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「インボイス制度」はクールジャパンにどう関係してくるのか

『「機動戦士Zガンダム」でエマ・シーン役を演じた声優の岡本麻弥さんがインボイス制度中止を訴えた。クールジャパン崩壊の危機』といったような内容のことがニュース記事になっており、SNSにもトレンドワードとして挙がっていました。


ただこれを見ても、「インボイス制度ってどういうもの?」「なんでインボイス制度があるとクールジャパンが危ないの?」と思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。

漫画・アニメの業界で働いている人ならともかく、個人の楽しみとして漫画・アニメを享受している側だとなかなかこのへんは伝わりづらいかもしれませんね。

なので今回は「なぜインボイス制度と日本が世界に誇れるクールジャパンの一端、“アニメや漫画”が関わってくるか」ということを見ていきたいと思います。


まず「インボイス制度」

そもそも「インボイス制度ってなんぞや?」というところです。言葉だけ聞いてもなんだかよく分かりませんよね。

「インボイス(invoice)」という英語は「送り状」という意味らしく、明細書や請求書などを示すものらしいです。……と、言われてもこれじゃどういう制度なのか想像がつきませんね。

「インボイス制度」というのは分かりやすく言うと、「個人事業主やフリーランスでこれまで消費税納税が免除されていた人が消費税を支払わないといけなくなった制度」というものです。本当はもっと細かいです。ですが、とりあえず今は「フリーランスの方がこれまでより多く税金を納めないといけなくなった」みたいなニュアンスで思っておいてもらえればいいです。

「消費税を納めるのは誰でも当たり前じゃないの?」と思われるかもしれませんが、収入が1,000万円未満の個人事業主はこれまでこのへんが免除されてきていました。取引先から事業主へは消費税も込みで支払われるのですが、その消費税分もそのまま収入になっていたのです。

これ、なんで免除されていたかと言うと、細かい消費税の計算だとかに時間を費やしたりするのは個人単位だと大変でしょうということで、「小さい事業者にも頑張ってもらいたい」という国からの一種の支援だったわけです。

これがインボイス制度が始まると、「税金の支払いも多くなる」「消費税の計算もしなければいけなくなる」ということで、ただ収入が減って仕事の時間が多くなる、みたいな感じになるのです。

実際のところはもっといろいろあるのですが、今回「インボイス制度」についてはこのくらいにとどめます。気になった方は「インボイス制度」を調べてみてください。


漫画・アニメ業界の現状

さて、クールジャパンの中核を担っていると言っても過言ではない漫画・アニメですが、その業界で働いている人というのは実は個人事業主が多いです。

アニメーターの方はフリーランスが多く、いろんなスタジオのいろんな作品を掛け持っている方はたくさんいます。

漫画家、そしてそのアシスタントなども個人事業主にあたります。出版社と“契約”はしているものの社員というのとは違うので、毎月決まった給料が支払われるわけではありません。原稿料、コミックスが売れた分の印税などが支払われます。アシスタントへの給料もそういった漫画家さんの収入から払われます。

ただ、漫画家さんによっては会社という形態にしてしまっている方もいるので、そこに勤めるアシスタントさんであれば「社員」という形になるかもしれませんね。ですがアシスタントさんもいろんな作家さんを掛けもちでやっている方もいるので、そういう人たちはやっぱり「フリー」ということになるでしょう。


それと、声優さん。上記のニュースにあった岡本麻弥さんもそうですね。「声優って事務所に所属していたりするんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょうね。

確かに多くの人は事務所に所属しています。ですが、それは「社員」というのとは違うのです。事務員とかマネージャーとかは社員かもしれませんが、声優さんたち本人は個人事業主ですね。毎月毎月決まった時間働いて安定した収入が得られるわけではありません。

仕事のない時間にはアルバイトなども入れていたりします。


まぁこういったことから漫画やアニメに関わる仕事をしている人たちは「インボイス制度」の影響を受けるわけです。


今回上記のような訴えが起きたのは、若い人たちが業界からいなくなる、業界へ入ってこなくなる、ことを懸念してのことでした。

若い時分にはこれらの業界では本当に稼げません(実際は年齢関係ないですが)。そこへきてさらに収入が少なくなるとなれば、これらの働き方を断念する人は多くなるでしょう。

どんなに夢を持っていても、生きていけなければ続けられませんから。


インボイス制度は10月から始まります。ことは漫画・アニメ業界だけの話ではありません。

負担が増すのは事業主など。“税収入”という形で収入が増すのは国のみ。「国のお金が増えれば国民へ返ってくるものもあるんじゃ……」という考え方もありますが、なんかちょっと……どうなんですかね。

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