【SELFの本棚】#49 資本主義の次に来る世界 ジェイソン・ヒッケル著
(文:かつ しんいちろう)
能登半島の大きな地震、羽田空港での航空機事故、北九州での大きな火災など波乱の幕開けとなった2024年。心がザワザワする年のスタート。
今年最初にお届けするのは、ジェイソン・ヒッケル著の『資本主義の次に来る世界』。このタイトルは、決して新しくない。1970年代初頭に日本では高度経済成長期が終り、そのひずみが社会のあちこちに表れてきた。日本だけでなく、GDPという生産高指標を背景により多く作りより多く消費することに疑問が投げかけられてきた。
しかし、「成長」こそが人類の励みであるという宗教にも似た思い込みは私たちの考え方を支配し続けている。
プラネタリー・バウンダリーという人類が生存できる地球という惑星の活動領域とその限界点を超えつつあるということを聴いても、SDGsでさえもDevelopment(開発)という呪縛から逃れられない。
SELFではこれまで地球環境の危機について学んできた。『ドロー・ダウン』という著書を通じて、温暖化対策に何が有効かも学んできた。本書でも第一部では成長の限界を裏付ける様々なストーリーを復習できる。
第二部では、次に来る社会に向けての提案がなされている。大量消費を止めるために、①修理をして使う②広告を減らす③所有権から使用権へ④食品廃棄を終わらせる⑤生態系を破壊する産業の縮小などだ。
目指すことを蓄財と消費とから「幸福度」と「人生の有意義さ」へシフトするためにシェアやコモンズの割合を徐々に増やすことが有効だとしている。
考え、語ることから実践する時期にわたしたちは来ている。そのことを真剣に考える年の初めに読んでいただきたい1冊である。
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