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薩摩会議 特別番外編 ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう 第二部:「港街」のグランドデザイン Go! Kagoshima 門田晶子氏(前編)

薩摩会議特別番外編として開催した「ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう」というシンポジウム。第2部はGo! Kagoshima 代表の門田晶子さんと、SELF監事坂口修一郎との対談です。

天空の森 オーナーの田島健夫さんとの第1部はこちら👇

坂口:県が出している資料「本港区エリアまちづくりグランドデザイン」の中でも、サンフランシスコ・シンガポール・シドニーなど、海外の様々な事例をお金をかけてリサーチをしているんですね。この回では、僕の知る限り最も海外経験のある門田さんと共に(21年アメリカに住んで鹿児島に帰国)、それが本当に反映されているかを検証してみたいと思います。

「水のある風景を楽しむ」という文化が当たり前

門田:今日は「住みたくなる 海や水辺のある街」というテーマでお話できたらと思います。私は、海はもちろん、川や池も地域の財産だと思っています。海外に行くと、水辺にはホテルやショップ、エンターテイメント施設、レストランやバーがあって、「水のある風景を楽しむ」という文化が当たり前にあります。

鹿児島に戻ってきて一番「あれ?」って思ったのが、ビーチタウンがないということです。せっかく、鹿児島って水辺だらけじゃないですか。海に囲まれていて、大きな甲突川という川も流れていて。たとえば、川沿いには豪華なマンションが並んでいて、レストランやバーがあって。「みんなが楽しめる川」とか「みんなが楽しめるビーチ」。そういう風景を私は想像するんですが、それが、ない。防波堤のテトラポットばかりで、海沿いがあまり美しくないなというのが印象に残っています。

帰ってきた頃、行政の方にもかなり質問したんですが、口を揃えて返ってきたのが「台風がくるからねぇ」でした。でも、たとえば鹿児島市の姉妹都市であるマイアミはハリケーンが毎年当たり前にくる土地。ハワイもそうですよね。一等地で海を楽しんだり川を楽しんだりっていうエリアには災害があるものだと思います。なので、鹿児島だけが台風が来るから海の楽しみ方がわからない、というのは少し違うなと思います。

パリ・プラージュ

門田:では、ここから海外の事例を紹介していきますが、最初は「パリ・プラージュ」です。パリにはセーヌ川という大きな川があり

ます。その川沿いの様々な場所でイベントが行われていくんですが、なんと1ヶ月限定で人工砂を運んできて、ビーチを作ってしまいます。パリのど真ん中で水着を着た人たちが日光浴をして、海っぽい楽しみ方をするというのが名物イベントになっているんですね。

またこの期間は、川の上にこのような物を浮かべて、プールをつくって市民が楽しみます。こういう事例を見るとワクワクするじゃないですか。パリのような大きな街でもこれができるんですよね。

オークランド

門田:次に、ドルフィンポートのエリアを見て、すごく似ているなと思ったのがニュージーランドの「オークランド」です。一度仕事で行ったときに「今度来るときはボートを出すから、ゆっくり週末は楽しみましょう」と気軽に言われてビックリしたんですが、後から調べてみると、人口一人あたりのボート所有者が世界で一番多いんですね(2014年時点で11人に1人は持っている)。なので、時間があったらボートを出して、海に浮かんでレジャーを楽しむというのが文化になっています。なので、オークランドも湾になっているんですが、本当にたくさんの船が浮かんでいて、一方鹿児島に帰ってくると、錦江湾には船が全然浮かんでいない。それが私には異様に思えました。

これがダウンタウンのエリアなんですが、何となくドルフィンポートエリアに地形が似ていませんか?ここにはレストランやバー、ホテルやミュージアムが並んでいて、仕事で行くと夜はこの辺のワインバーで海の眺めを楽しんでいました。古い帆船が浮かんでいて、まさに「港街」。市民も観光客もここをめがけて行くんですが、ドルフィンポートで実現可能な街ってこんな感じかなと思います。

坂口:シドニーも近い街並みがありますよね。あのオペラハウスも、海から見るとライトアップもしてすごく綺麗なんです。海からの視点を大切に、見せ方を意識して作られていると感じます。

サンフランシスコ

門田:次は県の資料にも出ていた「サンフランシスコ」です。私は近くに住んでいたのでよく行ってたんですが、ここはフェリーターミナルビルですね。街から見ると海のすぐ目の前。建物自体は築124年とかなんですが、大切に大切にリノベーションされてきていて、今はこの場所がマーケットプレイスになっています。カリフォルニアという地域の食の豊かさを誇示するような、素晴らしいマーケットです。

ファーマーズマーケットはもう20年近くなると思いますが、私も住んでいた頃には通っていました。サンフランシスコは食の発信源のような街なので、ちょっと尖った食材もあったり、きのこ専門店やチーズ専門店があったり。「食の宝庫 サンフランシスコ」の魅せ所のような場所が、海のすぐ目の前にあります。外のテラスではオイスターを食べることができたり、海の目の前ならではの楽しみ方もあって、ここは鹿児島でも真似したいところですね。

マイアミ

門田:いよいよ話は核心に入っていきますが、次は鹿児島市の姉妹都市である「マイアミ」です。私は鹿児島市民の親善訪問団員として何回か行きましたが、マイアミは海のある港街として素晴らしいお手本になります。そんな街と姉妹都市になっているので、お互いに交流しながら、街づくりも考える機会にしていくといいなと思っています。

ここも舟を持っている人たちがヨットハーバーに自分の舟を置いていて、時間がある時にはレジャーを楽しむ素敵な暮らしをしています。見ての通り海が近いですよね。つい先日鹿児島に台風がきたときも、マイアミにも大きなハリケーンがきて、大変だったみたいです。台風が来るからと言って、できない理由にはならないということですね。

また、鹿児島は「アジアのゲートウェイ(玄関口)」を標榜し、上海・香港・ソウルなどアジアから見たら東京よりも鹿児島が近いと言っていますが、まさにマイアミは、ヨーロッパから近く、中南米との架け橋として本当に機能していて(中南米の企業の本社がマイアミにあったり)、加えて歴史的にキューバからの移民が多く、6割近くの人が外国生まれとなっています。今でもどんどん移民が増えていっていて、本当にカラフルなんですね。様々な文化・背景を持った人が住んでいて、スペイン語圏からの移民が多く、市民の8〜9割の人がスペイン語を話せます。

そして、マイアミはクルーズ船でもすごく有名です。こんな感じで16〜20隻ぐらい停まることができます。1隻につき4,000〜5,000人だとすると、1日に人口が何万人と一気に増えますが、その人達がマイアミの街に出ていくインフラも整っています。クルーズ船についても世界トップクラスの街ということで、視察させていただきました。鹿児島でもクルーズ船をどういう風に捉えればいいのかと言った時に、非常に高いレベルのお手本ではあるものの、こんな形があるというのを見せてもらいました。

坂口:これは聞いた話ですが、クルーズ船「飛鳥Ⅱ」の方が「錦江湾に入ったときの桜島をのぞむスケール感は、世界中見渡してみてもここにしかない絶景だ」と高く評価して下さっていたそうです。鹿児島の持っているポテンシャルは、改めてすごいのだと思います。それを我々は自覚しなければいけませんね。

(続く)


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