松尾潔スマイルカンパニー契約解除に見られる見えない亡霊に忖度する日本社会の闇
ミュージシャンでプロデューサーの松尾潔氏が15年続いていたスマイルカンパニーとのマネジメント契約が中途終了した、とTwitterで報告した。なんでも理由は先のジャニー喜多川氏並びにジャニーズという組織による性加害問題について氏がラジオやメディア媒体で批判的なコメントをしたことが問題になったみたいで社の姿勢を彼をスマイルカンパニーに呼んだ山下達郎氏も支持した、ということみたいだ。
スマイルカンパニーと山下達郎氏の関係性といえば遡るとすごく長く現社長の小杉周水氏の父親の小杉理宇造氏から続いている。
小杉理宇造氏は達郎氏をソロデビューから支え、苦楽を共にしてきたいわば盟友的存在で、シュガー・ベイブ解散後の弱冠23歳の若者のソロデビューレコードにあのチャーリー・カレロとサイター兄弟をプロデューサーに抜擢したのはひとえに氏の力によるところが大きい。
自身のソロアルバムのプロデューサーに60年代と70年代の両方を等しく理解している人物、という条件を出しその上でこの3人を揃えた事で達郎氏の小杉氏への信頼は揺るぎないものになったといえるだろう。
かくして達郎氏は小杉氏と共に行動を共にし、小杉氏の方は達郎氏のマネジメントの他にジャニーズとの関係性を深くしそれが後のKinKi Kidsと達郎氏を引き合わせるのにも繋がる事になる。
しかし組織や人間というのはある一定の権力や権威の下で関係が構築されるとそこに甘んじ本人の意識していないところで退廃堕落していくものなのだ。
それが最初に表れたのは今から34年前の大晦日に起きた近藤真彦氏と中森明菜氏のかの有名な金屏風会見だ。当時交際中だった2人の交際を強く反対したジャニーズサイドは明菜氏の一連の行動に対する禊として金屏風の前で謝罪会見をさせたが何故金屏風になったか、というとジャニーズ側が明菜氏に独立をけしかけ、その代表に小杉理宇造氏が就く流れを提案していからだ。しかしこれこそが仕組まれた罠であり、当時小杉氏は近藤真彦氏のレコードのディレクターなどを手掛けており、小杉氏がジャニーズ近藤サイドに立つのは当然の事だった。
この件を境に小杉氏の力は絶対的なものになり、ジャニーズの影の支配者とも言われるようになった。
そんな人物と行動を常にしたらその空気に自然と馴染んでしまうのは当たり前の事だ。
達郎氏はかなり保守的なところがあり、それは何も「批判からは何も始まらない」発言や坂本龍一氏の社会活動に対しての否定的発言ではなくソロデビューアルバム制作時のチャーリー・カレロとのやり取りで見てとれるのだ。
日本から来た若者にカレロが聞いたのは好きなミュージシャンは誰か?という質問だった。その質問に対して23歳の達郎青年はハル・ブレインやスペクター関連のミュージシャンの名前を次々列挙した。そんな彼の回答に対してカレロが言った一言は「確かに彼らたちは1967年は天才だった」。
私はこの会話にこそ達郎氏の極めて保守的な考えが隠されてると見ている。ひとつの芸事を極める意味でクラシカルなものを尊重し敬意を示すのはとても素晴らしい事だがそれが社会的悪に対してもになると話は変わってくる。
音楽業界、エンタメ業界で絶対的権力を持ってる人間たちが未だに古いしきたりやジャニー喜多川氏の亡霊にひれ伏す姿はとても見てられるものではないし、この件に関しては私は松尾潔氏を高く支持するものである。