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草津温泉の泉質はキケン!?知られざる中和事業がすごい!

立春もすぎて、暦の上ではもう春とのことですが、まだまだ寒い日が続いていますね。
こんな寒い時期に気持ち良いものと言えば……そう、温泉です!

関東の温泉で、知らない人はいないほど有名な「草津温泉」。
湯畑にレトロな温泉街、硫黄の香り漂う熱めのお湯が特徴で、今や若者からお年寄りにまで人気の観光地です。

今回はそんな草津温泉の、いろんな意味で「ヤバい」泉質に注目!
温泉の力強い効能とその理由、そして、草津のお湯による知られざる大問題を解決した「中和プロジェクト」についてご紹介します。

草津温泉に行ったことがある方もない方も、この記事を読めば、今まで知らなかった草津温泉の一面が見えてくるかもしれません!ぜひ最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

古くからの「湯治場」草津温泉は何に”効く”?

湯治と草津の長~い歴史

草津温泉は、いまでこそ観光地として有名ですが、もともとは「湯治場(とうじば)」として全国に名を轟かせた温泉地です。
湯治とは、温泉地に長期で滞在して湯につかり、自己治癒能力を高める、昔から日本で行われてきた病気やケガの治療法のこと。

草津温泉の歴史は古く、諸説ありますが、開湯は古墳時代までさかのぼるそう!
鎌倉時代にはあの源頼朝が入浴したり、戦国時代の兵士たちが戦の傷をいやすために入浴したという言い伝えもあります。

さすがはよく”効く”と言われる草津温泉。かつては観光地というより、保養所や病院のような存在だったんですね。


草津温泉人気の秘密は”効能”にあり!

草津温泉が昔から多くの人に愛される理由、それはなんといってもその高い効能にあります。
「日本三名泉」や「日本三大薬湯」にも数えられているほどで、古くから「恋の病以外効かぬ病はない」との言い伝えまであるそう。(ちょっとロマンチックですね!)

(一社)草津温泉観光協会の公式サイトによると、草津温泉には以下のようなたくさんの効能が期待できるようです。

~草津温泉(湯畑源泉)の効能~
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節の強張り、打ち身、挫き、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、動脈硬化症、切り傷、火傷、虚弱児童、慢性婦人病、糖尿病・高血圧症など

※引用:(一社)草津温泉観光協会公式サイト「泉質、効能、正しい入浴法

湯治場としても納得の効能の数々ですね。草津のお湯は、古い角質を溶かしてお肌をツルツルにし、殺菌力にも優れています。
全国の数ある温泉の中でも支持されているのは、やはり草津のお湯の実力を肌で感じた方が多い、ということなのかもしれません。


取り扱い注意!?泉質は○○並みの強酸性!

草津のお湯は、刺激強め。

昔はケガや病気の治療に使われた草津温泉のお湯は、効能が強い半面、肌がピリピリとして、刺激が強めなのも特徴です。何を隠そう、草津のお湯は国内の温泉でもトップレベルの強酸性で、pHは2.1。なんと、お酢やレモン汁並みか、それ以上の数値です!

「それって大丈夫……?」「皮膚が溶ける!?」と思われた方もいるかもしれませんが、ふつうに入浴するぶんには問題ありません。とはいえ、浸かりすぎは皮膚の乾燥を招いたり、湯あたりの心配があったりするので、過度の入浴には注意が必要です。

草津では昔から「めぐり湯はからだに良くない」などと言われていたそうですが、それには強酸性の泉質が関係していたようですね。


効能以外もヤバかった…薬湯が生む「死の川」問題

ところで、草津温泉で湧き出た強酸性のお湯は、その後もちろん川となり、下流へ流れていきます。
そうすると、ふつうの河川では考えられないような大きな問題が発生します。それが「死の川」問題です。

温泉水の影響で強い酸性となり、硫黄分も含む川は、流域の住民の生活や自然環境にさまざまな悪影響を及ぼしていました。
強酸性の水は飲料水として使えない上、魚は生息できず、金属の釘やコンクリートまでをも溶かしてしまうので、護岸や橋梁などの河川構造物もつくることができません。

透明できれいに見えるのに、魚一匹いない川……。なんだか少し不気味ですね。

これらのことから、”薬湯”草津のお湯が流れ込む吾妻川はかつて、皮肉にも「死の川」と呼ばれることもありました。


知られざる「死の川」中和事業がすごい!

