【ディープかごしま】#19 カルデラ壁と湖の間に棚田が広がる美しき里「尾下(おさがり)」集落
(写真・文:SELF 編集部 かつ しんいちろう)
今回は、指宿の池田湖の湖畔にある尾下(おさがり)集落を訪ねてきました。今回で3回目の訪問です。
鹿児島はカルデラ県
地下のマグマが噴出して空洞になったところが陥没してできるカルデラ。カルデラはスペイン語で「大鍋」という意味です。鹿児島にいるわたしたちは実に大小多くのカルデラとともに暮らしています。
錦江湾の北半分は姶良カルデラ。南半分は阿多北カルデラと阿多南カルデラで構成されています。三島村があるのは鬼界カルデラ。鹿児島県はカルデラだらけの県なのです。
さらに、カルデラに水が溜まってできた湖もたくさんあります。今回ご紹介する尾下集落は、池田湖という九州最大(周囲15キロ、最大水深233メートル)のカルデラ湖の湖畔にあります。
尾下集落はイッシーくんの反対側
鹿児島県の人でも、ましてや尾下集落のある指宿市の人でも「尾下」に行ったことがないばかりか、知らない人も多いようです。
まずは、池田湖といえばイッシー。(笑)実在するかしないかではなく、いたらいいなということで。
今回、ご紹介する尾下集落は湖のちょうど反対側。池田湖の南東側にあります。指宿市山川利永という地名になります。
カルデラ壁の麓に広がる棚田
標高410mの鷲尾岳がカルデラ壁の頂上で、そこから延々と片道1車線の道を下っていきます。離合は難しいので少し広くなったところまで退避しないといけません。
下りきったところに、小さな集落が現れます。40戸くらいの集落で20戸くらいが現在居住しており、後は空き家もしくは週末利用などとのこと。静かな集落です。
一番下まで降りると池田湖です。まず一つ目の感動の風景が湖に接するところまで広がる畑です。普段、海の近くに住んでいるわたしからすると、水辺に隣接する畑は不思議な光景です。池田湖が淡水であり、穏やかな湖であるからなのでしょう。
水辺に行くと、透明度の高い水を見ることができます。
美しい棚田の背後に切り立った断崖
そして何と言っても素晴らしいのがカルデラ壁に向って連なる棚田です。棚田の間は危険なので、必ず地元の方に案内していただきましょう。地元の方でも先日踏み外して2mほど落ちたそうです。
棚田は、石垣をきれいに整備しないとすぐ草ぼうぼうになるので手入れが大変なのだそうです。さらに近年耕作放棄をする農家の方も増えているので、そちらも借りて稲作をしないと、あっという間に草だらけになってしまうそうです。
棚田は丁寧な手入れの賜物なのですね。
湖に向って鎮座している田の神さぁは、大きな笠をかぶっておだやかなたたずまいです。
新しい動きもある尾下集落
私が訪れた時には、集落の中心部にあった商店を地域おこし協力隊の方が地域住民の方同志や来訪者が交流ができるスペースにしようとリノベーション中でした。美味しいスイカをいただきました。
古民家を再生して、山羊が屋根に登れる家にしようと作業をしている若者もいました。自宅の作業が終ったら、隣を農家民泊にする予定とのことでした。完成が楽しみです。
今年から光回線も引かれ通信環境も整った尾下集落。まさにディープな場所です。指宿市街地から約30分という距離で、カルデラ壁と湖の間に広がる美しき棚田の絶景を見に尾下集落を訪ねてみてください。