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【写真ストーリー】僕だけの世界

「もう帰って」
そう言って彼女は無理やり僕の体を押した。背中の奥の方から、部屋の鍵が閉まる音が鳴り響く。背中に出来た服のシワはきっとまだ残っている。
振り返る事は出来なかった。どうしてこうなってしまったのか、思い当たる節はある。ある。沢山ある。沢山あって一歩踏み出すごとに、僕の姿勢はどんどん崩れる。あぁ、雨が降っていた。体に雨の斑点が出来る。いつの間にか屋根の無いところまで来たらしい。まだ彼女のアパートはすぐそこだ。今から戻ってやっぱりやり直そうって…言えるわけない。重い足を一歩ずつ、前に踏み出す。僕の体重を支えている杖と化した傘も、きっと心の中で悲鳴をあげているに違いない。
「ごめんな」
服の色が変わっている。この雨はきっと今日は止まない。街の中で僕だけが、違う世界にいるかのように思える。暗い、狭い、僕だけの世界。背中に出来た服のシワもいつの間にか伸びきってしまった。


写真提供Kanzaki Zero

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