があんまりないし、これからはメールなどのやり取りで進んでいく。メールで伝えるより、直に伝えた方が絶対いいと思うよ。」と言ってくれた。
そんな流れで、同期の他のメンバーと、直の先輩と、昔からのママ友さんには病気の名前を言わずにこれから起こるかもしれない状況について説明できた。
みんなに気遣ってくれて、申し訳ないのとありがたいのと両方だった。
泣くことがなくて良かった。
◆◆◆◆◆
帰宅後、ずっと子どもをみてもらっていたのと、私の状況を心配してくれていたお義母さんのところに行く。
義母は、先に帰宅した夫から内容を聞いていたので、
義母「大変だったねぇ~。まぁ、だけど、あなた若いし丈夫だから、きっと大丈夫よ」と優しく言われて、我慢してた涙があふれだした。
もちろん、義母の前で泣くのは初めてだ。
ちょっとびっくりしたかもしれない。
何話したか覚えていないけど、ひとしきり話して、涙も止まったので自分の家の方に戻る(※同居です)。
子ども達はすでに寝ていて、夫がリビングにいた。
いつもの光景。
係の人たちに話せたことなどを少ししゃべって、寝た。
ドタバタな1日だった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
これを読んでくださっている方の毎日が、健康で豊かで幸せでありますように。
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