【為政者の心得4】答えは、「管子」にあり。「義」の次は、「礼」に続く。
古代中国の思想家である管子は、統治の道において「義」に次ぐ重要な要素として「礼」を挙げています。彼の教えによれば、人民が「義」をわきまえることは統治の始まりに過ぎず、真の秩序と調和を実現するためには「礼」が不可欠です。
「礼」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、学校の授業での「起立」「礼」かもしれません。しかし、管子が説く「礼」は、単なる形式や儀式を超えた、社会秩序と人間関係の基盤です。
管子は、「礼」を普及させるために「八経」と呼ばれる八つの基本原則を提唱しました。では、「八経」とは、なんでしょうか。「管子」には、
とあります。これは、上下、貴賎、長幼、貧富の間の関係を規定し、それぞれに「義」「分」「等」「度」を求めます。これらの原則が守られることで、身分秩序が保たれ、争いが減少し、統制が可能となるとしています。これが礼の「八経」となります。
では、もし全ての人が「八経」を実践したら、どのような社会が実現するでしょうか。
「管子」では、
1 公正無私
君主は公正で私心がなく、全ての人に平等に接します。これにより、信頼と尊敬を得て、国の統治を強固にします。
2 忠信
臣下は忠実で信頼できる行動をとり、君主への従順さを示します。これにより、政治的な安定と協力が生まれます。
3 父の教え
父は慈愛と教育を通じて子を導きます。これにより、家庭内での教育と価値観の伝承が行われます。
4 孝悌
子は孝行と悌行を尽くし、家族への尊敬と愛情を示します。これにより、家庭の和が保たれます。
5 寛裕
年長者は寛大な心で年少者を導き、彼らの成長を支援します。これにより、社会全体の調和が促進されます。
6比順
年少者は年長者に従い、その指導を受け入れます。これにより、尊敬と学びの文化が育まれます。
7敦厚
夫は人情に厚く、妻を誠実に愛し、家庭を支える堅固な存在となります。これにより、家庭の安定が保たれます。
8 勤勉
妻は家事に勤しみ、夫に対して忠実であり続けます。これにより、家庭内の役割分担と協力が促進されます。
いかがでしょう。
現代社会は、共働き世帯が増加し、夫と妻との境界が薄れています。また、多様的な社会の進展も見受けられます。このあたりは、それぞれご家庭などの実情に合わせて、現代風に置き換えても良いかと思います。
しかしながら、これらの原則が実践されることで、社会は互いに尊重し合い、理想的な国づくりが可能となります。国を構成する人民たちがそれぞれの身分をわきまえ、秩序が保たれることで、社会的な混乱が起こらず、平和と繁栄がもたらされるでしょう。
今一度、私たちは、「礼」について再認識しなければならないと感じています。
徳川家康公の遺訓とされるものには、「人はただ身の程を知れ」との一文があります。これは、「礼」の精神を現代にも伝えるものです。私たち一人ひとりが自分の立場を確認し、それに応じた行動を取ることが、社会全体の調和と秩序をもたらす鍵となります。
管子の教えは、単なる古典的な理念に留まらず、現代社会においてもその意義を見出すことができます。私たちが日々の生活の中で「礼」を意識し、実践していくことが、より良い社会を築く第一歩となるのです。
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