(今日の言葉7)中国古典に学ぶリーダーシップ:JALを再建させた時機を逃さないための心得!
皆さんは、中国の兵学書といえば、まず「孫子」を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、今日はもう一つの重要な兵学書「六韜(りくとう)」から、リーダーの心得をご紹介します。六韜は、戦略や政治、リーダーシップに関する教えが多く含まれており、現代のビジネスやリーダーシップにも応用できる内容が豊富です。
その中でも特に注目すべきは、
という教えです。この言葉は、リーダーがいかに時機をつかむかということの心得を記したものです。
1. 善を見て怠り
良いことや正しいことを知っていながら、それを実行しないこと。
2. 時至りて疑い
チャンスが訪れたときに、躊躇して決断できないこと。
3. 非を知りて処る
間違いや悪いことを知っていながら、それを改めないこと。
これら3つの行動は、リーダーが犯してしまうと組織の成長を妨げる要因となります。六韜は、周の文王・武王と軍師の太公望(呂尚)の対話を中心としてまとめられています。この心得から、次のことが言えます。
リーダーシップの重要性
太公望は、リーダーが正しい行動を取ることの重要性を強調しました。リーダーが善を見て怠ると、組織全体がその影響を受け、成長や成功が妨げられます。彼は、リーダーが率先して正しい行動を取ることが、組織の健全な発展に不可欠であると考えていました。
迅速な決断の必要性
戦略的な機会が訪れたときに、躊躇せずに迅速に行動することの重要性を説いています。戦場では、一瞬の判断が勝敗を分けることがあります。太公望は、リーダーが決断力を持ち、適切なタイミングで行動することが重要であると教えました。
問題解決の姿勢
問題や過ちを認識したときに、それを放置せずに対処することの重要性を強調しています。リーダーが問題を無視すると、組織全体に悪影響を及ぼし、最終的には大きな損失を招く可能性があります。太公望は、リーダーが問題解決に積極的に取り組む姿勢を持つことが重要であると考えていました。これは、企業などに不都合な事案があって、公表することが遅れることなども然(しか)りです。
現代のリーダーシップへの応用
この3つの心得に触れたとき、私は京セラを創業した稲盛和夫氏を思い浮かべます。KDDIの前身である第二電電を創業したり、経営破綻した日本航空(JAL)を再生させたりした事例が最も適切です。
稲盛氏は、大きな決断をする際、重要な経営哲学の指針の一つである
を繰り返し自問したそうです。第二電電を創業する際には「NTTに対抗する新しい通信会社を作って国民の電話料金を安くしてあげたい」、またJALを再生させる際には「顧客や従業員、ひいては社会全体がプラスになる」という「善」の想いから、稲盛氏は、怠らずに突き進んだのです。そして、この2社は、偉大なリーダーのお陰で、私たちの暮らしに欠かせない存在になっています。
リーダーは、「時機」を意識し、捉えることが何より大切なのです。このリーダーの心得が2200年以上前から色褪せることなく、現代に活かされていること自体驚きですが、リーダーは、勇敢に失敗を恐れず、正しい道を突き進む。そして、不都合なことがあれば、すぐに真っ向から向き合い、対処する。この至極当然のことがリーダーの基本であると、改めて感じた言葉でした。