そもそも、「薬湯」にも「死の川」にもなる強酸性の温泉が草津で湧くのは、近隣の活火山である草津白根山や本白根山の影響です。火山活動により発生した硫黄成分が、雨で水に溶け出すことで、酸性の温泉や川になっているのです。

そこでこの「死の川」問題を解決すべく考えられたのが、世界初、川の「中和事業」です!

昭和39年から24時間365日、今このときも休みなく続けられる中和事業のおかげで、川には魚も棲めるようになり、下流にはコンクリートの橋などもつくられるようになりました。
ここからは、この中和事業のしくみを詳しく見ていきましょう。


世界初!今日も続く中和のしくみ


■年中無休の働き者「中和工場」

酸性の水を中和するには、理科の授業でやったように、アルカリ性のものと反応させる必要がありますよね。
とはいえ理科の実験とは異なり、川は流れ続けているため中和作業も止めることができず、そのためには準備しやすい材料を見つける必要がありました。

そうして選ばれた材料が、自然界にたくさん存在する「石灰」です。
中和工場では、その日のpHに合わせて必要な石灰の量を計算し、石灰の粉を水に混ぜた「石灰ミルク」を川に流し続けます。

この中和工場は、草津温泉のお湯が流れる湯川を中和する「草津中和工場」と、その他白根山から流れる大沢川・谷沢川を中和する「香草中和工場」があり、中央管理室で24時間体制で監視されています。

草津中和工場は、温泉街からほど近いところにあるので、川に石灰ミルクが流し込まれるところを実際に見ることができますよ!



■激レアさん「品木ダム」

中和工場で石灰ミルクを投入された川の水は、中和反応を進めながら、品木(しなき)ダムにたどり着きます。

ここでもう一度理科の授業を思い出してください。中和させると、その副産物として中和生成物ができますよね。白く濁ったままの水を下流に流すわけにはいきません。
品木ダムは、そんな中和生成物の回収と、中和反応の促進のために建設されたダムです。

なお品木ダムは、一般的な水をためる目的のダムとは違い、「水質改善」という機能を持った、ダム界の激レアさんです!(管理所を訪れた際はぜひ「ダムカード」を!)
ダムの下流には中和が済んだ清流が流れ、魚たちも棲むようになりました。



■地味に重要「しゅんせつ工事」

この中和事業において、一見地味ながらとても重要な役割を担っているのが、しゅんせつ工事です。
しゅんせつ工事とは、建設工事の中でも、ダム底や川底から不要な土砂などを取り除く工事のことです。

先ほどお話ししたように、品木ダムは中和生成物をためるためのダムでもあるので、ふつうのダムに土砂などが堆積するよりはるかに多く、中和生成物と土砂がたまります。そのため、それらを他のダムより頻繁に取り除かないと、ダムはすぐいっぱいになってしまうのです。

このしゅんせつ工事なしでは、中和事業を続けていくことはできないんですね!

川のしゅんせつ工事ではよく油圧ショベルやクレーンを使いますが、広くて深いダムのしゅんせつ工事では、大きなポンプやクレーンのついた”しゅんせつ船”が活躍しています。



草津温泉のことは知っていても、この中和事業のことは知らなかった、という方が多いのではないでしょうか?
草津温泉の中和事業とそれに伴うしゅんせつ工事は、今日も下流の暮らしと環境を守ってくれています

もし草津に行かれる際は、強酸性のお湯を楽しみつつ、ぜひそのお湯の歴史と中和事業のことにも、ゆっくり思いを馳せてみてください。きっと、さらに味わい深い時間になるはずです!


草津温泉でも!意外なところに”建設業”

観光地として人気の草津温泉は、知られざる中和事業に支えられ、一見関係のないように思える建設業が深く関わっていたんですね!

普段なかなか知る機会が少ない建設業。街なかの工事現場の囲いの隙間から見るくらい、という方がほとんどではないでしょうか。
でも実は、意外なところで、私たちが思っているよりもたくさんの接点があります。

草津温泉で他の例をあげるなら、車の走行音が音楽に聞こえる特殊な道路「メロディーライン」や、湯畑のライトアップのための電気設備などもそれにあたります。

これからの温泉観光やレジャーも、「建設」という新しい視点から見てみると、今までは気付かなかった面白いストーリーや歴史が見えてくるかもしれませんね!


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