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【ディープかごしま】#20 公民館を使って集落がバルを経営する挑戦 バルサキバル
(文・写真:SELF編集部 かつ しんいちろう)
「公民館って、常会やその他の集まりを合わせても使われているのは月に3日程度。建物って使っていないと風が通らなくて痛んできたりカビ臭くなるでしょ。もったいないなーと思って。」
「それと何より、前例がないからできないのではなく、前例を作ることを楽しむ集落にしたいなと思って。」
目を輝かせながら話すのは、奄美市の北部にある崎原集落の区長、野崎末雄さん。
今回は、公民館を集落が経営する飲食店にするという取り組みを紹介する。
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集落での飲み会でアイデアが
集落に住んでいる何人かが飲み会の席で、「集落に酒が飲める場所が欲しいね。」と話していたのが、事の発端。そこから話が広がり、食べたり飲んだりしながら人と人との出会いの場ができるとイイね。ということで飲食店というスタイルにつながっていった。
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たまたまメンバーの中に飲食業を経験している人がいたので、アドバイスを聞きながら保健所から営業許可を取得。アイデアが実現することに。
多くの集落の公民館は市の所有だが、この崎原集落の公民館は、一部市の助成も受けながら地域住民が自分たちで建てた建物なのだそうだ。
集落の印象が変わった
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以前の崎原集落というと奄美空港から北へ向って観光名所の「あやまる岬」に行く途中の集落。特に何かあるわけでもなく、いわゆる通り過ぎられる集落だった。
今は、写真のように倉庫の壁に絵が描かれ、土日になるとバルの営業を示すのぼりが立つ。活気がある集落として島内でも噂が広がってきている。
全員が全員賛成するわけではないのが地域
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地域活動のプロジェクトで難しいのは、合意形成。企業だと会社の方針に沿って組織的に活動するのが当たり前だが、地域だとそれぞれの思いがあって、難しい。
例えば、街灯を1つ付けるのでも歩く人にとっては明るくなって安全になるけれど、前の家にとってはまぶしくて付けて欲しくなかったりする。どちらも正しく、でも、どうするか決めないといけない。
バルサキバルでも、集落で提案した時に集落全員が賛成というわけにはいかななかったけど、賛成多数でやることになったのこと。しっかり運営していくことで、ジワジワと賛成者が増えて行けばいいと私は思う。
人々がつながり合う場としての公民館
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美味しい手打ちの十割蕎麦に、集落で作った野菜を米粉と米油を使って作った天ぷら、そして自家焙煎のコーヒー、それぞれのメニューのクオリティの高さにも驚く。
バルなので、ビール(ハートランド)もセレクトされた日本酒もある。
音楽も本格的なアンプとCDプレーヤーを設置して、雰囲気に応じてジャズやクラシックなどがかかる居心地の良い空間になっている。
そこではⅠターン、Uターン、島の人が自然に隣のテーブルと繋がり、新しい事が始まることもあるらしい。
これからも挑戦は続く
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「これまでやったことが無い。」「何かあったらどうするの?」こうした声もありながら、やってみることで苦労しながらも楽しい。なによりそれを見ている若者たちが、自分もやってみようと思い、実際に何かを始めるようになったことが嬉しい。そう末雄さんは語る。
わたしは、これからも、この崎原集落の素敵な挑戦を応援していきたいと思う。
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