【SELFの本棚】#015 マルチ・ポテンシャライト エミリー・ワプニック著
(文:SELF編集部 かつ しんいちろう)
小さなころに、私たちたちが大人たちから投げかけられた質問。「あなたは、将来何になりたいの?」
今では、私たちがこどもたちに聞いたりしている何気ない質問。(鹿児島ではテレビコマーシャルでも有名なフレーズ)
「何に」というのは、宇宙飛行士だったり、パン屋だったり、お医者さんだったり、既にある職業名を意味する。今ある職業が20年後にあるかどうかわからないのに、ある特定の職業に向って進めと呪文をかける。
ある職業に就くことに向けて、地道にコツコツと努力を行うことが美徳であるという前提に立った呪文。
それに対して、「マルチ・ポテンシャライト」という人たちは、様々なことに興味を持ち、多くのことをクリエイティブに探究する人のことだ。一つのことの探究者でないために、これまでは「あの人は何をしている人なの?」「職業不詳だよね。」と不思議がられる。というか不審がられる。
本書は、このマルチ・ポテンシャライトについてTEDトークで語った方の著書だ。
フリーランスで活躍する人の中には、こんなマルチ・ポテンシャルな人たちが少なくない。マルチ・ポテンシャルがゆえに、組織の中で「ある決められたタスクをこなす」という職業に耐え切れず、独立する。そして不審がられる。「何をする人なのだろう?」と。
「天職」も探すものではない。やってみて、結果的に後から(死に際に)、「これが転職だったのかも」と思うものだ。
もちろん、一つの道を突き進むのもいい。そうでなくても、関心のあることに自分のチカラを発揮して、それで対価がもらえれば最高!そんな感じでいいと思う。
かくいう私もいろんな仕事をしているので、職業を説明するのが非常にめんどくさい。「大学教授です。」というと、みなさん一様に理解のカテゴリに整理され安堵した顔をするが、私のなかでは大学の仕事は三分の一くらいだ。企業のコンサルティングも、高校の支援も、行政機関の仕事もしている。
これからは、ICTの活用と働き方の変革で複数の仕事=複業の機会が増え、1社で一つの仕事しかできずに才能を持て余していた人たちが解放される。そうした人たちの才能を活かす企業が成長する。そんな可能性を感じる1冊です。